グッドぐんま 2

ぐんま大好き! 群馬のちょっとイイものや身近な自然を再発見

外来生物研修会

2013年01月26日 22時48分27秒 | 「里やま」を考える
今日は、自然保護指導員を対象とした外来生物の研修会の講師を依頼されたので、自然史博物館で県内の外来魚の現状についてお話してきました。


魚類の他にも、植物、哺乳類、昆虫の外来種の状況について各分野の専門家から講義がありました。

魚では現在、コクチバスの生息域が拡大中でアユなどへの大きな被害が確実な状況ですが、植物や動物、昆虫でも、外来種は大きな問題となっています。
・植物では、毎年新たに5種程度の外来種の侵入が確認されている。
・アライグマは県下全域に勢力を拡大し、最近では農地だけでなく、家屋内での被害も発生。
・昨年秋にアメリカミンクらしき動物が安中市で撮影された。
・タイワンザルが旧松井田町に出没
・渡良瀬遊水地でヌートリアの情報が複数あり。
・アカボシゴマダラが、県内にも定着。ぐんま昆虫の森で幼虫が確認された。
・1月24日、玉村町でセアカゴケグモ発見。県内で2例目。

外来生物には罪はない、かれらも被害者だ・・・。そんなセリフで適切な対応を先送りしている場合ではありません。



☆        ☆        ☆        ☆
  

今日は寒かったですね。
今夜はすでに21時の時点で氷点下です。 う~、さぶっ



ヤリタナゴ退避作業

2011年03月06日 21時15分21秒 | 「里やま」を考える
午前中、藤岡市のヤリタナゴ生息地へ。


ヤリタナゴについては、このブログの中で何回も登場していますが、藤岡市のヤリタナゴは県内で唯一生き残っている在来タナゴ類個体群です。

今日はヤリタナゴが生息している用水路で、水を止めて堀浚いが行われるため、流れがなくなった水路に取り残された魚を救出します。

地域の人たちによる堀浚い

水路の健全な機能維持のために必要な作業です。

救出されたヤリタナゴ 


ヤリタナゴの他にも、ヨシノボリ、ジュズカケハゼ、カマツカ、ナマズ、アカザ、コイ、モツゴ、ニゴイ、タモロコ、タイリクバラタナゴなどが見られました。(ブルーギルもいた

ヨシノボリ(トウヨシノボリ) 


ニゴイ 


アカザ 


ヤリタナゴ救出作業の後は、底泥と一緒に浚われてしまったマツカサガイの救出作業。水路脇に上げられた泥を掻き分けてマツカサガイを探し、保護しました。


貴重な生き物であるヤリタナゴやマツカサガイが死んでしまうかもしれない用水路の堀浚いは、ヤリタナゴの保護のために中止した方が良いのでは? なんて思われる方がいるかもしれませんが、そうではありません。
ヤリタナゴの繁殖には、絶対に必要なマツカサガイの生息に適しているのは、流れが緩やかで川底が砂泥質の小川です。川底にヘドロが深く堆積してしまうとマツカサガイは生息できなくなってします。
定期的な堀浚いは、人から見れば農業用水路の維持作業ですが、ヤリタナゴやマツカサガイから見れば、川底にたまった老廃物を取り除くことにより、水路を若返らせて、快適な生息環境維持してくれるありがたい作業ということになります。

かつては、堀浚いによって死んでしまうヤリタナゴやマツカサガイも少なくなかったと想像できますが、それらの生息域は現在よりも格段に広く、また水路のネットワークが繋がり、きちんと機能していました。そのため、限られた場所で“被害”がでても、他の場所から移動してきた個体が再び居つくことができたので、地域個体群の生存に影響を与えることはなかったのでしょう。堀浚いによる少数個体の“犠牲”よりも生息環境維持のメリットの方がはるかに大きかったのは間違いありません。

作業の終了後には、いつも楽しみにしている野菜たっぷりけんちんうどん\(^o^)/


今回、サイドメニューにはジャガイモで作ったお餅

これも美味し~ (^^)

おかわり! 大盛りで




ここのヤリタナゴは、地域の人たちの保全活動等によって守られていますが、気になることも・・・。
一つは、この地区で土地改良事業が進行中であること。ただし、この事業については、行政も保全活動に関わる人たちの意見を取り入れる姿勢なので、それほど心配しなくても良いかも知れません。
二つ目は、マツカサガイのことです。最近、マツカサガイの死んだ貝殻が目立つようになってきたそうです。
今日もこんなにたくさんの貝殻が回収されました。


