ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『ジウ/警視庁特殊犯捜査係』#01―2

2018-10-12 12:00:02 | 多部未華子









 
心優しい性格で涙もろく、すぐ人に感情移入してしまう割にウソ泣きが得意らしいw、カンヌこと門倉美咲(多部未華子)は、退勤後よく実家の「門倉豆腐店」に立ち寄り、両親と食卓を囲みます。

「毎日、交通違反捕まえてるんだろ? だったら、男の1人さっさと捕まえて来なよ」

そんなべらんめぇなお母ちゃん(松本じゅん)のツッコミを端で聞いて、ビールを喉に詰まらせるラブリーなお父ちゃん(不破万作)。

微笑ましい家族団欒の図ですが、美咲はどうやらSITに所属してることを隠してるみたいです。最前線で凶悪犯と接する危険なポジションゆえ、両親に心配をかけたくないのでしょう。

「辞めたくなったら、いつでも帰って来ていいんだよ?」

わざわざ外まで娘を見送りに出てきて、そんな言葉までかけてくれるお母ちゃん。そこまで愛されたら、美咲みたいにピュアな娘も育つってもんかも知れません。

それにしても、ルックス的には地球人と火星人ぐらい(優劣の問題ではなく)かけ離れた親子ですw 「お父ちゃん」「お母ちゃん」って呼び方も、多部ちゃんにはちょっと似合わないですね。

一方、武闘派のロンリーウルフ=伊崎基子(黒木メイサ)のアフター5は、もっぱらジムで独り、黙々と筋肉トレーニング。

倉本聰さんのドラマで初めて黒木メイサさんをお見かけした時は、これまた清楚でミステリアスな美少女が現れたなぁって、ひと目でブレイクを確信したもんだけど、まさかこういう方向(マッチョなイメージ)にシフトして行くとは思ってなかったです。

だけどご本人はサバイバルゲームが趣味だったりするそうで、元からそういう素質をお持ちだったんですね。だから今回の役には(連ドラ初主演って事もあるし)相当気合いが入ってたんじゃないでしょうか?

この場面で、十字架のペンダントをした男が、物陰からこっそり基子を見てたりします。顔を見せないもったいぶった撮り方をされてる点から見て、ただの変態じゃなさそうですw

美咲も基子も独身なので、生活拠点は警察の女子寮です。オフ日も独り、寮の食堂で遅い朝食を採る基子ですが、まかないのオバチャン(岸本加世子)にだけは心を開いてる様子で、いつもより少し饒舌です。

「基ちゃん、美咲ちゃんのこと嫌いだろ?」

「見てりゃ分かんだろ」

「そうだよねぇ~。美咲ちゃん、女らしくて可愛いもんね」

「どーせ私はガッシリしたブスですよ」

「いや、アンタは美人よ。ただね、絶望的に眼つきが悪いってだけで」

「デカの眼なんて、こんなもんなの」

「そうかしらねぇ~、美咲ちゃんなんか綺麗な眼してるよ? キラキラ~ってしてて、いつもピカーって光ってて」

ドラマのワンシーンとしては、実につまんない会話ですねw 演じてるのが岸本さんだから観てられるようなもんで、脚本力(原作も含めて)の弱さを感じずにはいられません。

こうして冷静に細かくレビューしてみて、このドラマがタベリストに評価されなかった理由が、あらためてよく分かった気がします。

レビューを書く時、DVDを観ながらポイントになる台詞をメモするんだけど、これぞ!っていう(思わずメモしたくなる)ステキな台詞が、この『ジウ』にはほとんど見当たりません。

各キャラクターも類型的で薄っぺらいし、特に基子のロンリーウルフぶりが、単に拗ねた中学生みたいにしか見えない(ゆえに格好良く感じられない)のが痛いところです。ここんとこは女優・黒木メイサの力不足も否めません。(例の金髪少年など論外ですが)

だけど、そんな内容でも私の興味を最後まで引っ張ってくれたのは、多部未華子の存在は言うまでもなく、メイサの頑張りに拠る部分もかなり大きいんですよね。次の場面で、その一端が見られます。

黒革のライダースーツを身にまとい、歌舞伎町のクラブにバイクを乗りつける、クール&セクシーな基子。2014年に公開された映画『ルパン三世』におけるメイサ=峰不二子を先取りしたようなビジュアルです。

「探し物があって。此処に来れば手に入るって聞いたから… サブマシンガン、MP5。あるんだろ? 奥に」

暴力団・萩尾会と繋がってるらしいバーテンダー(やべきょうすけ)に、基子は直球をぶつけます。たちまち4人の屈強な男どもが現れ、取り囲まれた基子は、道場のシーンでも見せた見事なマーシャルアーツで、あっという間に彼ら全員を半殺しにしちゃうのでした。

