ほど良い曇り


 写真を撮る時の天気は、良いほど良いと思っておられる方は多いと思いますが、抜けるような青空が主題もしくは重要な脇役となるような場合を除いて、実は好ましくないものであったりするのです。例えば今日の一枚。まったくの晴天の場合には、日が当たる部分と陰になる部分の明るさが極端に異なるためにまだらになり、実に見苦しいものになってしまいます。上の写真を撮った時の空は比較的明るい曇天で、雲で拡散された光が辺りを均一に覆い、画面の全体全体の明るさが統一され被写体の状況を客観的に伝えてくれています。

 撮影者の意図を強烈に反映したい場合にはこのような穏やかで客観的な光よりも、もっと強い、あるいは極端に弱い光の方が向いているかも知れませんが、そのような光の下で撮った写真は、時として気を衒ったひとりよがりなものとなってしまう可能性があります。どちらの光を選ぶかは作者の個性が現れるところですが、陽の光の在りようは変えようも無く、その時の光をいかに読み、どのように表現するのかは撮影者の感性と持てる技術にゆだねられることになります。

 先にご覧いただいた写真は、決して上出来な見本としてではなく、郷秋<Gauche>としてはこの場所はこのような光の下で撮るのが最も相応しいと思って撮った一枚であります。

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