高齢者や障害者など、社会的弱者を踏みにじる非常識な出来事が次々と起きている。市内バスから遅れて降りたことを理由に、女性障害者に暴行を加えたり、高齢者福祉施設にボランティアに行った高校生らが、認知症をわずらっている高齢者に暴言をぶちまけたりするなどがその例だ。弱者を配慮する暖かい社会になるまでの道のりはまだまだ遠いのが、13年の大韓民国の現状だ。
2日午前7時48分。光州市北区雲岩(クァンジュシ・プクグ・ウンアム)2洞の交差点のバス停に停車した95番の市内バス。知的障害2級(脳病変)のチェ某氏(58、女)は、乗客80人あまりが乗り込んでいた満員バスから降りようとした。二つ手前のバス停から乗車したチェ氏は、後から乗ってきた乗客らに押されて、バスの真ん中で板ばさみになっていた。降りるため、後ろのドアのほうに前もって移ろうとしたが、満員の人たちのために、なかなか移動できなかった。ついに、降りなければならないバス停に着いたが、不自由な体で乗客の合間を縫って、進むことは容易ではなかった。
バスの運転手は、停車した状態で待っていながら、「お体の不自由な方が降りようとしています。奥の方につめる、あるいは前後に移動するなど、スペースの確保にご協力願います」と訴えた。すると、バスの出発が遅れることに不満を感じたと見られる一人の男性客が、乗客の合間を縫って、ドアのほうに向かっていたチェ氏に暴言をぶちまけた。さらに、手のひらでチェ氏の顔を殴り、足で太ももを4度も蹴った。
暴行を受けたチェ氏は抵抗すらできず、「遅れて降りてすまない」と口にした後、かろうじてバスから降りた。バスは、バス停に2分ほど停車していたという。チェ氏はその後、光州北区の障害者施設の関係者の手助けを受け、病院で治療を受けた。チェ氏の顔や太ももには、あざがついていた。チェ氏はその後、光州北区警察署に自分を殴った男性客を探して処罰してほしいと、医者の所見書を出した。
警察は、問題の市内バスを捜したが、事件当日、故障した車の代わりに投入された臨時車両であり、内部に監視カメラは取り付けていなかった。市内バスの運転手は、警察で、「チェ氏が降りるとき、暴言を吐くのは聞いたが、殴るのは見なかった」と供述した。警察は犯人を逮捕するため、目撃者を探すチラシを配布した。チラシを見た主婦のA氏(43)は、警察に、「20代後半から30代前半と見られる男性が暴言をふるい、足で蹴ったが、周辺の男性客らに阻止された」と通報した。警察は、暴力を振るった男性の身元を把握するため、捜査に全力を挙げている。
27日午前、全羅南道順天(チョンラナムド・スンチョン)のB老人福祉施設の305号室では、高校生が暴言を振るう出来事が起きた。学校内でタバコをすっていたところ摘発され、5日間のボランティア活動を命じられた。同日、初めて福祉施設を訪れた高校2年生のチャン某君(17)は、認知症を患っているリュ某氏(89)に対し、「ひざまずけ。これこそお前の目線だ」と叫んだ。チャン君の暴言に、認知症患者のリュ氏は、手を振りながら、何度も「どうも恥ずかしい」と口にした。
チャン君は、パク某氏(73)に対しても、「おい、おまえ、立ち上がれないのかよ」と大声で叫んだ。認知症を患っているパク氏は、体が不自由で、ベッドから起きられない状態だった。ボランティア活動の処分を受けて来た友達のキム某君(17)は、ニコニコ笑いながら、チャン君が暴言を振るう場面を、携帯電話のカメラで撮影した。当時、ベッドには、暴言を振るった二人の高校生と認知症の高齢者2人だけだった。見境のつかない高校生らの逸脱した行為を制止できる引率教師や介護人、保護者は、病室にいなかった。キム君は同日午後、ソーシャルネットワークサービス(SNS)に暴言の動画を掲載した。自分らのボランティア活動を周辺に知らせるためだったという。
彼らは27日夜、学校での調査で、「おばあさんらが笑って、気に入っているみたいだったから、いたずらをしただけだ」と釈明した。しかし、学校を訪れた保護者らが、教務室でひざまずき、「許してくれ」と許しを請うと、後で状況の深刻性に気づき、謝罪した。学校側は、彼らに重い処分を下す方針だ。
B老人福祉施設は、チャン君などが、おばあさんらに恥をかかせ、その動画をネット上に掲載した容疑で訴えることにした。全羅南道順天警察署は、チャン君など2人について取調べを行ったあと、立憲するかどうか決める方針だ。
東亜日報- MAY 29, 2013 04:29