ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『亜弥のDNA』最終回

2023-07-09 14:34:45 | 刑事ドラマ2000年~

余談ですが、この『亜弥のDNA』撮影期間中にリリースされ、大ヒットを記録したのが松浦亜弥さん5枚目のシングル『♡桃色片想い♡』でした。

はしのえみさんや前田健さんらが物真似のネタにした代表曲の1つであり、『亜弥のDNA』撮影現場でも「♪あ〜やあやや、あっややや、イエー!」っていうコーラスの真似が流行ってたそうです。



そもそも『亜弥のDNA』はテレ東の深夜バラエティー番組『アイドルをさがせ!』の1コーナーであり、松浦亜弥という新人アイドルを売り出す為に企画されたドラマなのに、ブレイクのスピードが想定外に速かったもんで、逆に超過密なスケジュールを無理やり「こじ開けて」撮影にお迎えするという、最初の思惑とはずいぶん違った制作環境になったことは、以前にも書きました。

ゆえに、主役が撮影に参加できる時間は、ほんのわずか。ちゃんとしたアクションシーンを撮る余裕はまったくありません。

そういう意味も含めて、小柄な女子中学生の主人公=亜弥(松浦亜弥)が、屈強な(?)男性刑事たちをあっという間に倒してきた用心棒のカオル(高野カオル)と、一体どうやって(時間をかけずに)闘うのか?

是非とも注目して頂きたい第9話=最終回の『亜弥、いい日旅立ち』です。



まず、蜂の巣になって失神してた岩城刑事(久保和明)が男らしく背後からカオルに殴りかかるも、即座に蹴られて再び失神。



その一瞬のスキを亜弥は見逃さなかった!



以下、コマ送りで再現!



左手で自らの鼻をつまみ……



右手で差し出した割箸の先にぶら下がってるのは……



あの福山雅晴(ホリケン。)の香しい靴下だった! 瞬殺! これぞタイムパフォーマンス!!



大事な娘が無事だったことと、クライマックスの撮影が時間内に収まったことにホッと胸を撫で下ろす、初回からハラハラしどおしの松浦警部(三嶋幸恵)なのでした。

「うわっ、また匂ってきた!💦」



というワケで、女子中学生の活躍により拳銃密造組織はついに壊滅!

ギクシャクしてた母と娘も、事件を通して絆を再確認し合えたみたいです。



「あのとき、拳銃を持った敵の中に岩城を突っ込ませたの、亜弥でしょ」

「知らないよ。足が滑ったんじゃない?」

それで岩城は蜂の巣にされたワケだけど、お陰で「なんだか吹っ切れた」と、彼は亜弥に感謝してるらしい。

これは『太陽にほえろ!』で滝刑事(スコッチ)が岩城刑事(ロッキー)をあえてハードな銃撃戦に飛び込ませ、拳銃恐怖症を克服させたエピソードの「パクリ」と思われますが、脚本と演出を手掛けたK監督は「オマージュだ」と言い張ってるそうです。

ただし、スコッチ刑事の場合は「こんなにクールでカッコいいオレでも銃はめちゃくちゃ怖いんだ」って、普段は人に見せない弱みをロッキーに見せることで、自信を取り戻させるというアプローチでした。

一方、岩城を敵の中に無理やり飛び込ませ、集中砲火のマトにさせた亜弥のスパルタ方式は、むしろ『太陽〜』より『探偵!ナイトスクープ』を彷彿させますw (あややもK監督も関西出身だし)

「言っとくけど、頭に当たってたら死んでるわよ」

「よっぽど射撃のプロじゃなかったら、頭なんて小さいマト狙わないで、胴体狙うでしょ?」



「親の顔が見たいわ」



「あなたです」

最終回にしてようやく、究極のアイドルスマイルが飛び出しました。

「あんたは大した娘よ。それは認める。でもこれ以上……」

「手を引くよ。もう解ったから」

「なにが解ったの?」

「お母さんの仕事って大変だよ。スリルがあって楽しい仕事だから、家のこと放ったらかして夢中になってるのかなって思ってたけど、そうじゃなかった」

亜弥は特に、同じ学校に通う生徒が担任教師に撃ち殺された事件で、相当つらい思いをしたようです。



「誰にでも出来る仕事じゃないよね。お母さん、凄いよ」



「あんた、それを確かめる為に首を突っ込んできたの?」



「お母さんを恨みたくなかったからね」

「亜弥………」

これも『太陽にほえろ!』でロッキー刑事が殉職し、その妻だった令子さんが「夫を夢中にさせた刑事という仕事を理解したい」と志願してマミー刑事になったいきさつの「もちろんオマージュだ」とK監督は言い張ってますが、どうでもいいですね。

