自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆北斎のパロディ画 中国側の意図

2021年04月28日 | ⇒メディア時評

   政府は東電福島第一原発で増え続けるトリチウムなど放射性物質を含む処理水を海へ放出する方針を決めた(4月13日)。すると、中国と韓国が反発し、中国外務省の趙立堅副報道局長がツイッターで、葛飾北斎の「冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏」を模したパロディ画像=写真=を投稿して批判した。本人のツイッターをチェックする。

「An illustrator in #China re-created a famous Japanese painting The Great Wave off #Kanagawa. If Katsushika Hokusai, the original author is still alive today, he would also be very concerned about #JapanNuclearWater.」(意訳:中国のイラストレーターが、有名な日本画 「神奈川沖浪裏」 を再現した。原作者の北斎が生きていれば、#JapanNuclearWaterも非常に気になるところ)

   中国のイラストレーターが描いたパロディ画は、背景の富士山を原発とみられるものに書き換え、大波を進む船上から防護服姿の作業員が汚染水らしき液体を海に捨てる様子が描かれている。そして雲の上には十字架がかかっている。趙氏は以前も「太平洋は日本の下水道ではない」などと批判している。

   広報担当の趙氏とすると日本政府の放射性物質の処理水を海に放出する発表は、中国批判を逸らすグッドタイミングだったに違いない。何しろ、中国が台湾の領空と海域で軍事訓練を繰り返し、長距離ミサイルを配備するなど攻撃能力を強化しているとアメリカなど各国から批判され、香港やウイグルにおける人権弾圧問題でも手厳しい国際批判を浴びている。この批判を逸らすために、おそくら中国は執拗に北斎のパロディ画を世界に発信し、日本批判を続けるのだろう。

   アメリカ国務省のプライス報道官は「世界的に認められた原子力安全基準に合致したアプローチを採用したようだ」との声明を発表。国際原子力機関(IAEA)も日本の放出計画を支持している(4月16日付・BloombergニュースWeb版日本語)。また、BBCとCNNをチェックしたが、北斎のパロディ画をニュースとして取り上げてはいない(4月28日午後10時現在)。

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