きのうの朝日新聞『(オピニオン&フォーラム)移民は日本を変えるか』はひさしぶりに対談であった。対談でないと議論がかみ合わない。これまで、「耕論」とかは、論者が一方的に朝日新聞記者に意見をのべるというもので、ダイアログによる議論の深化というものが見えなかった。
今回は、移民を法的に認めないというなかでの移民国家日本について、政府機関の国立社会保障・人口問題研究所の部長の是川夕と慶応大学教授の小熊英二が対談した。
是川の主張は、日本でのこれまでの移民の研究は、「正当でない方法で外国人をいれている」との視点で移民研究が行われ、日本に定住した移民の暮らし向きの変化を説明できていない、と言うことである。暗に自分の研究は意味があると言っている。
小熊の主張は、透明性を欠く恣意的な日本の移民政策は、移民にとって不利益を生んでいる。政府の恣意的な移民政策が非人間的な外国人の扱いを生んでいる現実を、政府機関の研究所の部長である是川が、見ることを避け、移民が日本社会にゆっくりと同化しているとの研究を進める意味を、小熊は問うているのである。
私も、是川は、結果的に、日本における外国人労働者の扱いに対する国連人権委員会の非難をかわす研究を行っているだけ、と思う。社会科学において何か中立的な研究があるわけではなく、それは幻想である。
この対談でも、小熊のツッコミで、技能実習制度は日本人も嫌がる地方の低賃金の労働に外国人を縛り付ける役割をしていることを、是川は認めている。
政府系の研究所の研究は、政府の政策に使われる。したがって、政府の施策がどのような人権侵害を招いているか、その施策は日本のどのような経済的理由で始められたのか、人権侵害を引き起こさない形で、外国人労働者を日本に招くことはできないか、を事実にもとづいて研究すべきだと私は思う。
是川の言っていることは、人権侵害は、政府の責任ではなく、日本に働きにくる外国人の自己責任だと言っているにすぎない。
去年、入管施設でスリランカからきた女性が満足な医療を受けられず死んだ。また、技能実習生が建設現場で日本人の同僚から日常的暴力を受けていたことが、支援団体によって明らかされた。技能実習生への人権侵害は新聞などがこれまで取り上げてきたが、政府機関も正面からとりあげるべきである。
本当に、政府機関も会社も、長と名のつく役職にいる人間には、ろくな者がいない。上が喜ぶ報告ばかりを上にあげて、結局、国や会社をほろぼす。
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