鄒凱選手には、安定感があってメンタルが強いイメージが一般的にあると思う。
……あるんじゃないかな、多分。
北京オリンピック以降の鄒凱は、ここぞというときに素晴らしい演技を見せてチームを勢いづかせてきた。その最強メンタルが、オリンピックでの金メダル獲得総数5個という記録にもつながっている。
でもそれ以前、北京オリンピックに出る前の鄒凱は全然違っていた。
鄒凱が初めて世界選手権に出たのは2006年。まだ18歳だった。見た目小学生の18歳。この世選デビューは鄒凱にとってはほろ苦いものになった。
予選の出来は悪くなかった。問題は団体決勝。このときの演技は、メンタルの強さなんて微塵も感じさせないものだった。
床ではすっ転んだうえラインどころかマットオーバー。14.050点。
鉄棒でも落下。14.600点。
もう、なにしにきたの状態。他のメンバーが神すぎたから団体金メダルはとれたけど、鄒凱自体はなにも貢献していない。というよりは足を引っ張っただけ。メンタルが弱いと言われる日本の選手でも、ここまで酷いのはなかなかいないと思う。
当然のことながら本人はものすごく落ち込んでいて、そのショックは長い間消えなかったみたい。その翌年、2007年の世界選手権にも鄒凱は出場しているけど、そこでも目立った活躍はできず。
それが後々あんなアイアンハートになろうとは、当時は誰も、本人ですら思っていなかったかも。