聴覚障害者と健常者の音楽の祭典「エンターテイメント サーカス」が11月1日、名古屋市内のライブハウスで開催される。収益で聴覚障害者団体に寄付しようと始めたイベントで、今年で10年目を迎える。プロデューサーでロックバンドのリーダーを務める石川徹さんは「10年も続いたのは奇跡。まさかという感じ」と感慨深げだ。
きっかけは2005年の愛知万博。同万博のプロデューサーを務めていた知人から「障害のある人と一緒に音楽イベントをやろう」と持ちかけられ、「ロックで社会貢献ができるなら」と引き受けた。翌06年に初開催。スクリーンに歌詞などの字幕を映し出し、難聴者でも楽しめるよう工夫した。しかし、つたない運営で十分な収益は得られず、聴覚障害者団体への寄付は出来ずに終わった。それでも必死に出演者を説得し、会場とも交渉を重ね、イベントを継続。その努力が実り、4回目以降は安定した形で、寄付が出来るまでになった。
5回目までは、常に新しい出演者を加え、支援の輪を広げてきたが、6回目は固定メンバーのみの出演となった。「5回目で一気に力が抜けた」という石川さんは6回目をやったら10回目まで続けなくてはいけないというプレッシャーを感じ、悩んでいた。そんな時、仲間の一人に「あなたがしっかりしないといけない。こちらはちゃんとついていくから」と言われ、再び心に火をつけることができた。
「耳が聞こえなくても音楽を愛することができる」。これまで毎年のように共演しているロックバンド「BRIGHT EYES(ブライト・アイズ)」のメンバーは4人のうち、3人が聴覚障害者だ。そのメンバーが語る言葉を胸に、10年目を迎える。「聞こえないのに音楽をやろうという彼らの勇気と熱意を感じてもらえれば」。そう石川さんは力を込める。
今年もナレーションの時には手話通訳が行われ、バンドのほかダンサーやアイドルたちも出演する。10年目を記念して、聴覚障害者らを支援する名古屋市のNPO法人「つくし」からお祝いに手作りのせっけんが届けられ、当日は先着で300個が来場者らに贈られるという。
1日は午後2時開演。会場は名古屋市千種区今池のボトムライン。チケットなど問い合わせはボトムライン(052・741・1620)。
来月1日に開催するイベントのポスターを手にPRする石川さん
2015年10月30日 Copyright © The Yomiuri Shimbun