三つぞろいのダークスーツ姿で、手にはほうきとちり取り―。茅ケ崎駅前で8カ月ほど前から、自主的に清掃活動を続ける男性がいる。ディズニーランド流の“魅せる掃除”で、さりげなく通行人の目を楽しませ、気持ちのよい駅前空間をつくり出す。引きこもりだった男性は、自らの活動で以前の自分と同じような悩みを抱える人に「一歩踏み出す勇気」も伝えようとしている。
「サッササッサ」―。休日の午後3時。駅前ペデストリアンデッキが加藤壮章さん(31)=茅ケ崎市中海岸=の“舞台”だ。
自転車用の滑り止めテープを巻いたほうきを手首で操り、掃く音でリズムを刻む。たばこの吸い殻や紙くずを両脚の間から通したり、ステップを踏んだり。次第に周囲の視線を集めていく。
見る人も楽しい掃除の技術は、ディズニーランドに清掃係として勤めているときに学んだ。5年前に辞めた後も「この技術をどこかで生かしたい」とずっと胸に秘めていた。
「地元の駅でやってみよう」。そう決意し、2011年4月から始めた。普段は大和市内の障害者施設に勤めているが、週に3日、仕事の後や休日に1時間ほど1人で地道に掃除を続けている。
実は最初は恥ずかしくてたまらなかった。「自分は人一倍怖がり。でも、やってみないと分からないことだってある。下手くそでもいいから踏み出すことが大事」。活動の評判が広がり、市内の中学校や高校に講師として招かれた時、そう伝える。
掃除は、加藤さんが5月に立ち上げた引きこもり・不登校支援のNPO法人「一心一(いっしんよこいち)」の事業の一つでもある。自身、中学1年から高校1年まで引きこもりだった。
教師の「逃げるな」という一言で高校1年の終わりから学校に通い、卒業後は自衛隊員となった。その後、1年8カ月かけて歩いて日本一周を達成。人との出会いを通して、感謝や思いやりの心を学んだ。
「汚点だと思っていた引きこもりも、今の自分にとっては誇り。すべての経験が糧になって今の自分がある」。不登校や引きこもりの人と一緒に掃除活動をするのが夢だ。
人にいい気付きを与えられる自分でありたいとも思っている。「掃除をする姿を見せて、ポイ捨てをやめようと思ってくれる人がいたら万々歳です」
ほうきとちりとりを操り、ステップを踏みながら掃除する加藤さん=JR茅ケ崎駅前北口のデストリアンデッキ
カナロコ(神奈川新聞) - 2011年12月30日
「サッササッサ」―。休日の午後3時。駅前ペデストリアンデッキが加藤壮章さん(31)=茅ケ崎市中海岸=の“舞台”だ。
自転車用の滑り止めテープを巻いたほうきを手首で操り、掃く音でリズムを刻む。たばこの吸い殻や紙くずを両脚の間から通したり、ステップを踏んだり。次第に周囲の視線を集めていく。
見る人も楽しい掃除の技術は、ディズニーランドに清掃係として勤めているときに学んだ。5年前に辞めた後も「この技術をどこかで生かしたい」とずっと胸に秘めていた。
「地元の駅でやってみよう」。そう決意し、2011年4月から始めた。普段は大和市内の障害者施設に勤めているが、週に3日、仕事の後や休日に1時間ほど1人で地道に掃除を続けている。
実は最初は恥ずかしくてたまらなかった。「自分は人一倍怖がり。でも、やってみないと分からないことだってある。下手くそでもいいから踏み出すことが大事」。活動の評判が広がり、市内の中学校や高校に講師として招かれた時、そう伝える。
掃除は、加藤さんが5月に立ち上げた引きこもり・不登校支援のNPO法人「一心一(いっしんよこいち)」の事業の一つでもある。自身、中学1年から高校1年まで引きこもりだった。
教師の「逃げるな」という一言で高校1年の終わりから学校に通い、卒業後は自衛隊員となった。その後、1年8カ月かけて歩いて日本一周を達成。人との出会いを通して、感謝や思いやりの心を学んだ。
「汚点だと思っていた引きこもりも、今の自分にとっては誇り。すべての経験が糧になって今の自分がある」。不登校や引きこもりの人と一緒に掃除活動をするのが夢だ。
人にいい気付きを与えられる自分でありたいとも思っている。「掃除をする姿を見せて、ポイ捨てをやめようと思ってくれる人がいたら万々歳です」
ほうきとちりとりを操り、ステップを踏みながら掃除する加藤さん=JR茅ケ崎駅前北口のデストリアンデッキ
カナロコ(神奈川新聞) - 2011年12月30日