自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★「ノドグロ」と「かに面」の話 ~上

2022年11月29日 | ⇒トピック往来

        久しぶりにノドグロの塩焼きが食べたくなり、近所のス-パーに行く。鮮魚売り場ではブリやアジ、サンマなどの塩焼きパックは並んでいるが、ノドグロが見当たらない。調理場にいた店員に「ノドグロはないですか」と尋ねると、「このところ入荷そものがないんですよ」と返事が返ってきた。「入荷そのものがない」とは、どういうことなのか。

   身はやわらかく、脂がのった魚で、刺身や煮つけ、塩焼き、干物などどれも絶品だ。ノドグロが有名になったのは、2014年9月のテニスの全米オープンで準優勝した錦織圭選手が帰国後の記者会見で、何が食べたいかとの問いに、「ノドグロが食べたい」と答えたことがきっかけだった、と記憶している。それまで金沢に住んでいてノドグロという名前を知らなかった。アカムツのことと地元メディアなどで紹介されて初めて、錦織選手の出身地・島根県ではノドグロと呼んでいるのかと分かった。それ以降、金沢の居酒屋ではお勧めの料理の貼り紙にに「ノドグロあります」が目につくようになった。

   さらにノドグロがブームになったのが、翌2015年3月の北陸新幹線の金沢開業だった。観光客が急激に増え、金沢での食べ歩きや土産の需要として、ノドグロ人気が一気に高まった。まるで、「ノドグロ新幹線か」と思うほどに。この背景には、関東から観光客にとっては、北陸と山陰は同じロケーションで、金沢に行けばノドグロが食えると思われたに違いない。当時、知人らと「あのアカムツがノドグロに化けて、えらい人気やな」と笑っていた。ところが、値段も高騰して、いつの間にか「超高級魚」の様相になってきた。

   ブリのように成長するにつれて名が変わる魚のことを「出世魚」と言うが、人気が高まって値段が上がる魚も、現代風「出世魚」なのかもしれない。いつの間にか金沢ではアカムツではなくノドグロと呼ぶのが普通になっている。

   冒頭の話に戻る。ノドグロは能登半島付近では8月から10月にかけてが漁期なので、いまは水揚げ量も少ない。そして、政府の全国旅行支援もあって旅行への機運が回復したせいか、金沢も観光客でずいぶんとにぎわってる。おそらく、スーパーにノドグロは回ってこないのだろう。スーパーの棚をふと見ると、「のどぐろ」の文字が飛び込んできた。よく見ると、「のどぐろの煮付風味ふりかけ」とあった=写真=。まぎらわしい。それにしても、「ノドグロが食べたい」。

⇒29日(火)夜・金沢の天気     くもり


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