青山潤三の世界・あや子版

あや子が紹介する、青山潤三氏の世界です。ジオログ「青山潤三ネイチャークラブ」もよろしく

朝と夜の狭間で~My Sentimental journey 2012.1.10 中国Shenzhen

2012-01-10 15:39:58 | 朝と夜、その他



喉の痛みは少し引いたのですが、胸と頭(および鼻)が猛烈に痛いです。せめて薬を買いたいのですが、やはり援助要請をしている方々からは一向に返事がありません。このブログの常連読者の方で、まだ「青山潤三ネーチャークラブ」に入会して頂いていない方がいらっしゃいましたら、どうか入会して下さい。
本来ならば、カメラを修理から出して、台湾に渡り、そこから沖縄経由で東京に戻る予定だったわけですが、目的のヘツカリンドウの開花期はそろそろ終わります。(雑誌の企画ともども)来年回しにするしかありません。その資金(修理費5万円余+交通費など、、、アモイ~台北約8000円という情報あり)調達は無理でも、せめて医療費と、日本との連絡を取るための当面の滞在費用(一泊800円前後)だけでも捻出したいのです。どうか助けて下さい。
この後、「東洋のレタス“麦菜の謎”」のプレゼン再編版を一括掲載しますが、その前に、現時点での総まとめを紹介しておきます。本体(原則として以前にアップしたのと同じ内容、それを縮小再編し新たな情報を付け加えたものです)のアップは明日になります。




海の向こうの兄妹たち~中国動植物探索紀行



第1部第2章 東洋のレタス“麦菜”の謎/野菜になった雑草・アキノノゲシ(章前)


レタスと麦菜の関係を、もう一度はじめから考えてみましょう。

苦麦菜≒アキノノゲシ
油麦菜≒レタス

という図式は、(花や種子の形態からして)まず間違いないものと思われます。
(「油麦菜」の一部に「アキノノゲシ・苦麦菜」との遺伝的交流を持った集団が存在する可能性は残りますが)

ここでは、本来の主役である(アキノノゲシ由来であろう)苦麦菜は、とりあえず無視。
油麦菜とレタスの関係についてのみ考えます。

まず、仮設を立ててみました。

中国で言う「レタス(生菜)」は、もちろん、西側社会(日本を含む)でいう「レタスLettuce」であることは間違いないでしょう。
中国では、それとは別個に「油麦菜」という野菜が存在するわけです。
しかし、こちらも、西側社会における一般概念の「レタス」の中に含まれるのではないでしょうか?

中国:レタス/油麦菜
世界:レタス(油麦菜)
と言う図式です。

世界的視野で見れば、「油麦菜は“中国レタス”」となるわけです。
しかし、中国で言う「中国レタス」は、断じて“油麦菜”ではないように思われます。
結球性の(サラダとして生食する、、、、需要は僅か)レタスが「西洋レタス(西生菜)」、
非結球性のカキヂシャタイプの(茹でたり煮たりして食べる、、、、こちらの需要が大半)レタスが「中国レタス(唐生菜)」
なのです。油麦菜はそれらとは全く別の存在で、こと中国に於いては「レタス(生菜)」の範疇に含まれることはありません。

ここで、西側社会から見た「レタスLettuce」を、改めて整理しておきましょう。

野菜としての「Lettuce」の歴史は古く、起源前6世紀以前にさかのぼり、ユーラシア大陸に広く分布する(ただし正確な在来分布地は不明)アレチヂシャ(トゲヂシャ)Lactuca serriolaが育種改良された、またはアレチヂシャと、ほぼ同所的(地中海周縁部~中央アジア)に在来分布するLactuca salignaとの交配起源に因る、と考えられています。いずれにしろ人為的に作成した“有用植物”であり、したがって“Lactuca sativa”の学名は、栽培レタスに与えられたものゆえ、通常の野生生物の“種(species)”とは、異なった概念の上に成り立っているのです。

Lactuca sativa L. 
レタス/チシャ/莴苣Wo ju/萵苣Wo ju (Taiwan)/生菜Sheng cai/Garden lettuce/Lettuce