大半のアクションを吹替え無しでこなしたというメイサの動きが、現実的にどれ位のレベルなのか、素人の私にはよく判りません。

だけど、彼女は本当に強そうに見えます。そう見せる為のスキルを、ちゃんと身につけてるんですよね。そこんとこが、ジウ=L君との決定的な違いです。

シリーズの後半、いよいよ物語も佳境に入ろうという場面で初披露されるL君のアクションは、全くヘナチョコとしか言いようの無いヘナチョコなもんでした。

L君はただ、殺陣師に振り付けられた動きをこなすのに精一杯で、強そうに見せる「演技」が全く出来てないワケです。

腐ってもダンサーですから、動きそのものはメイサよりシャープだったりするのかも知れません。だけど、顔つきは相変わらず能天気なナンパ少年だし、とにかく「殺気」ってヤツが微塵も伝わって来ない。

それに対してメイサは、顔つきはもちろん全身から殺気が漲ってる。そう見せる演技をちゃんと心得てるワケです。やられ役の人達がたぶん殺陣のプロである事も大きいけど、それを差し引いてもL君とは大違い。

私は、あのL君のへなちょこアクションを見た瞬間に、このドラマの失敗を確信しましたw

ジウというキャラクターに強さと恐ろしさが感じられなければ、スリルもサスペンスもあったもんじゃないですから。せっかくのメイサのアクションも活きて来ません。

アクションも演技の1つなんです。敬愛するハリソン・フォード氏が激しいアクションを演じるにあたって「僕がやってるのはスタントじゃなくて、肉体演技なんだよ」ってよく言われてたのは、そういう事なんですね。

だけど、第1話の時点じゃL君は顔見せ程度なんで(それでも充分に不安を煽られたけどw)、この場面におけるメイサのアクションを見て、私は「このドラマ、イケるかも」って、勘違いしちゃいましたw

「つまんねーな、簡単すぎて。ストレス溜まったらまた遊びに来るよ」

やっぱり、男を痛めつけるのが基子の趣味なんですねw 恐らくこのクラブからジウの組織に銃器が流れてるんでしょうけど、それにしたってストーリー上、彼らを痛めつける事に全く意味がありませんw

そんな風にして休日を暴力で楽しむ基子を、またしても十字架ペンダントの男がこっそり覗いてます。

やがて明かされる彼の正体は、警視庁特殊急襲部隊=SATに所属する、雨宮崇史(城田 優)。もったいぶって顔を隠すほど怪しい人物じゃないんだけど、城田優くんがそういう演出をしたくなる顔つきなんですよねw(L君を食っちゃってます)

後に「初の女性隊員」として基子もSATに異動、雨宮とは同僚になって、軽いノリでチョメチョメする事にもなります。城田くんの飄々とした持ち味が、メイサの発する尖った空気をうまく中和してくれてたように思います。

さて、基子=メイサは道場&クラブで2度も見事なアクションを披露し、第1話における「つかみ」をモノにしました。となると、もう1人の主役である美咲=多部ちゃんにも活躍してもらわねばなりません。

次にやって来る見せ場によって、多部ちゃんはこの第1話を見事、自分のものにしちゃいます。アクションシーンを支えるのはメイサだけど、ドラマを引っ張るのは多部ちゃんなんですよね。

そう考えればこのドラマ、適材適所の見事なキャスティングで、なのにジウ役がなんでアイツやねん!?ってw、返す返すも残念でなりません。

まぁ、それは言っても仕方のない事です。今はとにかく、我らが多部ちゃんの真骨頂を存分に味わうとしましょう。

(つづく)
 
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『ジウ/警視庁特殊犯捜査係』#01―1

2018-10-12 00:00:23 | 多部未華子









 
堀内敬子さん扮する主婦が黒いバッグを抱え、顔面蒼白になりながら歩道橋を上がっていく場面から本作はスタートします。

その様子を刑事=柿の木坂警察署の殺人班第三係主任・東警部補(北村有起哉)が物陰から見張っており、どうやら誘拐犯の指示による身代金の受け渡しであろう事が伺えます。

しかし、犯人は東主任の死角を突いて、まんまと身代金を奪い去り、代わりに切断された子供の指を現場に残すという、ショッキングな幕開け。

この時に東主任は、現場近くに佇む金髪の少年を目撃します。その少年こそが、今回の誘拐事件の主犯であり、冷酷無比な謎の殺し屋=「ジウ」なのでした。

不幸な境遇を背負い、世の中に絶望し、人間らしい感情も失った、その冷たい眼の奥にくすぶる、青白い炎……と、いうような感じを、ジウはここで視聴者に見せつけないといけないワケですが……

とても残念なことに、この非常に重要なタイトルロールを演じてる韓国のアイドルダンサー「L」くんに、そういうヤバそうなオーラが全く感じられないんですよねw

どっからどう見ても育ちが良さそうで、そのキラキラした瞳には生きる希望が満ち溢れてるL君は、どんだけライティングや編集で不気味さを演出したところで、その辺で遊んでる陽気なナンパ少年にしか見えず、これっぽっちも怖くない。

誉田哲也さんの警察小説を映像化した『ジウ/警視庁特殊犯捜査係』は、テレビ朝日系列の金曜日深夜「金曜ナイトドラマ」枠で2011年の夏シーズンに放映されました。

平均視聴率は8.66%との事で、深夜枠である事を差し引いてもイマイチな結果と言わざるを得ません。世間一般での評価はどうだったかよく知りませんが、少なくとも多部未華子ファンの間じゃ評判悪かったですよねw

