生涯いちエンジニアを目指して、ついに半老人になってしまいました。

その場考学研究所:ボーイング777のエンジンの国際開発のチーフエンジニアの眼をとおして技術のあり方の疑問を解きます

メタエンジニアの眼(170)ドラッカーの遺言(ドラッカーの教え09)

2020年02月25日 07時30分31秒 | メタエンジニアの眼
メタエンジニアの眼(170)       
TITLE: ドラッカーの遺言(ドラッカーの教え09)

このシリーズは企業の進化のプロセスを考える際に参考にした著作の紹介です。            
『』内は,著書からの引用部分です。                       

書籍名;『ドラッカーの遺言』 [2006] 
著者;P.F.ドラッカー
発行所;講談社  発行日;2006.1.19
初回作成日;R2.2.23 最終改定日;




 この書は、題名ばかりでなく、実際の遺言と云える。
 講談社の編集チームが2005年7月に、彼の自宅でインタビューをした同年11月に、ドラッカーは亡くなっている。この書は、最後の著書の位置づけなのだ。
 
ドラッカーの著書を10冊ほど読んで、彼の後半の立ち位置がはっきりと見えてきた。それは、めまぐるしく変わる現代社会において、特に様々な組織の経営や運営について、現代は3世紀ぶりの大変革が起こっている。それは、世界的に広がった西欧的な価値観が限界を迎えて、多くの民族の価値観が情報社会を変えてゆくという確信だ。その時に、緩衝材になるのが日本の文化なのだが、それがどうも昨今怪しくなりつつある。それは、日本社会が過去の成功例から、まだ目覚めていないことが主たる原因だ。だから、色々な助言をして、何とか情報化社会の変化に追いついて、東西文明の橋渡しになってほしい、というものだった。そのことは、巻末に書かれた、この取材班のチームの到来を待ちわびていた彼の態度から推察される。そして、勿論その発言内容からも、

・世界はどこへ向かっているか
 世界は、西洋の価値に支配されない世界へ向かっている、この半世紀は移行期になっている
 それは、18世紀から始まった西欧文明社会の根本的な変化
 半世紀後の世界が、どのようになるかは誰にも分からない
 しかし、異文化の架け橋が必要なことは確かで、それは英国と日本になる

・日本の今
 日本は、自分の歴史を正しく認識していないように見える
 最大の問題は、人材登用法の誤りが続いていること、

とくに官僚制度について、フランスの学歴偏重を取り入れたのが間違えだった
 ⇒ ここで思い出すのが、かつて10年ぶりにRR社の役員との会話だった。それは、RR社がアメリカのアリソン社を買収した直後だった。彼は、アメリカの会社を買収したのは、その人事登用制度を学んで、取り入れるためだったと明言し、その言葉通りにした。日本の大企業も見習ってほしいものだ。

 ⇒トランプ政権で、めまぐるしく変わる人事は、アメリカでは通常のこと。私が現役中に何度も訪問した
 米国の多数の企業でも、そのことは現実だった。
つまりは、社内ローテーションではなく、社外との活発なローテーション
 知識労働者のための昇進制度が必要(このことは、やっと昨今一部で始まったが、動機は不純なまま)
 航空宇宙産業メーカーの実例
   20年前の米社;製造部門6000人、事務所500人 ⇒今は、製造部門400人、事務所38000人

・日本が進むべき道
 『あなたたちの多くが「問題重視型」の思考形式に囚われていて、「機会重視型」の発想を持っていないことを危惧しています』(pp.110)
日本で起こっているのは、危機ではなく変化であることの認識を持つこと
個人の人格形成ができた若いころの行動様式を変えられない人が多すぎる

・終章
 かつてドラッカーの解説書を出版したJ.ビティーによる「人類への贈り物」には、ドラッカーの私生活上での逸話が20ページにわたって書かれている。この書のための追悼文とある。

なおこの書は、文庫本相当として次の廉価本が発行されている。
「ドラッカー最後の言葉」講談社BIZ[2010]