それにしても不気味な逮捕劇だ。元日の1日午後、石破総理らが出席した能登半島地震と奥能登豪雨の追悼式会場の近くで果物ナイフやカッターナイフなど5本の刃物を所持していた兵庫県西宮市の大学生が銃刀法違反の疑いで逮捕された。逮捕の場所は式典会場の日本航空学園能登空港キャンパスに隣接する能登空港の駐車場。警備に当たっていた警察が、柱に姿を隠すような不審な動きをする容疑者に職務質問して発覚した。容疑者は「観光に来た」などと供述しているという(地元メディア各社の報道)。
輪島・千枚田の歴史といまを支える「困難を乗り越える力」
話は変わる。シリーズタイトルに使っている「レジリエンス(resilience)」という言葉を初めて耳にしたのは14年前だった。2011年6月に国連食糧農業機関(FAO)から能登半島の「能登の里山里海」が世界農業遺(GIAHS)に認定され、当時のGIAHS事務局長パルビス・クーハフカン氏が認定セレモニーのために能登を訪れた。そのとき、輪島市の棚田「千枚田」を見学した。案内役の輪島市長、梶文秋氏(当時)が千枚田の歴史について説明した。
千枚田では1684年に大きな地滑り(深層崩壊)があり、山ごと崩れた。深層崩壊が起きた理由の一つが山からの地下水が地盤を軟弱化させたことだった。地域では棚田を再生するあたって、その地下水を田んぼに流し込み、その水がすべての田ぼに回るように水路設計が施された。つまり、用水からの分岐ではなく、田から田へ水が流れるような仕組みにした。この知恵と工夫で災害地を生産地として回復させた。この説明を受けたパルビス氏は「すばらしい景観と同時に農業への知恵と執念を感じる。千枚田は持続可能な水田開発の歴史的遺産、まさにレジリエンス(困難を乗り越える力)のシンボルだ」と感想を述べた。(※写真は、能登地震で多くの田んぼに亀裂が入ったものの、120枚が耕作され稲刈りを終えた輪島の千枚田=去年9月撮影)
このときパルビス氏が語った「レジリエンス」はその後のFAOの公式サイトでも活かされている。「能登の里山里海」について以下のように紹介している。The communities of Noto are working together to sustainably maintain the satoyama and satoumi landscapes and the traditions that have sustained generations for centuries, aiming at building resilience to climate change impacts and to secure biodiversity on the peninsula for future generations.(意訳:能登の地域社会は、何世紀にもわたって何世代にもわたって受け継がれてきた里山と里海の景観と伝統を持続的に維持するために協力し、気候変動の影響に対するレジリエンスを構築し、将来の世代のために半島の生物多様性を確保しようとしている)
千枚田のレジリエンスはいまも続いている。人手不足が生じたことから、棚田景観を守るために先駆けて2007年から「棚田のオーナー制度」を導入。また、昨年元旦の地震では多くの田に亀裂が入ったため、クラウドファンディングで資金を集めて修復作業を行い、1004枚の田んぼのうち120枚の耕作にこぎつけた。作業はその後も徐々に進められている。ひたむきなアイデアと地道な努力で千枚田の再生してきた。能登のレジリエンスの原点と言えるかもしれない。
⇒3日(金)夜・金沢の天気 あめ
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