ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『捨てがたき人々』

2018-10-04 18:38:36 | 日本映画







 
ジョージ秋山さんの同名漫画を実写化した、榊 英雄 監督による2014年公開の日本映画。

「もう生きることに飽きた」と言う無職のロクデナシ独身男(大森南朋)が故郷へ帰り、笑顔で接してくれた弁当屋さんの店員(三輪ひとみ)と無理やりセックスしw、なし崩し的に同棲し結婚するも、ロクデナシはやっぱりロクデナシだったというお話w

とにかく不特定多数の観客(主に女性)を気持ち良くさせ、大ヒットに繋げることしか考えてない(ようにしか見えない)多くのメジャー日本映画とは正反対の作品です。

細かくは書きませんが、とにかくもう、どうしょうもない輩なんですね、大森さんがw 怠惰で、卑劣で、女性を見ればセックスのことしか考えない、男の中の男ですw

だけど、憎めない。これが人間だよなあって思えるから。そこにちゃんと魂が感じられるから。女性客を喜ばせる為のストーリーに合わせて造られた、都合の良いロボットみたいなキャラクターとは、これまた正反対なワケです。

あれで自分が正しいと信じて疑わないような主人公だったら嫌悪感しか抱けないけど、彼は決してそうじゃないんですよね。

自分が最低なダメ人間だと自覚し、だけど自分はそんな風にしか生きられないことも悟ってしまい、死ぬことも出来ず、出来るだけ他人と関わらないようにして、ただ生きてるだけの日々。

私自身にも、それに近いものがあります。彼はたぶん、周囲とうまく調和出来ないことにずっと苦しみ、そんな自分を変えようと努力したこともあるんだけど、それこそが死ぬよりもしんどい事だと気づき、諦めてしまったんだろうと思います。生きることに「飽きた」って言うのはせめてもの強がりで、要は「疲れた」んでしょう。

だからもう羞恥心も無く、ミニスカートの女性を見れば平気で身を屈めて覗き込んじゃう。私がブログにエッチな画像を載っける行為にも通じるものを感じます。他人にどう思われようが知ったこっちゃない。

それは自分に対する諦めであって、開き直りとはちょっと違う。その証拠に、ヒロインから妊娠を告げられた主人公は激怒するんですよね。「絶対おろせ!」って。「俺から産まれた子供が幸せになれるワケがない!」って。だったら避妊すりゃ良かったのにw

でも結局ヒロインはその子を産み、主人公もなんとか良い父親になろうと頑張るんだけど、やがて成長した息子に「どうして僕を生んだの?」「生まれたくなかったよ」って言われちゃう。やっぱり、そうなっちゃう。

ラストシーンで、主人公は海に向かって叫びます。「なんで、俺は俺なんですかっ!?」「俺は、なんで俺なんでしょうかっ!?」……その気持ちが、私には痛いほどよく解ります。

こんな人生でも、それでも生きてゆくしかない人間の業。この気持ち、人生うまくやれてる人には解らないだろうと思います。

いや、この気持ちが全く理解出来ないほど、人生すべて順調で明るく生きてる人なんか、多分この世には存在しないでしょう。

この主人公も私も、諦めることで何とか生きていられるんだと思います。自ら命を絶ってしまう人は、多分そんな自分が許せないんでしょう。

向上心を持て、目標を持て、諦めなければきっと夢は叶うって、成功した連中は無責任に言うけれど、そういった言葉がどれだけの人々を追い詰め、逆に生きる気力を奪ってるか、彼らには全く想像出来ないんでしょうか?

スター俳優だけじゃ映画は成立しません。脇役やエキストラがいればこそストーリーが成り立ち、彼らのお陰でスターが輝くワケです。世の中ってそんなもんですよね。

もちろん、脇役やエキストラたちもスターを目指してるワケだけど、大多数の人はどこかで諦めなきゃいけません。それが悪いことなんですか?って話です。

この映画は、私も含めそんな(本当の意味での)不特定多数の人たちに向けて創られた、応援メッセージなのかも知れません。

人は何の為に生まれ、何の為に生きていくのか? 究極、それはただ「生きる為」なんじゃないでしょうか。だって生きものなんだから。

「ただ生きてるだけ」で何が悪いと言うのか? いいじゃないですか。ただ生きてるだけで充分じゃないですか。ふたつでじゅうぶんですよ!

