3週間前に多和田葉子のベルリン通信『住みたい世界、風車に思う』が朝日新聞にあった。新型コロナ禍ということで、日本より厳しい行動規制下にある、ドイツの日常の報告である。
《 少しでも天気がいいと、家の近くの公園には子供たちが雀(すずめ)のように群がって遊んでいる。見守る親たちも騒がしくお喋(しゃべ)りに花を咲かせている。……。ジムもヨガ教室も子供のサッカー教室もロックダウンで閉鎖されている中、子供と近所の公園で遊ぶというシンプルな時間の過ごし方が見直されているのかもしれない。》
マスクをしているのだろうか。
《 ショッピングという時間の過ごし方も忘れられつつある。……。映画館も美術館も図書館も閉まっていて、コンサートも演劇もないベルリン。個人宅にも家族以外は一人までしか招き入れることができず、夜間外出も禁止され、個人の生活分野まで法的規制がかかっている。》
こんなに、私生活が規制されているのに、「住みたい世界」というタイトルに驚く。日本では緊急事態が宣言されているのに、デパートは開いているし、塾もなんでもないように開いている。1か月後に東京オリンピックは、菅義偉の意向で、会場に観客をいれて行う予定であるという。単に飲食店の時短規制だけである。
それにもかかわらず、多和田がドイツ政府に信頼を寄せているのは、つぎの理由からだ。
《 そんな中でちょっと意外なものが禁止されていない。デモである。事前に申請し、マスクをして間隔をとって歩くなどの規則を守れば問題ない。デモをする権利はそこまで重要な権利として保障されているのかと思うと、言論の自由のありがたさが身に染みる。》
東京書籍の公民の中学教科書に「表現の自由」としてのデモの権利が載っていなかった。右翼であるはずの育鵬社の以前の教科書にはデモの権利が載っている。日本の文部科学省はデモの権利を否定したのだろうか。
報告では、多和田の参加したのは「風車(かざぐるま)」というデモである。手作りの風車をもって、参加するデモである。毎年、開かれているデモである。風力発電に反対するのではなく、原子力発電に反対するデモである。
しかし、デモに参加することで、自分たちの存在を主張することを楽しんでいるようである。「家賃の上限制限を求める団体の人たち」や「右翼に反対するおばあちゃんたちの会」の人たちもいるという。
ドイツは2022年に原子力発電所をすべて撤廃する。
日本の右翼「自民党」「公明党」「維新の会」は、理屈抜きで、原子力発電を敢行し、東京オリンピックを敢行する。いつから、日本人は、おかみに従う従順な家畜の群れになったのか。
今年のベルリンでは、「冷たい風が吹き、氷の混ざった雨が時々降っていた」中で、3 月 6 日 (土)、かざぐるまデモが行われたとのことである。