2007-0727-yhs135
なりはひは
なべて露天の
たくましさ 悠山人
○俳句写真、詠む。
○埃及の都市部では、露店商で生活用品を揃えるのが、ごく普通。たとえ女性の下着であろうと、当たり前の風景である、とガイド氏の言葉。第二次大戦直後の、日本の姿でもある。
□俳写135 なりはひは なべてろてんの たくましさ
【写真】カイロ郊外、アレクサンドリア市内で。
ET52
【埃土雑記】
6 結城 希(63歳 主婦)
エーゲ海、エーゲ海。何回も口に出してみた。「エーゲ海に捧ぐ」、よかったなあ。私も小説、書いてみたかった、「エーゲ海に恋す」なあんて題で・・・。それも還暦の声を聞いてからは、遠い木霊になってしまった。夫からはすっかり夢遊病者扱い、頼みの梓までもが「いつまで二日酔いの戯言、並べてるのよ」、などと口にする始末。小説はダメになったとしても、エーゲ海クラブの永久会員としては、片思いの恋を諦めるわけにはいかない。
午後の自由時間は何処へも出ないで、もっぱらホテルのプールで過ごした。日本では毎日五千は稼いでいたから、この長期旅行中はすっかり体が鈍っている。それにしても、ヘクターというホテル名も、エーゲ海の形をしたプールも、三連泊も、みんな私は気に入った。そのプールから椰子林を百メートルも歩くと、そこは海岸。実は午後イチで、梓と少し泳いでみた。遠浅で水温も低めだったので、軽く流すだけで上がった。この前エーゲで泳いだのはキオスだったから、もう十年ぶりくらいになるだろうか。それでも、「エーゲ海に泳ぐ」にカウントできるのを、僥倖とした。父がハデスの門をくぐって幾星霜、私は長く反発していたが、けっきょくは彼の呪縛から逃れられないばかりか、その希臘憧憬から付けられた私の名は、父以上に希臘教の信者である証になっている。
それはそうと、Xさんのこと、初めてこのメモに書く。私はどちらかと言えば社交的、誰とでもこだわりなく話をする方である。はっきりした証拠はないが、どうもXさんは、普通以上に私に関心があるらしい。プールのときも、海岸のときも、気がつくと視野に入っているのだ。何か不快な目にあうとか言動があるとか、そういうわけではない。Xさんて、五十台後半の男性で、単独参加。ときどきグループから離れて、遠くを見ている。そういう方なので、もしかしたら、私に何か訴えたいことがあるのかも知れない。すべては時が解決するだろう。
=編集部注=結城さんは、とても物静かな方。時間をみては、こまめにミニ・スケッチブックを出していました。
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