新型コロナウイルスのパンデミックが止まらない。アメリカのジョンズ・ホプキンス大学のコロナ・ダッシュボード(=一覧表、9日付)をチェックすると=写真=、感染者は718万人、死者は40万人を超えている。その中でもアメリカは感染者197万人、死者11万人と圧倒的に多い。警察官による黒人男性への暴行死事件をきっかけにアメリカ全土に広がっている「Black Lives Matter」(黒人の命は大切だ)の抗議デモはこのコロナ禍による厭世(えんせい)感、あるいは悲観主義と訳されるペシミズム(pessimism)が背景にあるのではないかと憶測してしまう。
社会の悲観や不安の広がり、ペシミズムがアメリカだけでなく、世界を覆っているのかもしれない。嫌なもの、価値のないものに攻撃を仕掛けるのがペシミズムである。香港に対する強力な介入の動きを読むと、国内でのペシミズムが読める。5月の全人代で「2020年に貧困ゼロ達成」を重要課題として強調した。2019年時点で551万人の中国人が貧困状態にあり、今年の目標は彼らすべてを貧困から引き上げることだ(5月25日付・共同通信Web版)。ところが、コロナ・ショックは貧困層を増長させているのが現実。中国国家統計局が4月17日に公表した20年1-3月期の国内総生産(GDP)は前年比6.8%減と大打撃だった。こうなると、人民の目は富裕層が多いとされる香港に向く。そこで、政治的メンツを保とうとあえて香港国家安全法の導入に踏み切った、のではないか。
北朝鮮のペシミズムもそうとうだろう。北朝鮮の人権状況を調査している国連の特別報告者が、北朝鮮が新型コロナウイルスの影響で最大の貿易相手国である中国との国境を封鎖したことで貿易が大幅に減少し、深刻な食糧不足が起きているおそれがあると指摘した(6月10日付・NHKニュースWeb版)。北ではホームレスが増え、薬の値段が急上昇している。トウモロコシ以外食べるものがない人が増え、兵士ですら食糧不足に陥っているという情報もあると、深刻な食糧不足を報告している(同)。
このタイミングで、北が韓国に対して、脱北者による金正恩党委員長への批判ビラを風船で飛ばすのを放置していたとして南北通信の全回線を9日正午で遮断すると宣告した(6月10日付・中央日報Web版日本語)。これまでに、人民のいら立ちやペシミズムが募ると、その目をそらすために弾道ミサイルの発射や韓国への砲撃があった。今回は韓国政府そのものに矛先を向けた。
日本も例外ではない。SNSによる誹謗中傷で女子プロレスラーの痛ましい死については何度かこのブログでも取り上げた。自民党ではネットで中傷した発信者の特定や厳罰化を法整備するとニュースになっているが、背景には根深い問題があるのではないだろうか。コロナ禍による労働者の解雇や雇止めが止まらない。5月29日現在で全国で2万933人(厚労省発表)だが、今後さらに膨らむ。世の中への漠然とした不安、あるいはペシミズムが背景にあると思えてならない。冒頭のダッシュボードを眺めていて暗い話になった
⇒10日(水)午前・金沢の天気 はれ
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