能登の被災地の撤去作業がまったくと言っていいほど進んでいない。これまで被災地を17回めぐったが、現地はそのままだ。住宅の全壊は8221棟、半壊は1万6584棟(5月23日・石川県まとめ)にも及ぶが、ほとんどそのままの状態だ。復旧・復興の光景が見えない。そんな中、環境省と法務省がようやく重い腰を上げた。建物が全壊などでその機能が明らかに失われた場合、所有者全員の同意がなくても、当事者からの公費解体の申請を受けて、自治体の判断で解体作業が行えるようになった。両省が関係自治体に通知を出した(5月29日付・メディア各社の報道による)。
これまで公費解体には、相続上で権利を有するすべての人の同意(実印)を得ることが必須条件となっていて、被災した当事者が市町に公費解体の申請をする際のネックとなっていた。それが、全壊の場合だとすべての人の同意を得なくても、自治体の判断で公費解体が可能になった。(※倒壊した輪島市内の家屋=2月5日撮影)
能登では、代々同じ場所に住み続けていることが多く、代替わりしたからと言って住宅の名義を変更するというケースは少ない。住宅の名義が曾祖父であったりする場合だと、相続の関係者は数十人にも及ぶことにもなる。この数十人と日ごろ連絡が取れていれば問題はないかもしれないが、中には疎遠になって住所も分からないというケースも多くある。なので、今回の全員同意は不要の措置は復旧・復興に向けて一歩前進だろう。
ただ、いくつか問題もある。半壊の場合だ。「建物の機能を失った」とみなされる住宅は1階部分が完全につぶれたり、焼失したりするケースなどに限られる。半壊などの場合は従来通り全員の同意が必要となる。半壊でも家を修復してなんとか住めるようなれば問題はないだろう。しかし、現実は今後解体するしかないという半壊の住宅が圧倒的に多いのではないだろうか。
家には家族の思い出が詰まっている。しかし、その家が使えなくなった場合、人生と同様に「家の区切りもつけたい」、そう願う持ち主も多いだろう。全壊と同様に半壊であっても、後々の訴訟リスクが伴わないようにすみやかに公費解体を進めることで持ち主の気持ちも晴れるのではないか。
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