あの頃(舞台)21

2020-05-05 22:42:15 | 日記
「今から仕入れるから、また来てくれる?」

「間に合わないんです…💦」

たぶん、泣きそうな顔をしていたと思うんです。

「どうしたの?」

おばあちゃんが優しく問いかけてくれました。

「実は……」

私は、泣きそうになりながら、一生懸命説明しました。

「そうか…、それじゃ、うちので良かったらシーツ持ってくかい?」

おじいちゃんが何とか私を助けてあげようと名案を出した。

「ばかだね~❗そんな古びたシーツなんて、恥ずかしくて渡せないよ。」

おばあちゃんは、笑いながら、奥へ入って行った。

「ハイハイ、これ、どうかね…」

おじいちゃんのステテコだ。

いい感じでヨレヨレだ。

「真っ白だし、いいでしょ。自分の都合のいい長さに切ってしまえばいいよ。それは、古いやつだから、いらない。」

私は、思わず泣き出してしまった。

「お古で悪いけどさ」

「ありがとうございます‼️」

鼻水を垂らして、劇場に戻った。


自分サイズに裁断して、裾を簡単に縫い。

出来た~❗

違和感が無い。

古びた感じが、尚一層、いい感じだった。

おかげで、『けつ捲り』のシーンは、無事違和感なく、やり遂げた。

幕間の休憩に化粧直しに楽屋に戻ったとき…。

ーーーえ?

机の下にあるのは…。

例のパンツだ。

さっき、こんなところにパンツは無かった…。誰かが隠したんだ…。

…A?

こんなドラマみたいな展開ってある?💦

あり得ない‼️

証拠も無いし…Aを闇雲に疑うわけにもいかない…。




あの頃(舞台)20

2020-05-05 08:25:06 | 日記
大切なものが無い‼️

楽屋を飛び出し、近所に和装小物店か衣料品店を探した。

無い…。

とにかく走った。

横道に入り、そのまた、横道…。

あ、帰り道…、わからなくならないかな?!

…どうしよう…これ以上、横道、横道に入ると元の道がわからなくなる…。

帰れなくなったら元も子もない。

…限界かな…。

…と、思った時、チラッと『和』の文字の看板が見えた。

和菓子かも知れないし、和食のお店かも知れない…。

けど、ちょっと行ってみよう…。

『和菓子』だった…。

…だよね、都合よく、希望のお店があるわけ無いよね。

とりあえず帰ろう。

…と踵を返すと、横道の奥に小さな布団屋さんらしきものが見えた。

布団?…は、関係無いか…。

…あ、でも、最悪、シーツを買って縫う!ってのもアリかも知れない❗

走り込むと、布団屋さんはまだ開いていない。

…万事休す…。

…の瞬間、おばあちゃんが店を開けた。


「開店ですか?」

「うん、そうだよ。買い物?」

「はい。シーツありますか?」

「あるよ」

『やったー‼

助かった💦

「これと、これと、これ…」

おばあちゃんが出してきてくれたものは、みんな柄物。

「白は、ありますか?

「白?

おばあちゃんは、奥へ入って行った。

「あれ~?一枚だけあったと思ったんだけどなぁ…」

「白のシーツ?昨日売れちゃったよ」

おじいちゃんが出てきた。

「あらま💦売れちゃったんだね~💦今から仕入れるから、また来てくれる?」

「あの💦間に合わないんです」

「間に合わない?」

きょとんとするおばあちゃん。



あの頃(舞台)19

2020-05-04 07:52:41 | 日記
あらためて深呼吸すると、着替えをはじめようとした…。

……あれ?

一番上に入れて置いたのに無い💦

例の手作りパンツです。

時代劇に男の人が『けつ捲り』をした時に、履いていた…と思われる、白のトランクスのような太ももにピチッとしたやつです。

あれが無いと、けつ捲りが出来ない💦

何を恥ずかしがってしるんだ‼
誰もお前のパンツなんて見たいと思って来てないから大丈夫だ‼️

…と、天の声が聞こえた気がしましたが、私のこだわりは、そこじゃないんです。

しっかりと、時代を感じさせる世界観を大切に作って来たのに、そこだけ、『現代にしか無いもの』を出すのが嫌だったんです。

ましてや、芸術性の高い舞台セットを見たあとです。
どうにも『それでいいよ‼️』と思えないんです。

…どこへやったんだろう?

荷造りの時、なんとなく、うっかり忘れてしまいそうな小道具だったので、パンツには特に意識をしていた。

確かに一番最後に荷物の一番上に入れた記憶がある…。

ここへ着いてからは開けていない…。

…どうしよう…。

悩んでる暇は無い。

とりあえず私は、外へ飛び出した。

そして劇場付近の衣料品の店を探した。

和装小物の店は無いだろうか…。

運よく、時間にはまだ余裕があった。

劇場の裏の裏…、3本ほど裏道に入ると、小さな商店街らしきものがあった。

…だけど、あるのは飲食店ばかりで、和装小物どころか、衣料品店もない。






あの頃(舞台)18

2020-05-03 08:33:59 | 日記
紆余曲折…。

いろいろあって、なんとか本番を迎えた。

私が乱闘シーンで悩んでいた時、例のAは静かだったと思う…。

私自身が、回りを見回す余裕が無かったせいもあるかも知れません。


本番を迎える舞台は、大きな場所で、とにかく緊張した。

舞台を見ると、すでにセットが組んである。

すごいセットだ…。

時代を思わせる古びた作りも芸術性が高く、ため息が出た。

こんな舞台で、ちゃんと出来るだろうか…。

武者震いなのが、鳥肌が立った。



自分の楽屋、自分の鏡の前に座った。

なんだか頼りなさげな私が写っていたが、

『ここまで来たら、前進するしかない!』

頼りなさげな自分に言い聞かせた。

「メイクしますので、簡単に着替えを済ましてください」

後ろから声がかかる。

「はい!」

再び深呼吸すると、着替えをはじめようとした…『あれ?』

一番上に入れて置いた例のものが無い💦💦

あの頃(舞台)17

2020-05-02 08:10:22 | 日記
なんとなく、出来てきたような気がする。

自信は全く無いけど、とりあえず『不安』が解消されて、動きも決まって来た…。



そして、先生に見てもらうことに…。

先生は眠そうだ…。

この苦労(?)は、私自身の問題だから、今日のこの乱闘シーンの稽古に、私がこんなに緊張してるなんて、先生は思ってもいないだろう…と思う。

私なりのささやかな苦労話しは、どうでもいい、思うように出来てからの話しなので、とりあえず、頑張った姿を見て貰わないと!

「乱闘シーンから行こうか?」

望むところ❗

「それじゃ、行くよ!…よ~い、GO‼」

パン❗と、扇子で机を叩く。


ドンドンドン❗足音高く歩き出すと、


怒りに真っ赤になった顔で私が…Uの頭をむんずとひっつかむ。


「余計なことをすんじゃない‼💢💢」


髪の毛をひっつかんだまま引きずって回して、ど~んと突き飛ばす。


………うまく行った…。


見学している仲間から拍手がわいた。


「OK❗」


先生からの声。


私は急いでUの側に駆け寄った。


「大丈夫?!」


「うん、大丈夫!いつもより、安定感あったよ。」


良かった~💦💦


「ありがとう!これで行こうね!」


強く手を握った。


先生の顔を見ると、親指で鼻をほじってる。

いいのいいの、これで❗先生が鼻をほじる時は、問題無い証拠だ。