ともかく、やっと真意を明かし、ちょっとしんみりしたところで、亜弥は元気に立ち上がって藤堂係長(上原袈裟俊)のデスクに歩み寄ります。



「というワケで係長。短い間でしたけど、お世話になりました」



「……係長?」



「係長っ!!💦💦」

まさかの「ボス、何もしないまま殉職!」かと思われましたが……

「おお、いかん。眠ってたわい」

単に眼を開けたまま寝てるだけでした。



「んもう! 死んだかと思ったよ💨」

「亜弥、失礼よ!💢」



さて、数日後。いつものように凶悪犯の草刈正晴(中村哲也)を追って、岩城刑事がバディの田口先輩(三遊亭亜郎)と共に町を激走します。が、以前とはちょっと様子が違う。



亜弥のお陰ですっかり拳銃恐怖症を克服した岩城は、新米時代のワイルドさを取り戻したみたいです。



「こっちはあれから靴下恐怖症なんだよバカヤロー!」

そして山田署の刑事部屋に戻った2人は、松浦警部からショッキングな事実を聞かされるのでした。

「えっ、亜弥ちゃんがアメリカ留学!?」

「ゆくゆくはFBIの試験を受けるって言ってたわ」

「もう行っちゃったんですか?」

「ちょうど今ごろ太平洋上空ね」



「なんでまた、そんな遠くに……」

「係長がね、あの子を山田署の顧問にするとか言い出したからよ」

「係長!」

「余計なことを!」



「……寝てるよ」

亜弥に100%頼りっきりだった田口や岩城に、藤堂係長を責める資格はありません。強くてカッコいい男が本当に1人も出てこないドラマです。

「亜弥ちゃん……」

「カッコいい中学生だったなあ……」

最終回らしく、刑事たちがそれぞれ亜弥の大活躍を回想したところで、デスクの電話が鳴ります。

そして爆睡中の藤堂係長に替わって受話器を取った田口刑事が、嬉しそうに叫ぶのでした。

「ええっ、ハイジャック!?」

それは本来、所轄署には関係ない事件だけれど……

「アメリカ行きの便で紅い革ジャンを着た中学生ぐらいの女の子が、犯人グループと派手に大立ち回りやらかしてるって!?」

「亜弥ちゃんだ!!」



激しい目眩を起こした松浦警部に、部下たちが瞳をキラキラさせながら問います。

「どうしますか警部!」

「連れ戻すのよ!!」

「ハイッ!!」



これぞ王道! そう言えば『太陽にほえろ!』も刑事たちの出動シーンで最終回の幕を閉じました。

当然、ラストカットも『太陽〜』に倣ってボスを撮るべきだけど熟睡中なもんで、初回からナレーションも担当して来たこの人=市原警部補(田中美穂)がまさかのトリ!



「次にお会いする頃には、私が係長です」

松浦警部はもっと上に昇進するでしょうから、市原さんの目論見は遠からず実現しそうです。

(おわり)




このミニドラマが放映されてから約20年が経ち、松浦亜弥さんも今や(2023年現在)30代後半の人妻で3子のお母さん。

芸能界を引退されたワケじゃなく、最近も「ネスカフェ エクセラ」のCMに出演されてはいるけど、あまり話題にはなってないようです。

一方、この作品がプロデビュー作だったK監督は、大して芽が出ないまま5年も経たない内に映像業界を去り、今はごく平凡な生活を送ってるとか。

結果的に、K監督が映像業界で働いた5年弱は、松浦亜弥さんがアイドルとして最も輝いてた時期とほぼシンクロしてます。

別に業界人だからって他の職種より偉いワケじゃないし、売れっ子アイドルになることが本当に幸せかどうかも「ケースバイケース」だと思うけど、それでも、あの約5年間が両者にとって「人生の絶頂期」だったことは間違いないでしょう。

特に、ブレイク真っ最中だった松浦亜弥さんを、プロデビューしたばかりのK監督が撮った『亜弥のDNA』は、両者が最も輝いた瞬間の記録と言えるかも?



じゃあ、お母さんになってほとんどテレビに出なくなった亜弥さんや、ごく一般的な仕事をしてるらしいK監督の現在は不幸なのか?

そんなワケありません。そもそも、永遠に輝き続けることなんて誰にも出来ない。パッと輝いて、いずれは消える。もう一度輝きたくなったらリターンするか、あるいは別の場所で頑張ればいい。人生はその繰り返し。

人類全体の運命も、いつかは消える。それで良いのだ。無目的に膨らみ、輝いて、最後に爆発する。

そして平然と人類がこの世から去るとしたら、それがぼくには栄光だと思える。そう岡本太郎も言っていた。


↑あややにさんざん空撃ち(故障のもと)されたこのモデルガンは、K監督の私物だそうですw


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 『亜弥のDNA』#08 | トップ | 『あの頃。』 »

コメントを投稿