物事を学ぶ上での基本的な姿勢について、山登りになぞらえてお話しました。
その記事で、ふたつの表現を使っています。
「山に登る」と「山を登る」。
ただし、「山を登る」という表現は、1箇所でしか使っていません。
一般には「山を登る」とは言わずに「山に登る」と言います。「山を登る」とはまず言いません。しかし、この文だけは「山に登る」と書くと違和感があり、あえて「山を登る」と書きました。
上に引用した文で言い表したいことは「山頂を目指して進むための要領を理解できる」という意味です。「山」という名詞を、山頂に至るまでの長い道のりを含めた山全体と位置づけています。「山に登る」と書くと、どうしてもこの経路のニュアンスが出てこないのです。この意味では助詞「に」では不適切だと判断し、「を」を使おうと考えました。
助詞「を」の意味について、大辞泉では以下のように解説しています。
別の文で「……をのぼる」を考えれば、経路を表す「を」の働きがはっきりします。
ここで気づくことがあります。
助詞「を」の代わりに「に」を使って「坂道にのぼる」や「階段にのぼる」と言うことはできませんが、「はしごに のぼる」とは言えます。
この違いは何でしょうか。
「はしごをのぼる」では、登る行為そのものに重点が置かれており、はしごを両手でつかんで足場を確認しながら登る様子をありありと想像できます。対して「はしごに のぼる」では、はしごは単なる到達点に過ぎず、登った後にもっと大事な別の行為が控えている感じがします。
「山に登る」と書くべきか、「山を登る」と書くべきか。
悩みましたが、あえて「山を登る」と書くことにしました。踏み固められた道を歩くだけでなく、ときには険しい岩場や切り立った崖 (がけ) をよじ登るニュアンスを何としても残しておきたかったのです。
(次回に続く)
その記事で、ふたつの表現を使っています。
「山に登る」と「山を登る」。
ただし、「山を登る」という表現は、1箇所でしか使っていません。
学ぶうちに、次第に山を登るための要領が分かってきます。
一般には「山を登る」とは言わずに「山に登る」と言います。「山を登る」とはまず言いません。しかし、この文だけは「山に登る」と書くと違和感があり、あえて「山を登る」と書きました。
上に引用した文で言い表したいことは「山頂を目指して進むための要領を理解できる」という意味です。「山」という名詞を、山頂に至るまでの長い道のりを含めた山全体と位置づけています。「山に登る」と書くと、どうしてもこの経路のニュアンスが出てこないのです。この意味では助詞「に」では不適切だと判断し、「を」を使おうと考えました。
助詞「を」の意味について、大辞泉では以下のように解説しています。
[1] [格助] 名詞、名詞に準じる語に付く。
…(中略)…
3 移動の意を表す動詞に応じて、動作の経由する場所を示す。…を通って。「山道―行く」「廊下―走る」「山―越す」
…(後略)…
別の文で「……をのぼる」を考えれば、経路を表す「を」の働きがはっきりします。
坂道をのぼる
階段をのぼる
はしごをのぼる
ここで気づくことがあります。
助詞「を」の代わりに「に」を使って「坂道にのぼる」や「階段にのぼる」と言うことはできませんが、「はしごに のぼる」とは言えます。
この違いは何でしょうか。
「はしごをのぼる」では、登る行為そのものに重点が置かれており、はしごを両手でつかんで足場を確認しながら登る様子をありありと想像できます。対して「はしごに のぼる」では、はしごは単なる到達点に過ぎず、登った後にもっと大事な別の行為が控えている感じがします。
「山に登る」と書くべきか、「山を登る」と書くべきか。
悩みましたが、あえて「山を登る」と書くことにしました。踏み固められた道を歩くだけでなく、ときには険しい岩場や切り立った崖 (がけ) をよじ登るニュアンスを何としても残しておきたかったのです。
(次回に続く)