そう思えた方が、よっぽど「前向き」だと私は思うんだけど、如何なもんでしょう。

この作品は、多分そういうことを言いたかったんじゃないでしょうか。だから観て陰鬱な気分にはならない。成功ばかりがハッピーエンドじゃないんです。

画像はヒロインの三輪ひとみさん。その叔母を演じる美保 純さんは脱がないけど、三輪さんと内田 慈さんが素晴らしいヌード&濡れ場を披露してくれてます。

ほか、田口トモロヲさんや滝藤賢一さんも登場。主人公のみならず、登場人物全員がロクデナシのw、捨てがたき人々です。
 
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『湯を沸かすほどの熱い愛』

2018-10-04 12:00:12 | 日本映画









 
2016年に公開された、中野量太 監督・脚本による日本映画。

1年前に夫の一浩(オダギリジョー)が失踪し、パートの仕事でなんとか娘の安澄(杉咲 花)を育ててる双葉(宮沢りえ)が、体調不良で倒れて精密検査を受けてみたら、末期ガンで余命数ヶ月だったから驚いた!

探偵(駿河太郎)を雇い、若い女と同棲してた一浩を見つけ出した双葉は、その隠し子(伊東 蒼)と一緒に彼を連れ戻し、死ぬまでにやるべき4つのことを果たしていきます。

1つは、一浩の失踪で閉めていた銭湯の営業を再開すること、もう1つは学校のイジメっ子たちに安澄を立ち向かわせること、そして残りの2つは……そこはかなり計算されたサプライズになってますので、ここでは伏せておきます。

余命数ヶ月をどう生きるか?っていうシンプルな話に見えて、この映画はかなり捻ってあります。前半に出てくる蟹や手話、新品のブラジャーといった何気ないアイテムが、後半への重要な伏線になってて、その意味が判るたびに泣かされます。

あざといと言えばあざといんだけど、それら全てに共通して込められてるのが双葉の「無償の愛」なんですよね。人を愛するという事がどういう事なのか、言葉じゃなく行動で示す双葉に、誰もが魅了され、死んで欲しくないと思わずにいられません。

涙が枯れるほど泣かされるんだけど、これみよがしな「泣かせ」演出が無いからこそ素直に泣ける。むしろ、普通ならそこをタップリ見せて泣かせるだろうっていうシーンを、ことごとく省略してるんですよね。

冒頭、銭湯の休業を知らせる貼り紙が映されるんだけど、双葉が書いたに違いない「湯気のように店主が蒸発したので休業します」っていう文面に、この映画が単なる「お涙頂戴」じゃないことが象徴されてて、私は心を鷲掴みにされました。

この上なく深刻な状況下でもユーモアを忘れない、双葉の明るさと強さ。それがこの映画そのものの魅力になってると思います。

「湯を沸かすほどの熱い愛」っていうタイトルの意味が示されるラストシーンは衝撃的で、巷では賛否両論(あり得ない!って言う人が多い)らしいけど、私は自然に受け止めました。この人達ならそれくらいやるだろうって思えるように、キャラクターがちゃんと描かれてますからね。

この映画はオススメです。ただの泣かせ映画じゃありません。むしろ、深刻だからこそ笑えるコメディで、だからこそ泣けちゃうという珍しい作品です。

たぶん、監督さんも日曜劇場みたいな「涙の押し売り」が大嫌いな方で、そうじゃない描き方を考えに考え抜いた渾身の一作なのかも知れません。

かく言う私も、タベリストのyamarineさんがブログで薦めておられなきゃ観なかった種類の映画で、師匠に感謝ですm(__)m

宮沢りえさんを筆頭にキャストみんなが素晴らしいけど、特に杉咲花ちゃんが良かった。イジメに立ち向かうために教室で見せる下着姿は、痛々しくも母の愛を感じさせる温かい場面で、いやらしい眼で見てたのは私だけですw

(ただし、あれでイジメっ子たちが本当に改心するものかどうかは疑問。基本、この映画は性善説を信じるスタンスで、そこに甘さを感じなくはありません)
 
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『サバイバルファミリー』

2018-10-04 06:55:24 | 日本映画







 
2017年公開の、矢口史靖 監督・脚本による日本映画。WOWOWで観ましたが、これは劇場で観るべきでした。矢口作品にハズレ無しだけど、これは特に面白かったです。

ある日突然、電気が完全にストップしてしまったらどうなるか? 原因不明の電子パルスにより携帯電話はもちろん、水道もガスも自動車も使えなくなった世界で、人々は一体どうやって生き延びていくのか?