●①Angustana Group
ステムレタス/茎レタス/カキチシャ/大葉萵苣 Da ye wo ju/Jing wo ju/莖用萵苣Jing yong wo ju/Nen jing/Wo ju/莴笋Wo sun/Asparagus lettuce/Celtuce

▲①A Stem type
Celtuce/Chinese stem-lettuce(グループ全体に添附された茎レタス等の名称は本来このタイプに相当するものと思われます)
 
▲①B Leaf type
油麦菜You mai cai/Chinese leaf-lettuce
(一応、これが“油麦菜”が帰属するタクサ。茎を食べるタイプのものは▲①Aに入るのでしょう。
▲②Bは“「茎レタス」の「葉タイプ」”と言うことになります。呼称が中国名と英名しか無いということは、世界的にはまだ普及していないということなのだと思います)。
 
●②Capitata Group
タマチシャ/結球性レタス/结球莴苣Jie qiu wo ju/Juan xin wo ju/Cabbage lettuce/Head lettuce/Heading lettuce/Iceberg lettuce

▲②A Butterhead type
Bibb lettuce(USA)/Boston lettuce(USA)/Butter-head lettuce/Butter lettuce

▲②B Crisphead type
皱叶莴苣Zhou ye wo ju/Crisp lettuce/Crisphead lettuce/Iceberg lettus./チリメンヂシャ(ほかに“Red Iceberg”を含む)

●③Crispa Group
チリメンチシャ/カキチシャ/皱叶莴苣Zhou ye wo ju/San ye wo ju/Wu tou wo ju/Curled lettuce/Cut lettuce/Cutting lettuce/Leaf lettuce/Loose-leaved lettuce/Vietnamese lettuce(“チリメンヂシャ”や“カキチシャ”の名は、幾つものグルー
プに跨って冠せられていると解釈して良いのでしょうか?)

●④Acephala Group
チリメンヂシャ/サニーレタス/リーフレタス/葉レタス/皱叶莴苣Zhou ye wo ju/Batavian lettuce/Crinkled leaf lettuce/Loose-headed lettuce/Non-heading cut lettuce/Wrinkle-leaved lettuce

●⑤Secalina Group
Criolla lettuce/Italian lettuce/Italian leaf lettuce/Latin lettuce/South American lettuce/Tall leaf lettuce(ほかにLaitue italienne =“Lollo Rossa”を含む) 

●⑥Longifolia Group
コスレタス/ロメインレタス/タチチシャ/Zhi li wo ju/Cos lettuce/Romaine lettuce
(大多数の文献では、「油麦菜」はこの分類群に含められています。アメリカ産のレタスの1/3はこれ)

●⑦Quercifolia Group
Cultivated oakleaf lettuce/Cultivated oak-leaved lettuce(ほかにItalian oakleaf lettuce=“Radichetta”を含む)

このリスト(Multilingual Multiscript Plant Name Database Sorting Lactuca Name)に於ける「Group」は、通常「ssp.亜種」「var.変種」として扱われています。このリストでは、あえてその分類単位を用いず、「グループ」を用いたのは、意味があってのことと思います。これらの「種以下の分類群」は、必ずしも生物学的な意味合いでの系統関係を反映しているわけでは無いはずです。野生種の側からみた分類ではなく、人間にとっての(野菜としての)利用に即した分類であると思われるからです。

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現在の中国に於けるレタス類は次の4者に大別できるでしょう。

