弁護士太田宏美の公式ブログ

正しい裁判を得るために

「ドイツ帝国」が世界を破滅させる、エマニュエル・トッド著 (1)

2016年02月29日 | 日記

先のブログで書いたようにエマニュエル・トッド氏のアメリカ崩壊を予言した
「帝国以後ーアメリカ・システムの崩壊」を注文したが、その際、併せて
”「ドイツ帝国」が世界を破滅させるー日本人への警告”も注文した。
アマゾンのいいところは、「その本を買った人はこういう本も一緒に買っています」
と教えてくれることである。ときには余計なお節介と感じることもあるが・・

「帝国以後」はボリュームがありそうだし、ハードカバーで2002年初出版のものなので、
もう少し新しくて、読みやすいものがほしかったのである。

「ドイツ」本は新書版だし、2015年出版のもの。ただしこれはこれまでの
インタビューの中からいくつかを選択し日本人向けに編集したもの。
初めて読むものとしてはこの程度がいいと思ったのである。
帯の「ギリシャ危機からユーロ崩壊へその真相」というキャッチにひかれたこともある。
ということで、本来の目的の「帝国以後」はちょっと横に置き(ひょっとすると
そのまま寝かせることになるかも、嫌な予感であるが)「ドイツ」本を
読むことにした。

「ドイツ帝国」というのは、要はEUのことである。ドイツが一人勝ちし、「ドイツが
ヨーロッパ大陸を牛耳っている」(第1話部分)ということである。
その結果、ドイツ帝国はアメリカに対抗する力となった。そしてドイツという国は
力を持つと暴走するというDNAを持った国なので、アメリカはコントロールできなくなる、
というのが大雑把な趣旨です。
実は、ギリシャ危機のときにギリシャ救済の条件を最終的に決めたのはメルケルでした。
また、つい最近のイギリスのEU残留の条件を決めたのもメルケルでした。
メルケルとキャメロンがサシで交渉していましたよね。
勿論、最終的には総意によるわけですが、ニュース等を見る限り、他国は追認のような
感じに見えました。
なんでなんだろうと不思議に思っていましたが、この本を読んで納得。
ドイツはEUの盟主、EUはドイツそのものなのだから、ドイツが自由に意思決定できる
というわけである。

これは私のやり方ですが、専門家の言うことだからと言って鵜呑みにするわけではない。
しかし、単なる私個人の見方や考えだけでは何の意味もないので、その分野の専門家
(学者や研究員など)の意見を参考にする、つまり検証するわけです。
納得できるところはそれでよし、納得できないあるいは情報不足・観察不足等で
わからないところは、ペンディングにする。

以下は冒頭ページのまとめの図である。著者の説くところはこうしてみるとよくわかる。

   

注意を引いたのは、ロシア嫌いの国でした。
いずれの国にも旅行したことがある。
バルト三国のロシア嫌いは相当なものであった。これらの国はソ連以前にもロシア帝国
時代に支配されていたのである。
特にエストニアは嫌いというより「ロシア恐れ」の感情は信じられないくらいだった。
バルト三国にわたる200万人が参加したという600キロに及ぶ切れ目のない人間の鎖
はソ連からの独立を狙うものですが、これは出発点というところを見た(リトアニア)。
エストニアはロシア側から見ればフインランド湾に入るところにある目の上のたん瘤的
位置関係にあり、ピョートル大帝のときに現在の首都タリンは既にロシアの支配下になって
いた歴史と関係あるかも。
この感情は、旅行していて肌で実際に感じたのである。説明されたのではありません。
ポーランドもナチスドイツに酷い目にあっているはずですが、ドイツには同情的でしたが
ロシア嫌いはこれまたはっきりしていました。
でも面白いですね。私はソ連様式の代表建築例を知ったのはポーランドにおいてでした。
バカでかいだけで、美的センスは一切なしのものです。
お蔭で昨年のロシア旅行では本場でソ連時代の建築物をすぐに見分けることができました。

スウェーデンでは一切感じませんでした。今回のロシア旅行で知ったことですが、
スウェーデンはむしろスウェーデン側が侵略者だったのです。同じくピョートル大帝のときに
ロシアはやっとサンクトペテルベルクなどを奪還したのです。
ピョートル大帝の有名な青銅の騎士像は海に向かってスウェーデンの方向を見て立っているのです。
またスウェーデンのヴァイキングはバルト湾から黒海まで侵入していたのです。
だから「ロシア嫌い」というのは、ちょっと理解できませんが、複雑な感情があるのでしょうね。
そういえばポーランドも同じようなことがあるのです。
モスクワの赤の広場にある有名なネギ坊主のヴァシーリー大聖堂の前に二人の男性の像があります。
1612年にモスクワをポーランド軍から奪い返すことに成功した英雄なのです。
ポーランドのロシア嫌いも複雑なものがあるのか、それほどスターリンの抑圧がひどかったのか。
こういう感情は第三者には理解しがたいものがあるのでしょうね。
一瞬、韓国のことが浮かんだ。

・・・・・・・・・

ドイツのEU支配をのからくりを知ると、今回の難民騒動について、ドイツは100万人は
受け入れ可能と言っていましたが、それは純粋に人道的立場からのみではなく、安い労働力
(恐らく東欧のEUよりグッと安い)が一挙に来てくれる願ってもない好機と捉えていた可能性が
ある。(難民の中によからぬ偽難民者がドサクサに紛れて混じりこんでいて、当初の計画は
頓挫しているようだが・・)
恐ろしいことである。