障害者自立へ「工賃3倍化」計画
受注減の施設「具体的支援を」
家具の部材づくりに励む利用者たち(鳥取市の白兎はまなす園で) 小規模作業所などで働く障害者の自立を目指し、県は1人当たりの工賃の月額平均を2011年度までに現在の3倍の3万3000円以上にする目標を打ち出し、08年度から商品開発や販路拡大などの支援に乗り出す。しかし、不況下で施設が企業から請け負う仕事は減る傾向にあり、収益確保に悩む施設側からは「新しい仕事を手がけるためのもっと具体的な支援がなければ、実現は難しい」との声が上がる。
県内では、約1300人が91か所の就労支援施設や授産所、小規模作業所を利用。各施設は下請けの部品加工や商品の袋詰めのほか、パンの製造販売などに取り組み、収益を工賃として利用者に分配している。
月額は06年度の調査で平均1万983円。約6万6000円の障害基礎年金(2級)と合わせた月収は約7万7000円で、最低限の生活費と施設利用料に必要な10万円に満たない。
不足分をカバーするため、県が打ち出したのが「工賃3倍化」だ。
国が障害者自立支援法で就労支援の強化を明確にし、07年度から5年間で工賃を引き上げる方針も掲げたのに合わせ、県は昨年8月、施設や企業関係者らでつくる「工賃3倍計画検討委員会」を設置。計画案をまとめ、3月10日まで県民の意見を聞くパブリックコメントを実施している。
計画案では、NPO法人「県障害者就労事業振興センター」(米子市)に支援事業を委託。職員2人が県内全域で受注拡大や製品の販路開拓を進めるほか、企業向けに商談会を開いたり、施設に商品開発を助言するアドバイザーを派遣したりする。
だが、労働力の安い海外への委託先変更や不況に伴う減産で、施設が安定した受注先を得るのは難しくなっている。
約80人が利用する鳥取市の知的障害者授産施設「白兎はまなす園」は、部品加工などの受注が年々減少。1989年に約4000万円あった収入は、04年には約1850万円に減った。
同園は05年から洋菓子製造をスタート。職員が商店などを訪ねて販路を開き、現在は約3000万円の収入の3分の1を洋菓子が占める。それでも、04年に平均1万3300円に落ち込んだ工賃を1万8000円にするのがやっとだ。
平沢康陽園長は「仕事の幅を広げるには職員の増員も必要。庁舎の清掃など官公需を増やす手もあるはずだが、県の支援策はまだ具体策に欠ける」と話す。
県が計画作りの参考に施設を対象に行ったアンケートでも、工賃引き上げの課題として「設備が不十分」(45件)、「職員数や運営費が足りない」(44件)「収益性の高い事業が見つからない」(43件)――などの悩みが寄せられた。
県は、設備投資などへの助成や官公需拡大などは「今後検討する」という。
米子市内の小規模作業所「ひまわり倶楽部(くらぶ)作業所」の曽根節男所長は「工場や店舗に障害者が通う作業所を設け、ともに働く環境を作った企業には大幅に税を減免するなど、支援を促す新しい仕組み作りを考えてほしい」と話している。
(2008年2月29日 読売新聞)
受注減の施設「具体的支援を」
家具の部材づくりに励む利用者たち(鳥取市の白兎はまなす園で) 小規模作業所などで働く障害者の自立を目指し、県は1人当たりの工賃の月額平均を2011年度までに現在の3倍の3万3000円以上にする目標を打ち出し、08年度から商品開発や販路拡大などの支援に乗り出す。しかし、不況下で施設が企業から請け負う仕事は減る傾向にあり、収益確保に悩む施設側からは「新しい仕事を手がけるためのもっと具体的な支援がなければ、実現は難しい」との声が上がる。
県内では、約1300人が91か所の就労支援施設や授産所、小規模作業所を利用。各施設は下請けの部品加工や商品の袋詰めのほか、パンの製造販売などに取り組み、収益を工賃として利用者に分配している。
月額は06年度の調査で平均1万983円。約6万6000円の障害基礎年金(2級)と合わせた月収は約7万7000円で、最低限の生活費と施設利用料に必要な10万円に満たない。
不足分をカバーするため、県が打ち出したのが「工賃3倍化」だ。
国が障害者自立支援法で就労支援の強化を明確にし、07年度から5年間で工賃を引き上げる方針も掲げたのに合わせ、県は昨年8月、施設や企業関係者らでつくる「工賃3倍計画検討委員会」を設置。計画案をまとめ、3月10日まで県民の意見を聞くパブリックコメントを実施している。
計画案では、NPO法人「県障害者就労事業振興センター」(米子市)に支援事業を委託。職員2人が県内全域で受注拡大や製品の販路開拓を進めるほか、企業向けに商談会を開いたり、施設に商品開発を助言するアドバイザーを派遣したりする。
だが、労働力の安い海外への委託先変更や不況に伴う減産で、施設が安定した受注先を得るのは難しくなっている。
約80人が利用する鳥取市の知的障害者授産施設「白兎はまなす園」は、部品加工などの受注が年々減少。1989年に約4000万円あった収入は、04年には約1850万円に減った。
同園は05年から洋菓子製造をスタート。職員が商店などを訪ねて販路を開き、現在は約3000万円の収入の3分の1を洋菓子が占める。それでも、04年に平均1万3300円に落ち込んだ工賃を1万8000円にするのがやっとだ。
平沢康陽園長は「仕事の幅を広げるには職員の増員も必要。庁舎の清掃など官公需を増やす手もあるはずだが、県の支援策はまだ具体策に欠ける」と話す。
県が計画作りの参考に施設を対象に行ったアンケートでも、工賃引き上げの課題として「設備が不十分」(45件)、「職員数や運営費が足りない」(44件)「収益性の高い事業が見つからない」(43件)――などの悩みが寄せられた。
県は、設備投資などへの助成や官公需拡大などは「今後検討する」という。
米子市内の小規模作業所「ひまわり倶楽部(くらぶ)作業所」の曽根節男所長は「工場や店舗に障害者が通う作業所を設け、ともに働く環境を作った企業には大幅に税を減免するなど、支援を促す新しい仕組み作りを考えてほしい」と話している。
(2008年2月29日 読売新聞)