400人の知的障害者の就職を実現した事業協同組合が大阪市内にある。大阪知的障害者100+ 件雇用促進建物サービス事業協同組合、通称「エル・チャレンジ」だ。障害者自立支援法の施行後も知的障害者の雇用が依然厳しい中、就労の手がかりはどこにあるのか。活動に密着したドキュメンタリー映画「モップと箒(ほうき)」は、その可能性を提示する。
同組合は1999年、知的障害者100+ 件の支援団体やビル清掃業者など4団体が設立した。当時、知的障害者の就業率は低迷し、14・6%(98年、大阪府調べ)。「遅々として進んでいない状況だった」と同組合事務局長の丸尾亮好さん(40)は振り返る。
「モップと箒」は、障害者の日頃の訓練や企業での面接、就職後の様子などを数カ月にわたって撮影している。真剣に取り組む人もいれば、支援スタッフが目を離すとすぐに手を抜く人、人間関係がうまくいかず就職先が安定しない人、さまざまだ。監督の北川希(のぞみ)さん(32)=大阪府松原市=は「当たり前だけど、自分と変わらないなと感じた」と話す。
エル・チャレンジに訓練生として入った障害者は、公共施設などの清掃作業で就労体験を積み、一般企業への就職を目指す。スタッフは作業の訓練から面接の指導、仕事の定着までサポートする。また障害者100+ 件の職域拡大に向け、大阪府や大阪市に働きかけた結果、公共事業の入札で、予定価格だけでなく障害者の雇用状況や環境への配慮などの項目も評価する「総合評価一般競争入札」が導入された。
「今まで障害者とは縁のない人生だった」とある企業の雇用担当者はカメラの前で正直に語る。「でも付き合うからにはとことんやる」と仕事の手順だけでなく就労態度も厳しく指導。「貴重な戦力になっている」と働きに太鼓判を押す別の雇用主もいた。障害者を受け入れることで、雇用する側にも明らかな意識の変化がうかがえる。
多くの知的障害者にとって、授産施設が社会参加の場になっているが、報酬である工賃は著しく低い。大阪府内では月額平均1万487円(2010年度)、兵庫県内は1万1077円(09年度)で、自立にはほど遠い額だ。
同組合は障害者の働く可能性を広げようと職域の開拓に取り組み、病院や公園、ビル管理会社などへの就職に結びつけてきた。雇用形態は大半が1年契約だが、授産施設とは賃金面で格段の差がある。
丸尾さんは「授産施設の役割を否定するわけではない。でも障害者100+ 件には他にもいろんな世界があることを知ってほしい」と力を込める。
「詰まるところ、雇用は人と人。就労支援に限らず、企業ともっといろいろ言い合える関係になりたい」と丸尾さん。北川監督も「この映画が障害者雇用を取り巻く現状や課題を考えるきっかけになってくれれば」と話している。
9月10日から、同市西区のシネ・ヌーヴォX(TEL06・6582・1416)で公開。
神戸新聞 -
同組合は1999年、知的障害者100+ 件の支援団体やビル清掃業者など4団体が設立した。当時、知的障害者の就業率は低迷し、14・6%(98年、大阪府調べ)。「遅々として進んでいない状況だった」と同組合事務局長の丸尾亮好さん(40)は振り返る。
「モップと箒」は、障害者の日頃の訓練や企業での面接、就職後の様子などを数カ月にわたって撮影している。真剣に取り組む人もいれば、支援スタッフが目を離すとすぐに手を抜く人、人間関係がうまくいかず就職先が安定しない人、さまざまだ。監督の北川希(のぞみ)さん(32)=大阪府松原市=は「当たり前だけど、自分と変わらないなと感じた」と話す。
エル・チャレンジに訓練生として入った障害者は、公共施設などの清掃作業で就労体験を積み、一般企業への就職を目指す。スタッフは作業の訓練から面接の指導、仕事の定着までサポートする。また障害者100+ 件の職域拡大に向け、大阪府や大阪市に働きかけた結果、公共事業の入札で、予定価格だけでなく障害者の雇用状況や環境への配慮などの項目も評価する「総合評価一般競争入札」が導入された。
「今まで障害者とは縁のない人生だった」とある企業の雇用担当者はカメラの前で正直に語る。「でも付き合うからにはとことんやる」と仕事の手順だけでなく就労態度も厳しく指導。「貴重な戦力になっている」と働きに太鼓判を押す別の雇用主もいた。障害者を受け入れることで、雇用する側にも明らかな意識の変化がうかがえる。
多くの知的障害者にとって、授産施設が社会参加の場になっているが、報酬である工賃は著しく低い。大阪府内では月額平均1万487円(2010年度)、兵庫県内は1万1077円(09年度)で、自立にはほど遠い額だ。
同組合は障害者の働く可能性を広げようと職域の開拓に取り組み、病院や公園、ビル管理会社などへの就職に結びつけてきた。雇用形態は大半が1年契約だが、授産施設とは賃金面で格段の差がある。
丸尾さんは「授産施設の役割を否定するわけではない。でも障害者100+ 件には他にもいろんな世界があることを知ってほしい」と力を込める。
「詰まるところ、雇用は人と人。就労支援に限らず、企業ともっといろいろ言い合える関係になりたい」と丸尾さん。北川監督も「この映画が障害者雇用を取り巻く現状や課題を考えるきっかけになってくれれば」と話している。
9月10日から、同市西区のシネ・ヌーヴォX(TEL06・6582・1416)で公開。
神戸新聞 -