家集に「地獄絵を見て」とあると。それを知ったうえでこの歌に接すると、その凄みがいっそう感じられる。この辺に、西行の詠草がならぶ。じっくり読み込まないと、新古今集のこういう一面に気がつかないまま、通過してしまいそう。本歌の「浮き沈み」とは、地獄世界への往来のこと。
ひらかなy143:いきるのも むずかしいのに じごくから
あくごうかさねる さとがえりとは
ひらかなs1749:うけがたき ひとのすがたに うかびいでて
こりずやたれも またしづむべき
【略注】○受けがたき人の姿に=いったん地獄へ落とされたのに、人間界へ
戻るなどとは、考えられないのに。
○西行=悠 006 (07月04日条)既出。