みぃちゃんの頭の中はおもちゃ箱

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漆芸との出会い

2010年01月29日 19時21分33秒 | 気ままにお出かけ
日展では工芸作品も見たいと言いましたが、私は彫刻より書より、工芸に興味を持っています。

工芸品は昔から好きで、素材の風合いをそのまま残した素朴な茶碗 (ちゃわん) や繊細な蒔絵 (まきえ) に魅了されていましたが、ある漆芸に衝撃を受けたことがきっかけで、より工芸に関心が向くようになりました。

衝撃の出会いが訪れた場は、確か東京国立近代美術館だったと思います。
「ここに入ってみようか」
時間潰しのつもりで、特別な意図もなく立ち寄った作品展でした。

展示されていたのは、あるひとりの作家の漆芸作品十数点でした (残念ながら作家の名前は忘れてしまいました)。作品は食器が大部分だったと記憶しています。

来場者はほとんどいません。作品数も少なく、地味な工芸品の展示ですから、訪れる人が少ないのも無理はないでしょう。

ほとんどの器は、外側はもちろん、内側も黒漆で塗られています。形は簡素で、飾り気はまったくありません。朱漆を使っていたのは最後の2点だけ (だったと思います)。しかも朱塗りは内側のみで、外側はどれも黒一色。

外側も内側も真っ黒に塗られた椀 (わん)。何の飾りも施されていない、ただの丸いお椀。しかし、一目見ただけで釘付けになる椀。

漆の黒はなめらかで つややか。丹念に塗り込められた表面に刷毛 (はけ) の目はまったく残っていません。浮かぶのは、工房で一心不乱に刷毛を走らせる作家の姿。熟練した無駄のない手の動き。風のない冬の日のようにピンと張りつめた空気が、そのまま作品に染み込んでいます。漆黒は落ち着きと気品を兼ね備え、幾重にも塗り重ねられた層の奥に果てしない空間が広がっているようです。深い深い黒に見とれているうちに、中に吸い込まれ、いつしか我を忘れています。きっと宇宙はこんな感じになっているのでしょう。

衝撃的でした。このときを境に、いっそう工芸品が好きになりました。

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