あの頃(現場)3

2020-05-11 04:32:10 | 日記
引っ込み思案で素朴なMちゃんがイライラするらしく、Aは、現場の待ち時間で声を荒げた。

「『私はいいよ』なんて、Mみたいなタイプ、この世界ではいらないから❗」

Mちゃんが泣き出した。

「どうして、そんな事言うの?
…Mちゃんも、これからオーディションかも知れないんだから、泣いちゃだめ。笑顔で❗」

皆より少し年上、おねえさんのUは、穏やかにMちゃんをなだめた。

ひとしきり、言いたいことを言ったAは、皆に背中を向けて黙ってしまった。


「お待たせしちゃってすみません~❗」
助監督さんが現れた。

「あの~、Mさん…、どちらですか?」

「はい。私です。」

「ちょっと来てもらえますか?」

Mちゃんは、助監督さんに連れられて出ていった。

ーーーそうです。

そうして、そのまま、素朴なMちゃんは、帰って来ませんでした。

重要な役を演じることになったのです。

オーディションもなにもありませんでした。

最初っから素朴なMちゃんを一目見て決まってしまったらしいです。

Mちゃんを選んだのは作家さんだと聞きました。

主人公のお勤め先のお手伝いさん役で、主人公ととても仲良くする役柄だったんです。

大抜擢でした。

後にドラマを観たら、素朴なMちゃん
の素朴度が炸裂してましたね。(素朴が炸裂って変ですね💦…そのくらい、ぴったりだったんです✨)

それ以来Aは、素朴なMちゃんに強い意見を言うことはなくなりました。



あの頃(現場)2

2020-05-10 07:53:46 | 日記
ある現場に呼ばれた4人。

私、A、U、素朴なMちゃん。

…ひとりだけ、重要な役、あとは、それなりな役と、通達を受けた。

「ま、そんな感じでしょうね。」…と、つぶやいたのは、A。

普通、重要な役は、オーディションなどですでに決まっているはずなんですが、何か事情があったのでしょう。
詳しくはわかりませんが、決まっていた人が降板したり、具合が悪いなど…なにやら、トラブルがあったのかも知れません。

子役時代から活躍していたAは、俄然張り切りました。

その昔以来、いま一つ大役とは縁が遠のいていましたから。

「重要な役を決めるのに、どうするのかな?オーディション?」

Mちゃんは、不安でいっぱいの顔。

「オーディション、するのかもね。」

Uは、いつも落ちついている。

「どうしよう…、オーディションなんてしたことない💦」

Mちゃんは、泣きそうだ。

「私、いいですって、辞退したら?」

Aは、臆病なMちゃんにイライラしている様子だった。

「Mちゃんがここに呼ばれた理由わかる気がする。このドラマの雰囲気にMちゃん、合ってるもの。」

私は、何となく作り手側のイメージを考えると、Aでも、Uでも、もちろん私でもなく、素朴なMちゃんがぴったりな気がしたんです。
あ、もちろん、役柄によっては、合わないこともあるのでしょうが、ドラマの全体的な空気感がMちゃんの空気感と合ってる気がしたんですね。

だけど、私のこの言葉が悪かった。

「アンコに何がわかるの?!Mにどんな魅力があるのよ?!」

私が、余計なとこを口走ったものだから、Aの怒りに油を注いでしまったようでした。

「Mちゃんは、魅力的だよ!どうして、Mちゃんをバカにするの?!」

Uも、語気を強めて参戦して来ました。

「Uまで、何よ!Mの味方?!」

「敵とか味方とかじゃないでしょ。仲間でしょ。」

「この世界、仲間なんていないから❗」

私とMちゃんは、あたふた…。

「仲間なんていないんだよ。みんなライバル。そんなのんきなこと言ってると、いつまでもいい仕事貰えないよ。」

「そういうの寂しくない?」

「寂しくないよ。これが現実。だから、Mみたいに『私はいいよ』なんて言うタイプ、一番イライラする。絶対この世界に合わないから❗」

Mちゃんは、泣き出しそうだ。

撮影の待ち時間で、突然揉め出して、突然の言い争い…。
…と、言うより、Aの独壇場。

Aは、気持ちがおさまらないらしく、顔が真っ赤だ…。












あの頃(舞台)

2020-05-09 07:26:32 | 日記
結局、問題のAとは、何も解決しないまま、距離も縮まらぬまま。

パンツが消えて、戻ってきた…という不思議な事件も、謎のまま…。

ある時、ある有名なドラマの仕事がありました。(国営放送の)

私、U、A、素朴なMちゃんが呼ばれました。

素朴なMちゃんは、本当に素朴そのもので、常に「私はいいです!」と、一歩後ろに下がるタイプ。

「そんな人は、この世界ではいらないよ❗」

…と、Aは、よくMちゃんを威かしていました。

「なんで?!なんでMが来るの?」
「Mが呼ばれたのが、納得いかない」
「私、Mと一緒?」

Aは、このドラマの現場に呼ばれた中にMちゃんが居るのが、本当に納得いかなかったらしく、ずっ~と、文句を言いっ放し…。

Aは、その現場は過去に何度か来た縁があるらしく、『居心地がいい』と嬉しそうでしたが、

大人なUは、いつでもどこでも肝が座っている人なので、通常通り、

私とMちゃんは、そわそわドキドキ。。
(Uは、その局にお父様がお勤めらしいのですが、知っているのは、私だけでした)

現場での通達!

