猫じじいのブログ

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インフレ推進派 渡辺努の『値上げ嫌いこそ元凶』に異議あり

2021-09-09 21:33:53 | 経済と政治

きのうの朝日新聞に、『値上げ嫌いこそ元凶』という渡辺努のインタビュー記事があった。彼が言いたいことは、日本の経済が悪いのは日本人が値上げきらいになったから、であった。

しかし、私の感覚では、この間、食品の値段も車の値段も上がっている。私のような年金生活者には収入が伸びる見込みがないから、ひたすら生活の質を落とすしかない。渡辺は、多くのひとびとが生活の質を落としている現状を知っているのか、と思ってしまう。

まず、彼の言い分を聞いてみよう。

《消費者の根柢に『1円でも余計に払いたくない』という心理があるからです。》

《ある食品メーカーの社長は、海外の取引先はコスト上昇分の価格転嫁を受け入れてくれるのに、日本の流通大手は正当な理由を説明しても納得してくれないと嘆いていました》

《あなたは貧乏なのですか、消費者に訪ねてみたくなります。少なくても平均的な年収があれば容認できるはずなのに、それでもイヤだというのですから》

「平均的な年収があれば容認できる」と言うが、「平均」は「中間値」よりかなり大きい。単に渡辺の年収であれば、商品の値段が上がっても不満をもたないと言っているだけだ。

ほんとうに日本人は「値上げ嫌い」なのか、それは、消費者が悪いからか、サービス提供者が悪いのか、流通業者が悪いからか、製造業者が悪いからか、その根拠は何か、このインタビュー記事からはわからない。

渡辺は、安倍政権の「円安政策」に言及しない。「円安」とは輸入材の値上げを招き、賃上げがなければ、本来は、実効的に日本の労働者の賃下げとなる。食品メーカは直接商品価格を上げるのではなく、商品の質、量を落とすことで対応した。現在は、それでも対応できず、値上げをしている。

輸出する製造業は輸出商品の価格を上げることで、労働者の賃金を上げるべきだったのではないか。労働者、消費者は「円安政策」の犠牲になっているのではないか。それなのに、渡辺がなぜ消費者を責めるのか、不可解である。

さらに、わからないのは、日本経済のために、なぜ「値上げ」をしなければいけないのか、である。引用を続けよう。

《企業は、値上げが一切できないということを前提に活動しなければならない。コスト削減に追われて、賃金を上げている場合ではない。商品の開発も、設備投資も、技術革新も、前向きな動きがすべて止まっている。》

《仮に生産性が上がらなくても、賃金も物価も上げられるということです。》

最後まで読むと、渡辺の本音がでてくる。

《私はいまの日本も、物価を上昇させるねらいで、カルテルのように競争を宣言する手段を試みても良いのではないかと思います。》

これでは、政府の政策のつけ、企業家の無能さをすべて、消費者に押しつけようとしている。

渡辺は、日本経済の実態、日本人は貧乏になっている、価格を抑えるために商品の品質を下げている、飲食業や観光業など生産性の向上が望めない接客業の増加で失業を抑えているということを、を無視している。悪夢のような自民党・公明との連立政権のもと、日本経済は深い傷を負ってきたのである。



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