■西洋レタス
いわゆる私たち日本人の言うところのレタスで、典型的結球性。生食(サラダなど)。中国での消費量はごく僅か。「西生菜」「西洋レタス」。

■生菜(レタス)
7世紀前後にヨーロッパから中国や日本に導入されたのは、非結球性の品種カキチシャ(株の下方から葉を“掻きとりながら”食べるレタス、という意)。やがて欧米で改良された新品種群(なかんづく結球性の生食品種)に取って代わられ衰退、しかし近年になって改めて人気が高まりつつあり、(韓国のサンチュを始め)非生食野菜として鍋物などに普遍的に利用されている、、、。一般のレタスの解説書には、おおむねそのような記述がみられます。この考えに沿えば、いわゆる「カキヂシャ」(おそらくvar.crispa)が、(より古い時代にヨーロッパから導入された)アジア古来のレタスということになります。非結球性で、通常は生食せず、煮たり茹でたりして食べ、中国で、ただ「レタス(生菜)」と呼べばこれを指します。あえて固有の名を付ければ「中国レタス」「唐生菜」。7世紀に導入された「カキヂシャvar.crispa?」の末裔ということになるのですが、結球性で生食する「西洋レタス(西生菜)」に比べれば“舶来感”が少ないとは言えども、1500年の昔に導入され現在に至っているとは思えない“新しさ”を感じます。現在の「中国レタス」は、より最近に導入された(例えばvar.longifoliaやvar.acepalaなどに繋がる)品種群で、7世紀に導入されたという「カキチシャ」の真の末裔は、現在の「油麦菜」ではないのか?という思いが、ほんの少しながらあります。旧古来=油麦菜(古い概念でのカキヂシャ)、新古来=中国レタス(現在のカキヂシャ)、と言う訳です。あくまで、なんとなく、なのですが。

■油麦菜(ユーマイツァイ)
現在の中国に於いては、生菜とは明確に区別されています。7世紀に導入された「カキヂシャ」の末裔はこちらではないか、との思いもありますが、やはりそうではなくて、まったく別個に作出され、普及していった野菜である可能性の方が強いでしょう。でも、いつ頃、どのような由来で成り立った野菜なのかは、全く分からない。油麦菜の学名は、中国での文献の多くには、var. longifolia
とされています。地中海で作出され、アメリカで最も普及している、「コスレタス」「ロメインレタス」「立ちレタス」のことで、確かに概形は良く似ているようです。しかし、系統上は別個の存在であると考えるのが妥当なように思われます。より信頼できる上記報文リストによると、longifoliaとは別の一群、angustanaのグループ(var.angustanaに相当)に置かれています。「ステムレタス」「茎レタス」のことで、この変種の基本形は茎の著しい発達(その食用化)が特徴なのですが、それから導かれた葉の発達した「Leaf タイプ」が「油麦菜」というわけです。実際、茎の発達した個体と葉の発達した個体は、現地でセットになって見だされるので、両者が同じ由来であることが分かります。ただし、一般に(欧米や日本で)消費される「ステムレタス」と、中国に於ける茎食レタス「莴笋」が相同であるかどうかは、かなり疑問です。中国の「茎レタス(莴笋)」も「油麦菜」も、真のangsutanaとは別個の存在、と考えた方が妥当でしょう。7世紀に導入された「カキヂシャの末裔」でも、「コスレタス」でもなく、欧米で普及しているangustanaとも別物だとすれば、正体は何なのでしょうか? レタスには違いなくとも、欧米のレタスとは別個に改良され普及した東アジア独自の野菜である可能性は大いにあるでしょう。可能性はずっと低くても、レタスとは別に、アレチヂシャ やその近縁種(中国にも狭義のLactucca属の数種が在来分布します)から作出された野菜なのかも知れません。さらに、(属を細分した場合の)Pterocypsela属の種、アキノノゲシ/苦麦菜との遺伝子交流の可能性も、皆無とは言えないでしょう。

■苦麦菜(クーマイツァイ/省略)

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レタスと中国の組み合わせは、あまりしっくりと来ないのですが、統計では世界のレタスの生産量・消費量とも、断トツの1位が中国。2位のアメリカに比べ、生産量にして約5倍、消費量でも約3倍の差があります(日本の10倍以上)。中国での消費の大半は、 
生食する(主に結球性品種の)「西洋レタス」ではなく、茹でたり煮たりして食する、非結球性の「中国レタス」に因ります。それにしても、世界のレタス生産・消費量の半数近くを、サラダなどほとんど全く食べる習慣を持たない中国が占めているわけで、“レタス=サラダ”と認識している我々としては、意外に思えてしまいます。

生産・消費量の中に油麦菜も含まれているかどうかは不明です。レタス(「中国レタス」)を煮て食べるのは昔から成されていことでしょうが、大量の消費が始まったのは、比較的近年になってからではないでしょうか? それと共に、「油麦菜」も同様の利用方で急激な普及が成され出したのだと思われます。苦麦菜の食用化は、地域によってはより古くから存在していたのでしょうが、一般的な普及という形では、最も新しい参入者なのではないかと思われます。
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