…ひとりだけ、重要な役、あとは、それなりな役。

「ま、そんな感じでしょうね。」…と、つぶやいたのは、A。











あの頃(舞台)23

2020-05-08 07:49:52 | 日記
倒れたセットの看板…どうしよう。

飛び越える…という選択肢は、『有り』かも知れない…と思いながらも、いくら慌てて急いでいても、私の役柄上、思い入れのある看板を乗り越えるのは、マズイよね…。

短い時間で、頭の中は、たくさんの事て『うわんうわん…』と回っていました。

ところで、話しの途中ですが、劇中のアクシデントで小堺一機さんが昔、舞台をやった時の面白かったエピソードを話してくれたことを思い出しました。


ーーー劇中、遠くから聞こえる崖崩れの音。仲間たちが集まり恐怖に怯えるという展開だったとか…。その集まった仲間のひとりが小堺さん。

『ごごごごーーー‼️』←崖崩れの音。
「聞こえたか?!」

…というセリフだったらしいのですが…。

『ごごごごーーー‼』
「ぷぅ~💨」←仲間の放屁
「聞こえたか?!」

…と、なってしまって、笑いを堪えるのが苦しかった…と。

ーーーすみません、脱線しました。
私の話しに戻します。

確かに飛び越えるほど慌てているシーンなので、飛び越えるのは『有り』なんです。

『飛び越えるか…❗』

…いや、まて❗

このあと、暗転が無く、(暗転中に直せない…ということですね)
次に来る感動のシーンに…、あきらかにアクシデントに見える看板の転倒が、お客様の立場で観ると、きっと集中出来なくなる人もいるんじゃないだろうか…(あ、私がそういうタイプなんです)

『慌てる』と『アクシデントの修正』

を、なんとか同時にしないと💦

ええい‼️‼

私は『ひどく慌てる様子』を見せて(セリフの後半の言い回しの"あわてふためく度"をパワーアップ)

勢いを付けて走りました。

バターン‼

思いっきり転倒しました。

あわてふためいていて、こんな大きな看板が倒れているのも目に入らなかった…という設定で。

転んで立ち上がり、

「こんな時に限って、看板まで私の足をすくう…。神様は、私に行くなと言うのかい?」

看板をきちんと立てる。

「だけど、私は行くよ❗」

走り去る。…退場。

…たしか、そんなセリフを言ったと思うんです。(必死だったんで、はっきり覚えていないけど、そんな感じでした)

看板の転倒は、他の出演者やスタッフ、先生も気づいていたらしく。

『このアクシデントをどう乗り切るんだろう…』

と、皆に期待(?)されていたようです💦

その後、転び方が激しかったらしく、幕が降りてから、向こう脛に大きな内出血と激痛が走りました。

こうして、いろいろあった舞台は、無事に終了。

いろいろと勉強になった舞台でした。


あの頃(舞台)22

2020-05-07 04:14:24 | 日記
紆余曲折…。

本当にいろいろあって、なんとか千秋楽を終えようとした時のこと。

私が舞台にひとりで居るシーンで、驚き慌てて、大急ぎ上手から下手に駆け抜ける…という場面がありました。

その時、あり得ない事故が起きました。

私のセリフ中に、舞台セットの看板が倒れたんです。

それが、セリフ中に視界に入っていました。

ゆっ~くり、スローモーションのように。。。

ーーえ?どうする?

私が退場する動線に倒れて道を塞いでいるわけです。

もちろん、お客さんには、『アクシデント』として見えてるはず…。

でもね、私の役柄上、自分の大切な店の看板が倒れて、それを跨いで走り抜けるのが不自然に思えるんです。しかも、大きめな看板が斜めに倒れてるから、ぴょん❗と簡単には行かない(おそらく助走がいるのでは?)

確かに、大慌てで走り抜けるなら、勢いを付けて走って飛び越える!…ソレもありかも知れませんが、役柄は田舎のオバサンです。助走を付けるくらいの勢いを付けると、『若さ』が出てしまいそう…。

しかも、最初の頃のシーンで、看板を嬉しそうに見つめて、語るシーンがあったんです。だから、看板にそれなりの思い入れがあるわけですね。

だから、飛び越えるにしても、何も言わずに飛び越えるのは、違和感が…。

さぁ…どうしよう‼️💦💦

…と、一瞬のうちに、頭の中で、"うわんうわん❗"と考えました。

人って、様々なアクシデントの時、短時間に信じられないくらいたくさん考えるんですね💦