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アニメ『涼宮ハルヒの憂鬱』考――涼宮ハルヒの席替え

2015-10-08 17:51:19 | 雑文
後に広く知られることとなる「ただの人間には興味ありません」発言を行った時、彼女の座席は、教室の中央に位置していた。
それから一ヶ月ほどしてからだろうか、席替えが行われ、涼宮ハルヒは、窓際の一番後ろに座ることになる。これは、ただそれだけのこと、くじ引きによって偶然そうなったこと、ではない。
そこには、彼女の願望と、特質が反映されている。
まず、極めて人間的な願望として、窓際のほうがいい、とか、教壇から離れた場所がいい、と願うのは自然なことだ。彼女の素直な願望が、そのまま反映されている、と見ていい。
ただ、ひとつ前にキョンがいる、という点を踏まえると、もうひとつの願望が見えてくる。
自分の前に座っている、ということ。それは、自分の盾になって欲しい、ということでもあり、自分の前を行く存在であって欲しい、ということであり、常にその人の背中を見ていたい、ということでもある。
彼女の、キョンへのそのような感情が、二人の席並びに表れている。おそらく、彼女の心変わりがない限り、何度席替えをしようが、二人の座席が動くことはないだろう。
それと、「窓際の一番後ろ」には、もうひとつの意味がある。
この座席は、教室中の全てを見渡せる位置にある。教師にせよ、生徒にせよ、その中に在する者全員を把握できる位置である。逆に、多くの生徒は背を向けているので、その位置をあまり視認することができない。この、「全てを眺めることができ、かつ、自分はあまり認められることがない」位置、これはすなわち「神」の立ち位置である。
涼宮ハルヒが神であることの傍証は、こんな所にも現れている。


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