きょう、アフガンニスタンの首都、カブールが、タリバーンの軍に陥落した。
カブールの陥落は、私の年代のものに、アメリカ政府が支援した南ベトナムのサイゴンの陥落を思い起こさせる。1961年、アメリカの新大統領になったジョン・F・ケネディ―は、北ベトナムと南ベトナムとの内戦に介入すると、就任演説で宣言した。ベトナム戦争は、1975年のアメリカ軍撤退で終結するが、4月30日の南ベトナムの首都サイゴンは、陥落で逃げ惑うベトナム人で大混乱になった。南ベトナムでアメリカ軍の作戦に参加していた韓国軍兵士、フィリピン軍兵士は、アメリカ軍に見捨てられて、自力で逃亡するしかなかった。アメリカに協力した民間の日本人も、アメリカ軍に見捨てられ、自力脱出しかなかった。
陥落ということは、アメリカが負けたということで、アメリカに協力した人々も すべてを失うことである。
ベトナム戦争では、アメリカでもヨーロッパでも日本でも戦争反対の運動が起きていた。私もベトナム戦争に反対するのが当然だと思っていた。だから、徴兵制で駆り出されたアメリカ軍の兵士以外は、覚悟の上のベトナム侵攻であったともいえる。ただ、みんなが負けると予期していたのかは疑問が残る。
とにかく戦争というものは、駆り出された兵士にとって、いつも無意味な死を覚悟しなければならない。
アフガニスタンの戦争は、2001年9月11日にニューヨーク市のワールドトレードセンターへとバージニア州のペンタゴン本部への航空機突入で始まる。アルカイダがハイジャックした民間旅客機で一般客もろとも体当たり攻撃をかけたのである。ワールドトレードセンターが火を噴いて崩落したのをテレビで見たが、ペンタゴンも被害を受け、ペンタゴンの125人と旅客59人が死んだのに当時気づいていなかった。アメリカ軍本部のペンタゴン攻撃は、テレビでは放映されなかった。
当時、ジョージ・W・ブッシュが1期目の大統領で、支持率が低く、2期目の当選はないと言われていた。アメリカの同僚もブッシュをあざける動画を会社内で私に見せてくれ、再選はありえないという雰囲気であった。
ところが、9月11日以降、若者が町に繰り出し、星条旗を振ってUSA、USAと連呼した。銃をもったアメリカ軍兵士が空港を警備するようになった。アルカイダは、アメリカ人のなかにあった「強いアメリカ」というプライドを傷つけたのである。ブッシュは、10月7日からアフガニスタンの空爆を始めた。対テロとして戦争を始めたので、明確な宣戦布告なんてなかった。タリバーン政権はアルカイダを保護していたのは事実だが、ブッシュは、タリバーン政権をテロリストと位置付けることで、他国に公然と侵攻したのである。ブッシュがこの「復讐の戦い」をしたことで、支持率を回復し、2004年の大統領選に勝利したのだ。
このアフガニスタン戦争は、ベトナム戦争の長さを越えて、20年近く続くのである。復讐を唱えて他国に侵攻し、勝ったのだから、そこで、「鬼を征伐した、めでたし、めでたし」で、やめれば良いものを、復讐の戦いから、正義の戦いに転換しようとしたものだから、多く人を巻き込んで、長い長い戦争になったのである。
人間はバカな生き物である。怒りから相手を殴り殺してから、自分の方が強いと気づいて、言い訳を考える。アメリカ政府が正義の人を装うために、民主主義国家をつくるとか、女性の社会的地位を向上させるとか、言い出したために、長い長い戦争になったのである。
殺すのは簡単だが、統治はずっと難しい。アフガニスタン侵攻だけでなく、イラクまで侵攻するものだから中東全体を混乱に陥れた。また、イスラム社会に対する偏見をアメリカやヨーロッパに広めた。
アメリカ政府の大義名分を言葉どおりに信じた、アフガニスタン人や全世界の善良な人々がいたはずである。アフガニスタンにいる これらの善良な人々はいま恐怖の中にあるだろう。また、アメリカ政府は、国際治安支援部隊(ISAF)を組織化したため、多くの国の若者がアフガニスタンの戦争に巻き込まれ、死んだり、手足を失った。カブール陥落という形で戦争が終結し、大義名分が幻想だったとなった いま、とてもむなしい思いにあるだろう。
戦争は無意味である、ただ、残酷で憎しみに満ちたものである。日本の若者が政治家に騙されて、このアフガニスタンの戦争に参加しないで済んだのは、日本国憲法9条のおかげである。
《第九条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
○2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。》
安倍晋三の積極的平和主義とは虚構である。いまBBC放送を聞いているが、国連もウソがまかり通るところである。他国に行って戦うような愚かなことをすべきでない。
[補遺]
きのうは、アニメ『この世界の片隅に』をテレビで見て、私は涙を流していた。
[補遺]
殺された中村哲医師が先頭にたってアフガニスタンに作った水路は、カブール陥落後も、ちゃんと維持されるのだろうか。日本とのつながりが維持されるよう祈る。
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