みぃちゃんの頭の中はおもちゃ箱

略してみちゃばこ。泣いたり笑ったり

サスペンス小説「夏の残り香」

2005年01月09日 04時38分14秒 | IT・デジタル
さてさて、土に戻すと花が咲く携帯電話があるなら……




「娘は預かった。返して欲しければ二億円を用意しろ」
 犯人からの電話。発信元は携帯電話。
 警察は極秘に包囲網を敷くものの、犯人と接触できず。
 ほどなく遺体が発見された。
 疑わしい人物は浮かび上がったものの、任意の取り調べでは犯行を否認。遺留品も残されておらず、状況証拠のみでは逮捕に踏み切れない。

   *     *     *

 数ヶ月後、小田警部は部下の深井刑事とともに被害者の両親が暮らすマンションに赴いた。その日は八月十三日、被害者が生きていれば二十三歳の誕生日を迎えるはずの日である。むせ返るような暑さの中、駅からの道のりは想像以上に遠く感じられた。小田が汗をぬぐおうと立ち止まると、歩道のわきに場違いな花が咲いているのが目に留まった。一輪だけ、まるで死者を弔うかのようにひっそりと咲く、小さなヒマワリ。
「八月十三日の誕生花はヒマワリなんですよ」深井がヒマワリのそばにしゃがみこんだ。「娘さんは明るく活発な性格で、よくヒマワリにたとえられていたそうです。先日ご両親のお宅にうかがったときも、仏壇にヒマワリが供えられていました」
「そうですよ」深井が顔を上げた。「このヒマワリを採って、お供えしましょうよ」
「それもいいな」
 捜査への誓いを新たにすべく、ヒマワリを供えるのも悪くない。
 小田は根を傷つけないように、大きく土を掘り始めた。
「痛っ」
 思わず指を引っ込めた小田のしかめ面を、深井が心配そうにのぞきこんだ。
「血が出てますよ、気をつけてくださいね。あ、私、絆創膏持ってます」
 深井がバッグの中をまさぐりはじめた。
「こんなところに何が埋まってんだ」
 痛む中指をかばいながら慎重に掘り進めると、固いとげだらけの物体が現れた。
 基盤だ。
 ICチップがびっしりと並んだ基盤だ。携帯電話機の基盤に間違いない。
「おい、鑑識を呼べ」




こんなサスペンス小説、どうかな?


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