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2019年の秋シーズン、日本テレビ系列の日曜夜10:30「日曜ドラマ」枠で全10話が放映された、日本テレビ&AX-ONの制作による、キャッチコピーによれば「超規格外の刑事ドラマ」。
公式サイトに掲載された概要は、以下のとおり。↓
☆☆☆☆
これが、刑事ドラマと呼べるのかー。
目が覚めると俺の横には女性刑事の亡骸があった。手には拳銃。なぜか俺の記憶は数ヶ月消し飛んでいた。俺がコイツを殺したのか……。それとも何者かにハメられたのか……。
容疑者は『自分自身』と俺の『目に映るすべての人物』。
俺を疑い追いかける同僚刑事。かつての仲間は一夜にして敵に。相棒は亡き女性刑事の一人息子である幼き少年ただ一人。やがて事件は未解決の「十億円強奪事件」の真相へと繋がっていく……。
女性刑事を殺したのは…? 十億円を奪ったのは…? 疑いが加速し、裏切りが止まらない。究極のアンストッパブル・ミステリーがここに開幕! 一人の刑事が巨悪に反乱を起こす、予想を覆し続ける規格外の刑事ドラマ!!
この物語、一度見たらその結末を見届けるまで、「とんでもないこと」が止まらない。
☆☆☆☆
警視庁捜査一課の癌と呼ばれるやさぐれ主人公=遊佐刑事に賀来賢人、殺された捜査一課のマドンナ=碓井班長に広末涼子、その息子に田野井 健、碓井班の刑事に杉本哲太、工藤阿須加、立花恵理。
そして捜査一課の課長に北村一輝、刑事に水上剣星、細田善彦、公安部の刑事に井浦 新が扮するほか、夏帆、佐久間由衣、笹野高史etc…といったキャスト陣が脇を固めます。
私は常々、斬新でサプライズに満ちた刑事ドラマを待望してます。だから「超規格外の刑事ドラマ」なんて言われると期待せずにいられないんだけど、まぁ五分五分以上の確率で「どうせ裏切られるだろう」とも思ってます。さて、この番組はどうだったか?
上記のあらすじを読む限りだと、どこが超規格外なのかサッパリ分かりません。刑事が罠に嵌まって殺人容疑者になったり、そこに記憶喪失が絡んだり、同僚刑事を含む周りの人間がみんな怪しかったりするサスペンスは、私が子供の頃からいったい何本観て来たか見当もつかないほど、全く新しくも何ともないネタです。「警視庁の癌」と呼ばれる刑事も沢山いたし、小さな子供が相棒になるって話もいっぱいありました。
じゃあ、創り手はどこを指してこれが「超規格外」だと言ってるのか? 驚きました。これは違う意味でサプライズでした。
刑事たちが、同僚(しかも課のマドンナだった女性)が殺された現場で、その遺体を前にしてフザケたりはしゃいだりしてる!
そして捜査会議で下らない縄張り争いから全員で大乱闘をおっ始める! そこにやって来た公安の刑事が拳銃をぶっ放して騒ぎを止める!
まだまだあります。初対面の上役から「遊佐が犯人だ」と聞かされた若手刑事が、その裏もとらずに遊佐を殺そうとする! 反撃してそいつを殺そうとした遊佐を、小さな子供が拳銃をぶっ放して止める!等々、メチャクチャとしか言いようのない描写が初回だけでも枚挙に暇ありません。出てくる刑事が全員、バカばっかり。
規格外って、そういう事ですか……やれやれ……困ったもんです。
違うんだよなぁ……私が求めてるのはそういうサプライズじゃない。それはむしろ、一番やって欲しくない「なんでもあり」の「悪ふざけ」です。ぜんぜん新しくもなければアナーキーでもなく、ただ単に「奇をてらった」だけ。
彼らがやってることは、コンビニや飲食店のバイト店員がふざけて食品にツバをかけ、それを撮った動画をネットにアップするような行為と同じことで、そんなの観たって笑えもしないし、まして「こいつら尖ってて超クール!」なんて微塵も思いませんよ。
ただ単に幼稚で無能でひたすらダサい連中でしかなく、そんなヤツらをドラマの主役として描いてる創り手たちも同じ穴のムジナ。なにがニッポンノワールじゃ、ふざけんな!って、私は言いたいです。
これまでの刑事ドラマがなぜ、そういう事をやらなかったか? 別に誰も思い付かなかったからじゃない。そんな事をしても作品の面白さには全く繋がらないことを、皆が分かってたからです。
マトモな人間が職場でフザケてる動画をネットにアップしないのも、臆病だからじゃない、それが究極にダサくて面白くも何ともない事が分かってるからです。あんな動画を観て笑う人は、アップした人と同レベルのおバカさんだけ。大半の人は怒りもせず、ただ「ああ、可哀想に」って思うだけ。その可哀想っていう意味も、おバカさんたちには解らないんだろうけど。
結局、全くもってありきたりなストーリーを、フザケたり裏をかいて見せることで「新しい」と言い張ってるだけ、としか私には思えません。警察という権威をおちょくったり、人気ジャンルの伝統やルールを壊して見せることがアナーキーでカッコいい、と思い込んでる小学生レベルの発想でしかない。
それは私が大好きな「パロディ」とは似て非なるものです。パロディが面白いのは、ネタ元に対する創り手のリスペクトや愛情が根底にあるからです。「この作者、よっぽど好きなんだな」っていう微笑ましさが笑いに繋がるワケです。
この『ニッポンノワール』って作品からは、刑事ドラマに対するリスペクトや愛情が微塵も感じられません。だからまったく笑えない。
同じ枠で冬シーズンに放映された連ドラ『3年A組/今から皆さんは、人質です』と話が繋がってるような仕掛けがあるらしいけど、そんな小手先の話題作りも上滑りしてます。
最終回まで「とんでもないこと」が止まらないそうだけど、そのたびに私の口から出るのは「驚いた」でも「笑った」でもない、「やれやれ……」っていう溜め息だけになりそうです。刑事ドラマの破滅が止まらない。
セクシーショットはレギュラーキャストの立花恵理さんと佐久間由衣さん。共にファッションモデル出身の女優さんです。