能登半島を車で走っていてこの一年変わらぬ光景がある。それは、山頂に並ぶ長さ30㍍クラスの風力発電のブレイド(羽根)が回っていないことだ。日本海に突き出た能登半島は風の流れがよいとされ、ブレイドが回る風力発電は能登では見慣れた風景でもあった。ところが、元旦の最大震度7の揺れ以降、ブレイドがストップした。風力発電が立地する場所は珠洲市が30基、輪島市が11基、志賀町が22基、七尾市が10基の合わせて73基で、その後に再稼働したのは志賀町にある日本海発電(本社・富山市)の9基とほか数基ようだ。
この一年、ブレイドは回らず 凍える風力発電
今月27日に半島の尖端の珠洲市を訪れたときに国道249号の大谷トンネル付近から見えた5基はすべて止まったままだった。山には積雪があり、まるで風車が凍えているかのようにも見えた。同市にある30基の風力発電を管轄している「日本風力開発」(東京)の公式サイトによると、発電所や変電所の敷地内外を徒歩によるアクセスやドローンおよび航空写真で確認した。その結果、1基についてはブレイド1枚の損傷を確認した、としている。「6月10日現在の状況」として、ブレイドの損傷原因を現在も引き続き追究中で、それ以外の風車およびほかの設備についても周辺安全に影響する損壊がないことを確認しながら、具体的な復旧方法や工程を関係機関とともに策定中、とある。しかし、再稼働の日程については公式サイトでの記載はなかった。
風力発電のブレイドは地震の揺れで自動的に止まるため、メンテナンスを施して再び稼働させる。では、なぜ再稼働がなぜ進まないのだろうか。以下は憶測だ。再稼働させるための器材を積んた車で現地にたどり着くことが困難なのだろう。山の道路に亀裂ができたり、がけ崩れなどで寸断されていることは想像できる。さらに、9月の記録的な大雨で山道そのものが崩れたりと、アクセスがさらに難しくなっている可能性がある。実際、今月27日に同市を訪れた際も、これまで行ったことがある風力発電の場所に車で行こうとしたが、山の道路の入り口に「がけ崩れ危険」と立ち入り禁止のカラーコーンが置かれてあった。
能登半島では今後さらに風力発電の増設が計画されていて、13事業・181基について環境アセスメントの手続きが行われている。風力発電は再生可能エネルギーのシンボルでもある。以前、珠洲市で現地見学をさせてもらったことがある。風速3㍍でブレイドが回りはじめ、風速13㍍/秒で最高出力1500KWが出る。半島の沿岸部、特に北側と西側は年間の平均風速が6㍍/秒を超え、一部には平均8㍍/秒の強風が吹く場所もあり、風力発電には最適の立地条件にある、との説明を受けた。
能登での風力発電の立地に地震というネックがあることが露呈した。果たしてこのまま181基の立地計画は進むのか。それより何より山の道路が再び整備され、再稼働が可能なのか。
⇒30日(月)午後・金沢の天気 はれ
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