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2016年に公開された、水田伸生 監督&吉澤智子 脚本による日本映画。本国で大ヒットした韓国映画のリメイクです。
いやぁ、良かったです。期待以上でした。もっとベタなドタバタ喜劇を想像してたけど、良い意味で裏切られました。これは、大人向けの映画です。
若い頃に夫を亡くし、戦後の貧しい時代に女手ひとつで娘を育てて来た苦労人=瀬山カツ73歳が、娘と喧嘩して家出した挙げ句に温水洋一の呪いにかかり、いきなり20歳に若返ったから驚いた!
20歳のカツを多部未華子、73歳のカツを倍賞美津子、その娘を小林聡美が演じるほか、要 潤、北村匠海、金井克子、志賀廣太郎、野村周平といったキャスト陣が脇を固めてます。
若返った毒舌ばあちゃんを、多部ちゃんが今回もパーフェクトに演じてるのは、もはや言うまでもありません。
タベリスト的には、かつて母娘役で共演した小林聡美さんと多部ちゃんが、今回は逆の立場で再共演してるのも見所だけど、それより何より、ストーリーの核にもなってる、多部ちゃんの歌声ですよね。
その歌唱力は各方面で絶賛されてますから、ここでアレコレ言うことはありません。とにかく素晴らしい!の一言です。
なにしろ、飛び入り参加ののど自慢大会でカツが披露した歌声に、バンドをやってる孫が自分の祖母とも知らずに惚れ込み、更に音楽プロデューサーにも眼をつけられ……っていう展開ですから、多部ちゃんの歌がショボかったら話になりません。
歌唱力っていうより、表現力の勝利ですよね。聴く側は、歌の巧さに感動するワケじゃない。ハートに響いてくるものが有るか無いかですから。
それとご両親から授かった、天性のピュアさと、声の魅力。理屈じゃないんだと思います。
もちろん、楽曲の良さも重要なポイントです。最後に披露される今風のオリジナル曲も悪くはないんだけど、序盤でカヴァーされた昭和の歌謡曲たちの方が、圧倒的に我々のハートを揺さぶります。
そりゃあ自分が昭和世代だからってのも多少あるでしょうが、絶対それだけじゃない。楽曲の持つパワーがまるで違うんだと思います。これもまた、理屈じゃない。
とにかく苦労するばかりの人生を送って来たカツが、若返り、恋をし、歌手として注目され、華々しい第二の人生を謳歌するんだけど、じゃあ苦労ばかりの過去73年間には、意味が無かったのか?
物語が進むにつれ、我々は気づくんですよね。カツの歌が素晴らしく、ハートに響いてくるのは、苦労した73年間の重みがあればこそなんだって事に。
楽曲そのものにも言える事で、現代のポップスが昭和の歌謡曲に比べて(全てがじゃないけど)薄っぺらく感じられ、ハートに響いて来ないのは、創り手の生きてる時代、その人生の濃度がまるで違うんだから、そりゃもう仕方がない。
裕福で平和に生きて行ける方が、そりゃ幸せに決まってるけど、だからって貧しくて苦労ばかりの日々は、意味が無いのか? 不幸なだけなのか? 絶対に、そんな事はないんですよね。
笑い泣きしながら、そんな事を考えさせられる映画でした。そして、老いるとはどういうもんなのか?って事も。この歳になると、万事が他人事じゃありません。
倍賞美津子さん演じる73歳のカツも、実に魅力的でした。この映画、例え多部ちゃんが出てなかったとしても、倍賞さんの魅力で好きになったと思います。多部ちゃんが出てなきゃ観ないかも知れないけどw
要潤さんがイイ人を演じてるのも久々に観ましたw 出てくるキャラクターがみんなイイ人で、だけど薄っぺらくもなく、多部ちゃんの朝ドラ『つばさ』の世界観に通じるものを感じました。
共通するのは、昭和テイストですね。オリジナルは韓国映画だけど、だからこそ昭和っぽいと言いましょうか。とにかく多部ちゃんは、ホントに昭和がよく似合う。
これは間違いなく、多部ちゃんの映画における代表作になると思います。もう1つの代表作『君に届け』とは真逆のキャラを演じて、どっちも唯一無二のハマり役に見えちゃうんだから、つくづく凄い女優さんです。
これはホント、良い映画です。タベリスト以外の方にも自信を持ってオススメ出来ます。特に昭和世代の方、必見です!