恩師のご著書「講演集」より
講演集、三
子供は親に目覚めを導く
今から十三年前、私の家内がくも膜下出血で突然亡くなったのです。
或る日、突然、子供二人を残して亡くなってしまいました。
その時、下の子は中学三年生、上の子は高校三年生でした。
まあ、子供たちにしてみたら、突然、母親を失ってしまいまして、
上の子はまあよかったのですが、
下の子は中学三年で一番心の揺れやすい年ごろであり、
不安定な日が続いたのです。
ちょうどあくる年は、上の子が大学入試、下の子は高校入学という時期でした。
下の子はさびしいものですから、つい友達の所に遊びに行き、
そしてだんだんと、夜、帰ってくるのが遅くなる、
そういうことが続いているうちに、夜、帰ってこなくなりました。
家内がいてくれましたら、「お前、留守番していてくれ、わしが探してくる」とか、
或いは「お前のしつけが悪いから、こんなことになったのだ」とか言って、
喧嘩もできるのですが、一人ぼっちになってしまいますと、喧嘩をする相手も
いないのです。
そうしているうちに、上の子は大学に合格して、寮に入ったのですね。
ですから、今度は下の子と二人です。
夜、十時になっても十二時になっても、帰ってきてくれないのです。
その時、十時になっても十一時になっても十二時になっても、
帰ってきてくれないのです。
その時の辛いことは、言葉では表しようがありません。
ほんとうに自分自身に与えられる苦しみであれば、自分が耐えたらいいのですけど、
子供を通して与えてもらう苦しみは、子供が立ち直ってくれなければ、
それはどうすることもできないのですね。
~ 感謝・合掌 ~