その中には小型の個体も


ここのヤリタナゴたちは、短期的には大きな危機はないように思いますが、長期的には問題は少なくありません・・・。




ヤリタナゴ保護ネット

ヤリタナゴと仲間たち 藤岡市

開田地区田んぼの生き物調査2010 (伊勢崎市境上武士・下武士)

2010年07月25日 21時28分42秒 | 「里やま」を考える
今日は伊勢崎市の開田地区で行われた「田んぼの生き物調査」にスタッフとして参加。


ここでは現在土地改良事業が進行中です。土地改良事業というと、これまでは米の生産効率を最優先させ、生き物側からの視点で見ると、田んぼや水路、ため池を“改悪”し、田園地帯の生物多様性を喪失させた“元凶”とイメージでしたが、開田地区では、用水路を昔ながらの土水路にするなど、生き物に配慮した“エコな”土地改良事業が行われています。

土水路

懐かしい感じがしますね。

水路と田んぼの間を魚たちが行き来しやすい状態になっています。


田んぼの中に入っていたタモロコの稚魚

用水がパイプラインで引かれ、排水路との落差が大きい“近代的な”水田では見られない光景です。

地元の子供たちが、土水路で生き物さがし


みんな、とっても楽しそうでした (^^)


ナマズ




ボク、ハイイロゲンゴロウです


コガムシ

ゲンゴロウの仲間に似ていますが、泳ぎは下手 (^^;)

コガムシの幼虫


ヌマガエル



元々、本州中部以西に生息していたカエルですが、1990年代に関東地方でも確認されました。非意図的に持ち込まれた可能性が高いとされています。

この地区で行われている環境配慮型の土地改良事業はすばらしいと思いますが、まだいくつかの問題点もあります。その一つが、稲作が行われていない時期には水路の水がなくなってしまうこと。年間を通じて水路に水が流され、冬期も湛水されている田んぼがあれば、もっともっと色々な生き物が見られるようになるはずです。

1999年に環境との調和を掲げた「食料・農業・農村基本法」が制定されたのを受け、2001年に「土地改良法」が改正され、土地改良事業の原則に「環境との調和への配慮」が加わりました。
過去に行われた“近代的な”土地改良事業によって失われた田園の豊かな自然を回復させるような土地改良事業が行われることを期待しています。

土地改良法第1条第2項
【土地改良事業の施行に当たっては、その事業は、環境との調和に配慮しつつ、国土資源の総合的な開発及び保全に資するとともに国民経済の発展に適合するものでなければならない。】


ところで、多様な生物が生息しているにもかかわらず、絶滅に瀕した種も多い地域を「生物多様性ホットスポット」と呼んでいます。
自然生態系の保全活動などを行っている国際的な自然保護団体「コンサベーション・インターナショナル(CI)」は、世界中で34カ所のホットスポットを選定していますが、日本列島もその中に含まれています。
そして、日本の中でも現在、特に絶滅危惧種が多いのは、いわゆる「里やま(里地・里山)」と呼ばれる身近な場所です。つまり、田園を中心とした「里やま」は、ホットスポット中のホットスポットとも言えるでしょう。
里やまの自然は、人間の農の営みの結果として創り出された半自然です。社会が変化した現代、昔のままの手法で「里やま」を維持することは大変難しい状況にあります。
これから、どうやってホットスポットである「里やま」を保全していくのか? 知恵の使いどころですね。


                                        

おまけ
今日の夕方、虹が見えました

前橋は今日も暑かったですが、最高気温は34.9℃。ギリギリで猛暑日にはならず。連続猛暑日は6日でストップ。

ヤリタナゴ 春の移動作業 (藤岡市)

2010年03月07日 18時48分10秒 | 「里やま」を考える
今日も朝から冷たい雨がシトシトと降り続く生憎の空模様・・・
午前中は、藤岡市のヤリタナゴ生息地に行ってきました。

群馬県内には、かつて、ミヤコタナゴをはじめとして5種類の在来タナゴが生息していましたが、、現在ではヤリタナゴ以外は絶滅し、唯一残っているヤリタナゴも、藤岡市の極々限られた場所に生息しているに過ぎません。
タイリクバラタナゴは外来種です)