私自身、『デカワンコ』に続く多部ちゃんの主演ドラマがまたしても刑事物!ってことで狂喜乱舞し、ワクワクしながら放映を待ったにも関わらず、せっかく買ったDVDは今回レビューするまで一度も観てませんでしたw

良い部分も沢山あるけど、それ以上に悪い部分が満載なドラマなんですよねw 中でも私は、このジウ=L君のキャスティングは致命傷だったと思ってます。


☆第1話『交渉する女vs.闘う女』

(2011.7.29.OA/脚本=菱田信也/演出=片山修)

警視庁第一特殊犯捜査第二係=SITの交渉班に所属する門倉美咲(多部未華子)は、参考書と睨めっこして昇進試験の勉強中。

そんな彼女をからかう同僚たちの中には、伝説の朝ドラ『つばさ』で多部ちゃんの相手役を務めた小柳友くんも混じってます。彼はどういうワケか、多部未華子ファンの間では「乳首」と呼ばれてるそうです。

一方、同じSITでも制圧班に所属する伊崎基子(黒木メイサ)は、道場でチーム仲間(全員男性)と格闘技(マーシャルアーツ?)の練習中。

と言っても、基子は圧倒的な強さで男どもをなぎ倒し、容赦なく締め技を使って先輩刑事を失神させるという凶暴さで、練習というより逆リンチ状態。男を痛めつけてストレス発散してるようにも見えます。

「卑怯な手ぇ使いやがって!」と怒り心頭な先輩たちに、謝るどころか「凶悪犯相手にそんな文句が通じるのかよ?」と涼しい顔で言い放つ基子は、周りと協調する気が全く無さそうなロンリーウルフ。

他人を信じてないのか、あるいは面倒臭いだけなのか、刑事部屋でも基子は誰ともコミュニケーションしようとしません。

そんな基子とは対照的に愛されキャラの美咲は、仲間達から「カンヌ」と呼ばれてます。交渉術の合同訓練においてギャラリー達をもらい泣きさせたという、見事な「泣きの演技」がその由来なのですが……

「いやぁ~、あれはまさにカンヌ・グランプリ級の演技だったなぁ~」

麻井係長(伊武雅刀)まで手放しで誉め称える、美咲の特技「泣きの演技」だけど、なんと我々視聴者には(最終回まで)1度たりとも披露されないまま、このドラマは終わっちゃいますw

そもそも、美咲は「心優しい性格で涙もろく、すぐ人に感情移入してしまう」っていう人物設定なのに、特技が嘘泣きって……w

設定が矛盾してる上、一度もストーリーに活かされないというw しかも美咲は第3話から別の部署に異動しますから、それ以降は誰も彼女を「カンヌ」って呼ばないんですよね!w これはもう、TVドラマ史上でも稀に見る「設定倒れ」かと思います。ある意味、必見ですw

それはともかく、こうして皆にチヤホヤされてる美咲を、ロンリーウルフの基子が快く思うワケがありません。わざとコップを床に落として話の腰を折るという、中学生みたいな嫌がらせをしても可愛くありません。

そんな基子に笑顔で話しかけ、なんとかチームに馴染ませようとする美咲もまた、中学生(いや、小学生?)並みの純真さです。

退勤時も独りで帰ろうとする基子を、美咲は追いかけ笑顔で話し掛けます。美咲の服装は白に近いグレーのリクルートスーツで、基子は黒革のライダースーツ。何から何まで対照的です。

美咲は、自分も基子みたいに強くなってチームの役に立ちたいと、あくまで相手を立てる交渉術で(?)基子にアタックします。

「交渉班に伊崎さんみたいな人がいると、突入班も万全よね。私ね、いつも見習わなきゃって思ってるの」

「あのさぁ、どうせアンタは危ないヤマ踏まないんだから、いつでも何処でも泣けるようにしときゃいいんじゃないの? 私には耳障りだけど。アンタの声」

「え?」

多部ちゃんの「え?」っていう一言には、実に様々なニュアンスが込められてて、私はいつも感心させられます。ここでは「どういう意味?」っていう疑問と「なんでそんなこと言うの?」っていう落胆した気持ちが「え」の1文字だけで見事に伝わって来ます。

それにしてもまぁ、とりつく島なし。なんで基子は、こんな性格になっちゃったんでしょう? このドラマ久しぶりに観るもんで、いきさつ憶えてませんw

ただ、彼女の生き方も美咲との関係(距離感)も、最終回まで全く変わんなかった事だけハッキリ憶えてます。これには意表を突かれました。そんなドラマ、なかなか無いですよ!w

普通、2人の生き方や関係性が変わって行く様を見せて、感動を誘うのがドラマってもんですから。それを大胆にも完全スルーして、代わりに描かれたのがL君のへなちょこアクションと、ショッカーみたいな「新世界秩序」w ある意味すごい!

そんな画期的で素晴らしいドラマ『ジウ』のレビューを、いったい誰が望んでいるのやら? それでも、私はやります。とりあえず第1話だけw

(つづく)
 
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