今日の朝日新聞1面のトップ見出しが『攻撃ドローン「日本製部品」』であった。私は、なぜこれがトップ記事なのかをいぶかしく思う。
攻撃ドローンは日用品を組み合わせて安く作ることのできるゲリラ用の武器である。小泉悠が『現代ロシアの軍事戦略』(ちくま新書)に書いていたように、弱点だらけで、製造コストの安さを無視すれば、近代兵器に大きく劣る。移動スピードは遅い。電波で操縦する必要がある。載せる爆弾は軽くないといけない。
あくまで、貧しい国や非正規軍が金持ち国の正規軍に対抗するための兵器である。アメリカ軍は これより はるかに高性能の無人兵器をもっている。アメリカ軍の無人兵器のほうが速くて電波妨害に耐え爆撃能力に優れている。
とすると、この記事は、日本の軍事産業の輸出を許すための地ならしか、日本の非軍事民間産業への輸出規制強化をもたらす前ぶれとしかならない。確かに、最近、日本の軍事産業は輸出規制によって経営が困難になっているという記事が新聞紙上をにぎわしている。
ジャーナリストの良心が問われる。
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今年の12月12日に自民、公明の両党は、政府の3文書「国家安全保障戦略」「国家防衛戦略計画」「防衛力整備計画」に合意した。ついで12月16日に閣議決定され、現在、防衛省のサイトにそのpdfファイルが公開されている。
この3文書の改定は、今年の1月から政府が一部の官僚と非公開の有識者会合で作成してきたものだ。順に約2万9千文字、約3万2千文字、約3万2千文字にのぼる。私のような一般人には、即座に読み切れない量である。
メディアが 日本の安全保障政策の大転換であるというが、ジャーナリストは 国民に分かりやすく、かつ、見落としのない批判を展開しないといけない。
与党協議も、10月中旬からの毎週1〜2回のペースの計15回の実務者協議、両党幹部の親会議2回だけである。公明党は、統一教会問題で自民党の脅しをうけ、安易に合意したのではと私は疑う。
政府が1年間かけて作った安保政策なら、少なくても、1年かけて国会が審理せねばならない。
「国家安全保障戦略」は、策定の趣旨として、「自由で開かれた安定的な国際秩序は、冷戦終焉以降に世界で拡大したが、パワーバランスの歴史的変化と地政学的競争の激化に伴い、今、重大な挑戦に哂されている」と書いている。この「自由で開かれた安定的な国際秩序」とは何を意味するのか、はじめから言葉遊びである。これはソビエト連邦の崩壊で、アメリカ政府による世界支配の実現を指しているだけではないか。「自由」とはアメリカ政府による「かってきままな」世界支配のことではないか。「開かれた」も意味不明である。誰に開かれているのか。
「パワーバランスの歴史的変化」とは、GDP世界第2となる中国の経済力の発展のことではないか。中国だけでなく、韓国、台湾、インドネシアの経済発展も歓迎すべきことではないか。一国の政府による国際秩序(世界支配)が崩れたことは望ましいことではないか。
また、「地政学的競争」とは何を言っているのか。「地政学」とは日本が日米戦争で敗戦する前、他国を自国の利益に供するために論じる学問のことではないか。そんなこと、昔からあることで、「地政学的競争」を「協調」に変えることこそ、日本の安全保障の戦略ではないか。
政府自民党のやり口は、統一教会と同じく、人の不安を争って、軍事力増強の経済的負担(献金)を求めている。
私は、日本がキリがない軍拡競争に参加するより、排外的でない 経済の持続的発展に尽力し、幸せな社会を実現するのが、政府がなすべきことである、と考える。
円が基軸通貨にもならない日本が、アメリカに代わって世界の軍事的盟主になりえない。日本が中途半端な軍事力をもっても、かえってアメリカの軍事作戦の前衛となり、苦しくて損な思いをするだけである。「防衛」という言葉に騙されてはいけない。
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