今日はヤリタナゴ生息地の用水路で“堀浚い”(用水路の泥上げ)の作業が行われ、それに伴って、ヤリタナゴの棲む水路が一時的に断水してしまうため、断水区間のヤリタナゴを救出するのが目的です。
ところが、幸か不幸か、今日は雨降りだったので、側溝などから雨水が用水路に流れ込み、完全に断水することが無く、救出作戦も必要のない状況。
そこで、作戦を一部変更し、秋の移動作業同様に繁殖不適地に流下したヤリタナゴを捕獲して、上流の繁殖適地に戻すことにしました。

ヤリタナゴ


今日の作業のもう一つの目的は、堀浚いの泥と一緒に陸に上げられてしまったマツカサガイの救出。
マツカサガイはヤリタナゴの産卵母貝で、この貝がいないとヤリタナゴは産卵することができません。ヤリタナゴの保護には、マツカサガイの保護が絶対に必要です。

救出されたマツカサガイ


マツカサガイを泥と一緒に陸に上げてしまうような堀浚いは、マツカサガイに悪影響を与えているのでは? と思われるかも知れませんが、決してそんなことはありません。
マツカサガイの生息環境を守るために、堀浚いは必要な作業なんです。

マツカサガイの生息に適しているのは、砂泥底の小川。定期的に川底に溜まった泥を取り除かないと、マツカサガイは生息できません。
人家や田んぼから適度な栄養が流れ込み、定期的に草刈りや泥上げが行われる用水路はマツカサガイにとって、とても棲みやすい環境です。そして、マツカサガイに産卵するヤリタナゴにとっても最適な環境と言えます。
マツカサガイやヤリタナゴは伝統的な農業と深い関わりを持った里やまの生物なんですね。

マツカサガイの生息に適した砂泥底の用水路

定期的な堀浚いで維持されている環境です。

カワニナ

ホタルも出るのかな?

水路の土手のフキノトウ


昔は、ここで地元の人が収穫した野菜などを洗っていたそうです

上の写真で注目して頂きたいのが、水路と田んぼの高さです。水路と田んぼの高さに差がありません。このタイプの場合、用水路と田んぼの間を魚が行き来しやすく、田んぼが産卵場所や稚魚の生息場所として利用されます。現在行われる圃場整備では、田んぼと水路の落差が大きくなり、魚は田んぼを利用することができません。水域のネットワークが分断され、魚にとって貴重な繁殖場所が消失してしまいます。

藤岡市のこの場所でも、圃場整備事業が計画されています。
整備事業を進めるにあたっては、地元でヤリタナゴの保護活動を行っているヤリタナゴを守る会などとも話し合いが行われることでしょうが、一番のキーポイントとなるのは、地元の地権者、農業者の方々。地元の方々が水路の維持管理のし易さを多少犠牲にしても、ヤリタナゴやマツカサガイをはじめとした水路の生き物たちに配慮して頂けるかどうかだと思います。さらに、ヤリタナゴの生息地を守ることを、地元の方々だけに押しつけるのではなく、地元以外の人間も応分の負担をしなければならないと思うのです。

ブルーの目がキュートなジュズカケハゼ

手前はヨシノボリ

作業の後は、けんちんうどん。 よっ、待ってました! 
 
雨に打たれながらの作業で冷えた体に、うれしぃ~ (^^)
ヤリタナゴの救出、マツカサガイの救出、そして私の3番目の目的は、地元野菜たっぷりの美味しいけんちんうどん!
いえ、けんちんうどんだけが目的だった訳ではありません。ヤリタナゴのことだって心配してますって、ホントですよぉ・・・ (^^;)

ヤリタナゴと仲間たち 藤岡市


※ヤリタナゴやマツカサガイは藤岡市の天然記念物です!
ヤリタナゴやマツカサガイは、藤岡市の天然記念物に指定されています。今回の作業は市の許可を受け、市担当職員の立ち会いの下で行われました。無許可でこれらの生物を捕獲することはできません

里地里山の望ましいイメージ

2010年02月01日 21時33分22秒 | 「里やま」を考える
里地里山は人間の「農」の営みによって作られ維持されてきた空間。水田、畑、草地、畦、里山林、屋敷林、鎮守の森、竹林、集落、小川、ため池などで構成される複合的生態系です。
多くの動物は生活の中で複数の生態系を利用します。様々な生態系のモザイクである里地里山は生き物にとって暮らしやすい空間であり、日本の多様な生物相を支える重要な役割を果たしてきました。

