書物で読むといろいろと見えてくるようです。
映画では見えないものがあるのかもしれません。
アメリカの刑事司法の現場に不案内な者にもわかり易いのは著者がジャーナリストで法曹関係者でないことがあるかもしれません。
「ACKNOWLEDGEMENTS」によるとロスのCCBのジャジ及びそのスタッフに対する
謝辞が述べられています。
ジャジの法廷、執務室(CHAMBERS)やHOLDING CELLS(裁判所内の拘置室)に
自由にアクセスできたようですし、質問も自由に認められていたようです。
The Lincoln Lawyer (リンカーン弁護士)というタイトルの由来についてです。
ハラー弁護士は、金周りの良かった前の年に「リンカーン」を一度に4台を購入したようです。4台一度に購入するとFLEET RATEになるからというものです。
走行距離計が6000マイルになるまでは自己使用し、その後は空港送迎用のリムジンサービスに売却する計画です。
事件当初は2台目を使用中、未使用の2台は倉庫に保管中、だだ、もう少しで3台目になるとありました。
(調査員レイン殺害に使用された銃の捜索令状執行時には3台目になっています。
事件の進行には大きな意味は見出せませんが、NT GLTY ナンバーは2台目で、捜索を受けた当時はLIMO SERVICE の買い手待ちだったようです。
3台目には運転手のアールから借りた銃が入っていたのです。)
登録上、あるいは依頼者連絡用の住所・電話は2番目のEXで秘書の自宅ですから、リムジンの後部座席を事務所代わりにしていたと表現してもいいかもしれませんが、
常に「新車状態」のリンカーンを乗り回すべく計画というのは相当の覚悟・度胸です。
著者は「引く手あまたの、やり手」弁護士をイメージしていたのではないかと思います。
いつも新車のリンカーンを運転手付きで乗り回しているというイメージです。
なお、2番目のEXのコンドのアドレスも高級住宅地のようですからイメージダウンにはならないようです。
ついでに運転手ですが、元依頼者で弁護士費用支払いのためなのです。
時給20ドル計算で、半分は弁護士費用の支払いにもう半分は本人に実際に支払う、こうすることで、本人の社会復帰にも寄与しているというわけです。
ですから、アールは運転のみで、ドアの開け閉めなどのサービスはしない約束とか。
また、車保管の倉庫は古い事件記録の保管場所でもあるようですが、
これも弁護費用を支払えない元依頼者の父親の好意で無償提供受けているのです。
ハラー弁護士は実務的にもなかなかの抜け目のないやり手のようです。
司法取引のうまい弁護士はいい加減と言う印象をもつかもしれませんが、実際は
そうではなく、逆に優秀なのです。うまいというのは、検察に優位に進めるということです。
検察のいいなりになるような司法取引はいい加減で有能でない弁護士のすることです。
検察側を司法取引に応じざるを得ない状態に追い込む能力を持っているのです。
追い込む材料を掴む、これは優秀な弁護士でなければできないことです。
逆説的ですが、法律的に徹底的に争うタイプなのです。
そういうエピソードも紹介されています。手抜きをしない優秀な弁護士なのです。 (続)