それを、文明に依存しきったごく普通の家族1組に焦点を絞って描く、パニック&サバイバル&ロードムービー。とてもシリアスでハードな話だけど、そこはさすがの矢口監督、絶妙なユーモアを交えたエンターテイメント作品に仕上げておられます。

侵略宇宙人やゴジラが現れなくても、ただ電気が使えないだけでこれほど極限まで追い詰められるのか!って、あらためて文明社会の無力を思い知らされます。

東京に住む小日向文世、深津絵里、葵わかな、泉澤祐希の4人家族は、やがて水も食糧も尽きて略奪が蔓延することを恐れ、鹿児島で農業を営む深津さんの実家に逃げ込むべく、自転車でひたすら西へ向かいます。

歩くことすらままならない両親と暮らす私の場合、もうその時点で不可能です。謎の大停電は2年以上も続きますから、サバイバル出来ないファミリーもかなりの数いる筈だけど、映画では小日向ファミリーのみに焦点を絞ってますから、深刻な死は描かれません。それで良いのだと私は思います。

いや、途中、小日向さんが川の濁流に呑まれて行方不明になるんだけど、その絶望の中で長男の祐希くんが見つけたアレに、私は爆笑しちゃいましたw 悲しいのに笑っちゃう、この緊張と緩和の妙たるや! それこそが矢口映画の真骨頂で、私は心底からリスペクトしてやみません。

なんか、屁理屈こねて難癖をつけるレビュアーも沢山いるみたいだけど、そんな観方しか出来ないなら娯楽映画なんかいっさい観なきゃええやん!って思います。こんな面白い映画を素直に楽しめないのは勿体ないです。

大停電のハッキリした原因が判らないまま終わることに納得できないのかも知れないけど、世の中は理不尽なことだらけです。理由をつけちゃう方がかえって安易かも知れず、判らないからこそこの映画は面白いんだと私は思います。

パニック&サバイバル&ロードムービーとして楽しみつつ、崩壊寸前だった家族の絆が再生していくホームドラマとしても上質で、私は何の文句もありません。ケチをつけるなら、これ以上のものを創るにはどうすればいいのか、せめて意見ぐらいは言いなさいよって話です。

そんなワケで、細かいことは書きません。とにかく観て下さい。そして素直に楽しんで下さい。オススメです。
 
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『アイ アム ア ヒーロー』

2018-10-04 00:00:20 | 日本映画






 
佐藤信介監督による2016年公開の日本映画です。花沢健吾さんの人気コミックを実写化した、日本では珍しい本格ゾンビ・サバイバルアクション。

大泉 洋さんが主演ということでパロディー的な内容を想像しがちだけど、実際はすこぶる直球勝負のパニック&アクション映画。

ドラマ『重版出来!』のムロツヨシさんみたいに冴えない万年アシスタントの漫画家が、極限状態の中で奮い立ち、本物のヒーローになっていく姿が描かれます。この種の映画じゃ脇役でよく見る「へたれ」キャラだけど、それを主役に据え、彼の成長ストーリーに焦点を絞ったドラマは日本映画ならではと言えましょう。

ゆえに、ゾンビ映画マニアじゃない人でも充分に楽しめる作品かと思います。ただし、ゾンビ映画ならではの残虐描写は手抜かり無しなので、血みどろが苦手な方にはオススメ出来ません。

ゾンビ物か否かを問わずパニック映画は大好きで、血みどろは好まないけど見られない程じゃない私としては、かなり満足のいく仕上がりで、面白かったです。

その道のマニアから見れば「まだまだ」なのかも知れないけど、日本製のパニックホラー&サバイバルアクション映画としては、現時点だと最高点をつけても良いんじゃないでしょうか?

パロディーに逃げること無く、かと言って陰鬱になり過ぎず、極限状態だからこそ笑っちゃうユーモアのサジ加減も抜群だと私は感じました。

大泉洋さんは、ちょうど公開年に放映されてた大河ドラマ『真田丸』で演じたのとよく似た生真面目キャラで、こういう役を演じても巧いしハマるんですよね。

で、同じく『真田丸』に出てた長澤まさみちゃんは、斧でゾンビを殺しまくる(既に死んでるけどw)アクティブなキャラで、とても格好良いです。

出色なのが有村架純ちゃん。登場時はごく普通の女子高生なんだけど、歯の無い赤ちゃんゾンビに噛まれたせいで、ちょっとだけゾンビの血が混ざってるという設定。

ゆえにメチャクチャ強いんだけど、ほとんどの時間は赤ちゃんみたいに眠ってるというw、頼りになるのかならないのか、生きてるのか死んでるのか判んない特異な存在感で、誰よりも印象に残ります。

掲載したスチール写真じゃ綺麗な顔してるけど、本編では一部ゾンビのメイク(CG加工?)が施され、ちょっと衝撃的なビジュアル。ファンは必見かと思います。

日本のメジャーで、こういう作品が創られたのは快挙と言えるんじゃないでしょうか? 原作のネームバリューが無ければたぶん無理で、コミックの映画化も一概に「安易」と片付けたもんじゃありません。
 
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