ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『探偵物語』#02

2018-11-04 00:00:27 | 探偵・青春・アクションドラマ









 
言わずと知れた日本テレビ系列・火曜夜9時枠で1979年秋から全27話が放映された、松田優作 主演、セントラル・アーツ製作による伝説的な探偵ドラマ。

当時の視聴率はそんなに良かったワケじゃないんだけど、優作さんの逝去を機に再注目され、そのユニークさとクオリティーの高さで不動の評価を得た作品です。

セントラル・アーツ作品は越えちゃいけないリアリティーの境界線を越えちゃう(そこで私はシラケちゃう)って何度も書きましたが、この『探偵物語』は違います。

当初の企画は徹底したハードボイルドであり、各ライターさんもそのつもりで脚本を書かれたのに、主演の優作さんが「いや、ハードボイルドじゃなくハートボイルドで行く」って言い出して、本筋はそのままに枝葉をどんどんコミカルにアレンジしちゃった。それがあのシリアスとコミカルの独特なバランスを生んだワケです。

だから、どんなにオチャラケても根本はハードボイルドだから、リアリティーの境界線を越えることはまず無い。そこが最初からオチャラケを狙った他の探偵コメディと大きく違う点で、本作が伝説的ドラマになった所以じゃないかと私は思ってます。

特にこの第2話はコミカルさが抑え気味で、本来のハードボイルドな味わいが色濃く残ってます。ドタバタ喜劇に走っちゃった第1話も決して嫌いじゃないけど、私はこれくらいのバランスが一番好きです。


☆第2話『サーフ・シティ・ブルース』

(1979.9.25.OA/脚本=那須真知子/監督=村川 透)

資産家の内藤家に呼ばれた私立探偵・工藤俊作(松田優作)は、美貌の内藤夫人(中島ゆたか)から、2年前に家出した前妻の娘・リカ(栗田洋子)の行方を探して欲しいとの依頼を受けます。入院中の主人の死期が迫り、意識のある内に会わせてやりたいのだと言う内藤夫人。

彼女のミステリアスな色気に惹かれつつ、調査を開始した工藤は裏社会の情報網を駆使し、ソープランドで働くリカをあっさり見つけ出します。が、荒れた生活を送るリカは両親との面会を拒否。立場上それ以上介入することも出来ず、リカの居場所だけ夫人に伝えて、工藤の役目は終わったかに見えたのですが……

リカが悪い仲間たちと銀行強盗をやらかした事で、事態は急展開を迎えます。リカを含む強盗一味が何者かに拳銃で皆殺しにされ、さらに工藤も命を狙われる羽目に。

警視庁殺人課の服部刑事(成田三樹夫)らは強盗一味の仲間割れと断定しますが、工藤は気づいていました。自分を殺そうとしたのは、内藤家で夫人に対して特別な想いを秘めてる、使用人の郷田(河原崎次郎)であることに……

そう、仲間割れに見せかけてリカたちを殺したのは郷田。影で糸を引いたのは、遺産の独り占めを狙う内藤夫人だった。それを工藤に見破られた夫人は、黙って服を脱ぎ、「好きなの」と迫りますが、工藤は言います。

「やだね。俺は自由でいたいんだよ、奥さん」

最終的に内藤夫人は不倫相手に殺され、リカたちを殺した罪は全て郷田が被りますが、あえて工藤は警察に何も言わないのでした。夫人を守りたかった郷田の気持ちを汲んだのでしょう。

セクシー下着で迫る美人妻に見向きもしない工藤の姿は、まさにハードボイルド。普通の探偵コメディなら主人公が(最終的には我慢するにせよ)鼻の下を伸ばして笑いを取ろうとした筈です。

優作さんがアドリブでおかしな言動をいちいち挟むのは、別に自分がウケたいからじゃなくて、とにかく作品に個性を持たせたかったから、なんだろうと思います。気質がクリエイターなんですよね。

だから、渋くキメるべき所はちゃんと渋くキメる。そのメリハリこそが『探偵物語』最大の魅力なんじゃないかと私は思います。

あと、あらためて観ると何から何までオシャレですよね。スタイリッシュな映像と音楽に加えて、今風で言えば「ダサかっこいい」ファッションや仕草。おんぼろ原付バイクのベスパや火力最大の100円ライター等、優作さんでなければ格好良く見えないものが格好良く見えてしまう。それを多くの男子が勘違いして真似ちゃうワケですw

その「ダサかっこいい」美学の原点は『傷だらけの天使』のショーケンさんにあるかと思いますが、それを誰にも再現出来ないレベルにまで昇華させたのが優作さん。オシャレさで『探偵物語』を超える作品はもう現れないんじゃないかと思います。

そこまで虚構の世界を追究できたのは、リアリティーの境界線を平気で越えちゃうセントラル・アーツ作品だからこそ、かも知れません。「あり得ない」とか言い出したら成立しない世界観ですから。

内藤夫人役の中島ゆたかさんは当時26歳。優作さんとは既に映画『殺人遊戯』で濡れ場も演じた仲。その現実離れした美貌から数々の刑事物、探偵物でミステリアスな悪女を演じられ、特に『Gメン'75』は通算10回もゲスト出演されてます。
 

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4 コメント

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Unknown (キアヌ)
2018-11-04 08:30:59
ほぼ40年前という事実にうろたえを隠せません(汗)

憧れは薄れません。多分一生憧れるんだろうなーと思います。
たまたまですがこのエピソード、最近見ました。

これと亜湖さんがゲスト出演されるエピソード、何回見たかわからないくらい好きです
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>キアヌさん (ハリソン君)
2018-11-04 16:13:04
亜湖さんが片桐竜次たちに殺される回ですよね。ヒロインのキャラクターが良くて、優作vs竜次のアドリブ対決も楽しい回でした。テレビ番組としてはホント贅沢ですよね。
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ベスパ、直してくれてありがとう (適当谷損気)
2020-01-21 19:49:47
最近全話見終わりました。
漫画をそのままテレビドラマにしたようないかにも馬鹿っぽい作風ですが、深いテーマが込められているのは感じられましたね(工藤含めた街の人たちのさりげないやさしさ、人間味とか)

そうそう。最近また二次創作書いてしまいました。
今度は見ての通り探偵物語です。
「ただマツダ車のカーチェイス書きたかっただけだろ」感丸出しですが、そんなんでも読んで下さると幸いです。では。
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Unknown (harrison2018)
2020-01-21 23:20:56
凄い創作意欲ですね! また休日にゆっくり読ませて頂きます。
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