秋山貴彦 監督による2005年公開の日本映画です。『夜のピクニック』より1年前、ポスプロの期間を考えると撮影はもっと前で、多部ちゃんは15歳位でしょうか?
とにかく画像をご覧下さい。工藤ジュン(多部未華子)……名前も格好良いけど、男の私でも惚れ惚れしちゃうような美少年です。クラスにこんなヤツがいたら人生狂っちゃいますよホントにw
ところがどっこい、海に落ちてずぶ濡れになり、タンクトップ1枚の姿になったジュンの、胸元をこっそり覗き見したら驚いた! なんと、やっぱり男の子にしか見えないのでした!(うそw)
この作品もまた、衝撃でした。ゴスロリ衣裳の女刑事、平凡で引っ込み思案な女子高生、そして小学生の眼光鋭い美少年。あまりにもかけ離れた3者のキャラを、同じ女優が演じて全く違和感を感じさせないという奇跡!
どんな順番で観ても私は多部ちゃん地獄にハマったでしょうけど、このワンコ→貴子→ジュンっていう順番は、たぶん最短コースですよねw 早くもトドメを刺された瞬間でした。
近未来(?)、不登校児を授業に参加させる苦肉の策として、遠隔操作出来るロボットを身代わりに登校させる案が認可され、ロボット開発者=岩本博士(中村雅俊)の息子=サトル(本郷奏多)がその第1号となります。
で、サトルが自宅から遠隔操作するロボット「ヒノキオ」にイタズラを仕掛け、真っ先に友達になるのがクラスのガキ大将=工藤ジュン。
ところがヒノキオの眼を通してジュンの胸元を見たサトルが驚いた! 我々観客にはちょっと判りづらいんだけどw、ジュンは実は女の子だったのです。
幼い頃に叔父から性的虐待を受けて、ジュンは女性であることが耐えられなくなった。そしてサトルには母(原田美枝子)を事故で亡くした心の傷があり、共感し合う2人には固い絆が生まれます。
ところが、ジュンが家庭の事情で遠くへ引っ越す事になっちゃう。別れる前に、ロボットを介さず直にサトルと会いたいジュン。けど、その勇気が持てず頑なに拒否するサトルと、つい喧嘩して決裂してしまい……
こうして書くと、ごくシンプルな友情物語(あるいはラブストーリー?)なんだけど、この映画には他にも様々な要素があります。いや、あり過ぎるんですよねw
母の事故死以来、部屋に引きこもったサトルとどうコミュニケーションすれば良いか分からない、父親=岩本博士の苦悩。ジュンに想いを寄せる学級委員長(女子……ってことは百合?)の、ヒノキオ=サトルへの嫉妬とイジメ。ジュンの計らいでサトル……というかヒノキオとデートする事になった、学年のマドンナ(堀北真希)の「本当のあなたはどこにいるの?」っていう重い言葉。
初めてこの映画を観た時、私は「SFファンタジーなのにドラマがやたら重い!」っていう感想を持ちました。
明るくて浅い『夜のピクニック』とは対照的で、学校生活の描写があんまり重苦しいもんだから、サトルとジュンの別れがイマイチ盛り上がらないよ!って思いました。(別離は、楽しい日々があってこそ切ない)
でも、今回あらためて観直して、創り手が一番やりたかったのは、実はSFファンタジーでも切ない友情物語でもなかったのでは?って気がして来ました。
多部ちゃんの朝ドラ『つばさ』と、ちょっと似てるんですよね!
ジュンもサトルも博士もトラウマを背負ってて、その問題と正面から向き合えないでいる。学級委員長も心を病んでそうだし、マドンナの真希ちゃんも、更に博士の助手(牧瀬里穂)までもが、かつては心を閉ざしてたと言う。
里穂さんは「頑張れって言われるほどツラいことは無い」と言い、真希ちゃんはジュンに「本当にツラくなったら無理しないで、いつでも遊びに来いよ」って言われ、立ち直ったと言う。
本作も間違いなく、心理学をモチーフにしたセラピー映画なんですね。ジュン、サトル、博士がそれぞれトラウマと向き合い、克服していく姿が描かれてる。
だけど、まずSF設定があって、友情物語があって、トラウマの克服ドラマがあって、更に現実世界とゲーム世界がリンクしてるだの、ヒノキオが実は軍事用ロボットの実験機だの、てんこ盛り過ぎて全部が消化不良になっちゃった。
とても良いストーリーなのに、なんだか勿体ないです。監督さんが欲張り過ぎたのか、製作委員会(スポンサー連中)からの要望だったのか……?
ジュンとサトルの友情物語と、親子の確執→和解のドラマだけに絞った方が良かった気がします。
ジュンが普通の女の子に戻って、サトルと再会するラストシーンも素晴らしいんだけど、ジュンがトラウマを克服する過程が描かれてないもんで、ちょっと「ん?」ってw、引っかかっちゃうんですよね。
身体の変化に伴って自然とそうなったのか、サトルへの想いが実は恋心だったって事なのか……? 余計な要素は全部省いて、そこんとこを丁寧に描いて欲しかったです。
そんなワケで、とても良いストーリーなのに、サービス精神旺盛が裏目に出ちゃった「惜しい」作品だと思います。
けど、それら全てを差し引いてもお釣りが出るくらい、工藤ジュン=多部ちゃんは素晴らしいです。本当に愛おしい! 必見です。