D70s with Tokina AT-X 107 DX Fisheye (10-17mm F3.5-4.5, Serial # 7822278), Aperture priority AE (F=6.3, SS=1/25s), +0.3EV (Matrix metering), ISO200, WB=Sunny (-2), f=10mm (35mm-equivalent: 15mm)
太陽がそっと雲間から顔を出しました。きらめきが、冬の空気をかき分けながら、さざ波になって黄色いじゅうたんの上を走りました。
こんなに鮮やかなイチョウの黄葉が優しく温かく降り積もる奥では、ホームレス締め出しのバリケードがとげとげしい空気を発散しています。オレンジ色のバリケードが何十基と置かれ、境界線を作るだけでなく、敷地を埋めています。
「いい写真撮れるかい」
小屋の前を掃いていたホームレスの人でした。満面の笑みからこぼれた金歯が光ります。こんなに晴れ晴れとした笑顔なんて見たことがあるでしょうか。思いがけず、おっちゃんの笑顔から元気をもらいました。
「いいの撮れますよ。今年の黄葉は遅いですか?」
「いや、毎年こんなもんだよ。今年は9月頃から黄色くなってた。ギンナンが採れるのは少し早かったけどね」
「ギンナンって臭いですけど、私はこのにおいが懐かしいですよ。小さい頃、よくギンナンを拾ったなぁ、って思い出します」
「おぅ、そうかい。もう、こんだけ採れたよ」
D70s with Tokina AT-X 107 DX Fisheye (10-17mm F3.5-4.5, Serial # 7822278), Aperture priority AE (F=4.0, SS=1/30s), +0.3EV (Matrix metering), ISO200, WB=Sunny (-2), f=14mm (35mm-equivalent: 21mm)
「わぁ、いっぱい」
ギンナンが、深さ20cmくらいの容器にぎっしり。そんな容器やビニール袋が合わせて6つも。ずっしりと重そうです。公園には多くのイチョウの木が植わっていますが、こんなにたくさん採れるとは驚きました。
「写真撮っていい?」
「おぅ、いいよ。撮ってきな」
ギンナンの実に目を輝かせて しきりにシャッターを切る人も珍しかったでしょう。
「持ってくかい?」
「でも、今日は電車で帰らないといけないから。電車の中にギンナンを持ち込むと、においがきついでしょ」
「あぁ、それじゃあかんなぁ」
D70s with Tokina AT-X 107 DX Fisheye (10-17mm F3.5-4.5, Serial # 7822278), Aperture priority AE (F=4.0, SS=1/60s), +0.7EV (Matrix metering), ISO200, WB=Cloudy (+0), f=14mm (35mm-equivalent: 21mm)
実から取り出した種は、ビニールシートの上に広げて天日干し。その中に、まだ初々しい落ち葉が迷い込んでいました。
「ちっちゃいだろ」
そんなことはありません。私が食べるギンナンの実もこんな程度の大きさです。スーパーの店頭に並べてもよさそうなほどの粒ぞろいです。
D70s with Tokina AT-X 107 DX Fisheye (10-17mm F3.5-4.5, Serial # 7822278), Aperture priority AE (F=6.3, SS=1/40s), 0.0EV (Matrix metering), ISO200, WB=Cloudy (-1), f=10mm (35mm-equivalent: 15mm)
「この後はどうすんの?」
「この後は伏見 (ふしみ) で用事を済ませます」
レンズに不具合があるから、ケンコーの出張所に持ち込んで見てもらわないといけないんだよね。
「おぅ、そうか。伏見はあっちのほうだ」
おっちゃんが西の方角を指差しました。
「ありがとうございます」
「また遊びにおいでよ」
おっちゃんは、さっきからずっと笑いっぱなしの口元から3本の金歯を光らせると、また掃除に戻っていきました。
私も自分の用事に戻らないと。
「おっちゃん」
「ん?」
「私、おっちゃんのその笑顔が好きだわ」