福祉 対「切り捨て」連携不可欠
2007年6月24日
年金だとあれだけの大騒ぎ。障害者問題とは大違いだ。毎日の生活への深刻な影響は同じなのに…。
障害のある人たちを対象にした自立生活センターを福井市で運営する高畑英樹は、連日、報じられる「年金騒動」に複雑な思いを明かす。年金や高齢者福祉に比べ、障害者福祉に接点を持つ人は少ない。障害者の不安や苦しみも、世間にはなかなか「自分の問題」とはとらえてもらえない。もどかしさが募る。
肢体に障害のある高畑は、サービス利用者であるとともに、事業者としても障害者福祉の将来を心配する。「景気回復で雇用環境が改善し、条件のよい仕事が増える。そうなると福祉の担い手は減っていくのでは」
昨年四月から障害者自立支援法が施行。障害者の受けたサービスに応じて支払い負担を原則一割にする「応益負担」になり、利用者の負担が増えた。報酬の算定方式が変わり、どの障害者施設も運営に窮するようにもなった。職員の待遇を改善しようにも、サービス報酬は制度で決まっており、原資がなく、ぎりぎりの経営が続く。高畑の予測は既に現実のものになっている。
障害者福祉の利用者、施設関係者ともに同じ不安を抱える中、今年の統一地方選では「連携」が実現した。県内の障害者と施設関係の九団体が名を連ね、知事選と県議選の立候補予定者に障害者福祉施策についてアンケートを実施。障害の種別や考え方の違いなど、さまざまな壁を乗り越えて結びついた。「以前ならあり得なかった」と参加した団体の関係者は口をそろえる。
今回の参院選。比例代表では、障害者福祉を前面に出した立候補予定者が与党から出る。支援のため、障害者福祉関係の全国団体の中には、新たに「政治連盟」を設立する動きもある。「現実的な財源確保や、次の制度改正への対応も視野に入れ、政治へのかかわりを強めようという機運が高まっているのでは」とみる関係者もいる。
県内ではどうか。ある障害者団体関係者は「同じ障害の親の会でも、ニーズや思惑が細分化されている。要望を国政に反映させるため、各団体が政治面でまとまるのは難しいと思う」と話す。
それでも、じわじわと進む「福祉切り捨て」に歯止めをかけるには、連携が欠かせない。アンケートなど一連の活動にかかわってきた県知的障害者福祉協会事務局長の高鳥敏男は「行政や議員に障害者福祉の現状に目を向けてもらいたい。それには、私たちが少しでもまとまっていくことが大切だと思う」と力を込める。=文中敬称略
2007年6月24日
年金だとあれだけの大騒ぎ。障害者問題とは大違いだ。毎日の生活への深刻な影響は同じなのに…。
障害のある人たちを対象にした自立生活センターを福井市で運営する高畑英樹は、連日、報じられる「年金騒動」に複雑な思いを明かす。年金や高齢者福祉に比べ、障害者福祉に接点を持つ人は少ない。障害者の不安や苦しみも、世間にはなかなか「自分の問題」とはとらえてもらえない。もどかしさが募る。
肢体に障害のある高畑は、サービス利用者であるとともに、事業者としても障害者福祉の将来を心配する。「景気回復で雇用環境が改善し、条件のよい仕事が増える。そうなると福祉の担い手は減っていくのでは」
昨年四月から障害者自立支援法が施行。障害者の受けたサービスに応じて支払い負担を原則一割にする「応益負担」になり、利用者の負担が増えた。報酬の算定方式が変わり、どの障害者施設も運営に窮するようにもなった。職員の待遇を改善しようにも、サービス報酬は制度で決まっており、原資がなく、ぎりぎりの経営が続く。高畑の予測は既に現実のものになっている。
障害者福祉の利用者、施設関係者ともに同じ不安を抱える中、今年の統一地方選では「連携」が実現した。県内の障害者と施設関係の九団体が名を連ね、知事選と県議選の立候補予定者に障害者福祉施策についてアンケートを実施。障害の種別や考え方の違いなど、さまざまな壁を乗り越えて結びついた。「以前ならあり得なかった」と参加した団体の関係者は口をそろえる。
今回の参院選。比例代表では、障害者福祉を前面に出した立候補予定者が与党から出る。支援のため、障害者福祉関係の全国団体の中には、新たに「政治連盟」を設立する動きもある。「現実的な財源確保や、次の制度改正への対応も視野に入れ、政治へのかかわりを強めようという機運が高まっているのでは」とみる関係者もいる。
県内ではどうか。ある障害者団体関係者は「同じ障害の親の会でも、ニーズや思惑が細分化されている。要望を国政に反映させるため、各団体が政治面でまとまるのは難しいと思う」と話す。
それでも、じわじわと進む「福祉切り捨て」に歯止めをかけるには、連携が欠かせない。アンケートなど一連の活動にかかわってきた県知的障害者福祉協会事務局長の高鳥敏男は「行政や議員に障害者福祉の現状に目を向けてもらいたい。それには、私たちが少しでもまとまっていくことが大切だと思う」と力を込める。=文中敬称略