昨年四月に小型家電リサイクル法が始まったのを受け、市川市の社会福祉法人「市川レンコンの会」を利用する障害者が、廃棄された小型家電から有用金属やレアメタル(希少金属)を取り出し、リサイクルに回す仕事に励んでいる。利用者の収入アップを目指す試みで、新たに構えた専用作業所で、利用者四人が銅や鉄などの有用金属、プラスチックを次々と分別している。
小型家電は、パソコンや携帯電話、ゲーム機、カメラなど。金や銅など高価な金属も含むことから「都市鉱山」と呼ばれ、新たな資源供給源として注目されている。
市川市では、小型家電は燃えないごみとして収集。分別後にリサイクル業者に回していた。市の家庭ごみの収集運搬業者でつくる市清掃業協同組合が「別の資源再生ルートをつくり、福祉作業所の新たな収入源にならないか」と発案した。組合は、公民館など市内二十二カ所にある回収ボックスの廃棄家電を市から無償で譲り受け、福祉施設などに搬入。施設は分別し、有用金属を取り出す流れだ。
組合から打診を受けたレンコンの会は、利用者の中から手先の器用な人を集め、今年六月に事業を始めた。組合が運び入れたものに、職員と利用者が住宅を回って集めた分も加えた月三百~三百五十キロを解体、分別している。先日一定量がたまり、初めて銅を業者に販売。九百二十キロが一万八千四百円になった。
レンコンの会職員で指導役の前島隆之さん(43)は「最近、作業速度が上がってきた」と利用者の成長ぶりに手応えを感じている。同会を立ち上げた林敏之さん(67)は「利用者の工賃アップにつなげていきたい」と語る。
パソコンの解体をしていた軽度の知的障害がある菅貞道さん(62)=船橋市=は「楽しい。手の運動にもなる」と真剣な表情でドライバーなど工具を操っていた。
この事業には、市川市大野町の県立特別支援学校市川大野高等学園も参加。授業の一環として六月から、流通コースに所属する一、二年生計六人が取り組む。業者に販売せず、取り出した有用金属は組合に提供する。二十九日には、プラスチック約六十キロを初めて「出荷」する予定だ。
基板を解体し、有用金属を取り出している市川レンコンの会の利用者=市川市末広で
2014年9月29日 東京新聞