しかし、生活や農業の“近代化”や、その後の農業の衰退によって、里地里山の姿は大きく変化しました。
さらに外来種の侵入なども重なり、現在では里地里山の多くの生き物たちが絶滅の危機に瀕しています。

平成19年11月に策定された『第三次生物多様性国家戦略』のなかでは、「里地里山・田園地域」の“望ましいイメージ”が、以下のように描かれています。長くなりますが、全文を転記します。

 農地を中心とした地域では、自然界の循環機能を活かし、生物多様性の保全をより重視した生産手法で農業が行われ、田んぼをはじめとする農地にさまざまな生きものが生き生きと暮らしている。農業の生産基盤を整備する際には、ため池やあぜが豊かな生物多様性が保たれるように管理され、田んぼと河川との生態的なつながりが確保されるなど、昔から農の営みとともに維持されてきた動植物が身近に生息.生育している。そのまわりでは、子どもたちが虫取りや花摘みをして遊び、健全な農地の生態系を活かして農家の人たちと地域の学校の生徒たちが一緒に生きものの調査を行い、地域の中の豊かな人のつながりが生まれている。耕作が放棄されていた農地は、一部が湿地やビオトープとなるとともに、多様な生きものをはぐくむ有機農業をはじめとする環境保全型農業が広がることによって国内の農業が活性化しており、農地として維持されている。また、生物多様性の保全の取組を進めた全国の先進的な地域では、コウノトリやトキが餌をついばみ、大空を優雅に飛ぶなど人々の生活圏の中が生きものにあふれている。



 二次林は、かつてのような利用形態により維持管理される範囲が限られている一方で、積極的に維持管理を図ることとされた地域では、明るく入りやすい森林として管理されることで子どもたちの冒険の場となり、在来種であるオオムラサキやカブトムシがごく普通に見られ、春の芽吹きと美しい紅葉が見られるなど季節の変化に富んだ風景をつくり出している。大きく広がっていた竹林は、一部は自然林や二次林として再生されるとともに、管理された竹林で家族がタケノコを掘る姿が見られる。また、里山の管理でうまれる木材はシイタケなどの山の恵みを生産するホダ木やペレットなどのバイオマス資源として地域内で利用されている。



 人工林は、間伐の遅れも解消し、立地特性に応じて、広葉樹林化、長伐期化などにより、生物多様性の保全の機能が高まるとともに、地域のニーズに応えられるように管理されている。成熟した国内の人工林から生産される材は間伐材や端材も含め、周辺地域で有効利用が進んでいる。

 このような形で維持管理が行われている二次林.人工林.農地などが一体となった里地里山では、多様な土地利用.資源利用を通じて、さまざまなタイプの生態系が混在する状態が復活している。かつて広く分布した二次草原は、草資源のバイオマス利用なども通じて、全国各地で維持管理が継続され、多くの野草が咲き、チョウ類が飛び交うなど希少となってしまっていた動植物種が増え、普通に見られるようになっている。それとともに、風景が美しく保たれ、それに惹かれて移り住んできた都市住民や外国からの観光客などが増え、エコツーリズムの浸透もあって生き生きとした地域づくりが実現している。また、そうした中で里地里山の価値が広く国民に認識され、公的又は民間の資金やボランティアにより維持管理の一部が支えられるようになっている。そして、自然資源の利活用を通じた豊かな生物多様性との共生の中で、地域ごとにつちかわれてきた生物多様性を利用する伝統的な知識、技術が子どもたちへと引き継がれ、地域の文化と結びついた固有の風土が尊重されている。

 また、広葉樹林化などによる多様な森林づくりが進み、生息環境が改善されることに加えて、農地や人里との境界部分では、見通しの良い緩衝帯の設置、人里に放置された農作物や果樹など特に冬場に鳥獣の餌となるものの除去、地域全体での追い払いなどの防除対策のほか、適切な狩猟も通じた個体数調整などにより、クマ、シカ、イノシシ、サルなどの中・大型哺乳類は人里に出没しにくくなっている。


まさに夢のような光景。
近い将来、ここに書かれているような光景が、日本のあちらこちらで普通に見られるようになるといいですね。


生物多様性国家戦略 環境省生物多様性センター