きょう(7月15日)、イカ釣り漁が盛んな能登町小木を通りかかったので、漁港の様子を見に行った。すると一隻のイカ釣り船が停泊していた=写真=。水揚げと燃料、食料の補給のため一時寄港したのかと思ったが、それにしても午後2時ごろなのに船員の人影がまったくなかった。
地元石川では新聞でも報じられ、周知のことなのだが、日本海で屈指の漁場「大和堆(やまとたい)」は日本の排他的経済水域(EEZ)であるにもかかわず、北朝鮮の木造船があちこちで操業していて、北の船とのトラブルを避けるために県漁協のイカ釣り船団(13隻)は大和堆を避けて、北海道沖の漁場に移動しているというのだ。大和堆は能登半島沖の北300㌔にあってスルメイカの漁場だ。そこに、北朝鮮の木造船にうようよされては、たとえば、木造船の網がイカ釣り船のプロペラに絡まったり、衝突したりと不測の事態が起きることが十分予想されるからだ。
問題なのは、北の木造船は何らかの武装をしている可能性もあるのだ。小木のイカ釣り船の漁師たちは北のなりふり構わぬ振る舞いをとくに警戒する。それは、1984年7月27日に起きた「八千代丸銃撃事件」がまだ記憶にあるからだ。小木漁協所属のイカ釣り漁船「第36八千代丸」が、北朝鮮が一方的に引いた「軍事境界線」の内に侵入したとして、北朝鮮の警備艇に銃撃され、船長だった行泊貢(いくどまり・みつぐ)氏が死亡、乗組員4人が拿捕されるという事件だった。1ヵ月後の8月26日に「罰金」1951万円を払わされ4人は帰国した。当時私は新聞記者で行泊船長の遺族や漁業関係者に取材した。「北朝鮮は何を仕出かすか分からない」と無防備の漁船を銃撃したこの事件に恐怖心を抱いていた。小木ではこの感情が共有され、今でも引きづっていることは想像に難くない。
大和堆で操業できないとなれば地場経済にも影響が出てくる。北海道の漁場は稚内沖100㌔の武蔵堆。大和堆からざっと1000㌔も離れる。したがって、武蔵堆でのイカ漁の水揚げは小木ではなく、函館になる。重油や食料の補給の経費、水揚げの漁協手数料(水揚げ額の5%)などは「イカの町」小木にはまったく落ちないのだ。
能登半島沖の違法操業を取り締まるため、政府は水産庁の取締船だけでなく、海上保安庁の巡視船を派遣するとのニュースがあった(6月28日)。今月4日、北が発射したICBM(大陸間弾道ミサイル)が日本海に落下した。安心して操業ができる日はいつ来るのか、対策を急いでほしいと願うのは地元小木だけでない。
⇒15日(土)夜・金沢の天気 はれ
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