ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『トレース/科捜研の男』2019

2019-12-10 00:00:07 | 刑事ドラマ HISTORY






 
2019年冬シーズン、フジテレビ系列の月曜夜9時「月9」枠で全11話が放映されたミステリードラマ。

警視庁科学捜査研究所の法医科に所属する法医研究員に錦戸 亮、新木優子、小雪、山崎樹範、岡崎紗絵らが扮し、船越英一郎らが扮する捜査一課の刑事たちから目の敵にされながら、緻密な鑑定で難事件を解決に導いていきます。

原作が元・科捜研の研究員という触れ込みの古賀 慶さんが描かれたコミックなので、科学捜査やその組織のリアルな描写が期待できそうです。

初回を観るかぎり、優秀な研究員たちによる的確な鑑定がみごとに事件の真相を突き止める描写には、確かにカタルシスを感じました。

でも……

観てて気持ち良かったのはそこだけなんですよね。他の要素が全然気持ち良くなくて、トータルで見ると圧倒的に「気持ち悪い」←主人公の口癖です。

特に私が不快に感じたポイントを3つ挙げますと……

☆その1/あまりに救いが無さすぎる事件の内容。

初回の被害者である女性は、父親からずっとDVを受けて育ち、だけど婚約者が出来たことに勇気を得て、今もDVを受け続けてる母親を救うため、初めて父親に楯突き、殴られながらも絶縁宣言をした。それでようやく長年の呪縛から解放されたと思った矢先に、なんと隣家に住む赤の他人に殺されちゃった。

つまり作者は、父親が犯人であるかのようにミスリードしておいて、意外な真犯人を最後のどんでん返しに用意していた。父親に殴り殺されるのも勿論むごいけど、それ以上に後味の悪い結末です。

で、娘に何もいい思いをさせられなかったと言って自分を責める母親に、主人公の錦戸亮くんが言うんですよね。「娘さんはきっと、お母さんを(DVから)救うために生まれて来たんですよ」って。

作者はそこで我々視聴者を泣かせたかったみたいだけど、私の涙腺はピクリとも動きませんでした。そんなの、ただひたすら悲惨なだけで、いい話でも何でもない。

こんな陰湿な話を進んで書きたがる作家さんのお気持ちが、私には全く理解できません。主人公が最後に犯人をぶっ殺してくれるなら話は別だけど、なにせ科捜研ですから逮捕すら出来ません。

これから毎週こんな陰気な話に付き合うのかと思うと、早くも私はウンザリしちゃいます。

☆その2/いちいち科捜研を目の敵にする船越刑事。

どうしても主人公を目の敵にする上司や同僚を設定しないと、ストーリーを創れないんですかね、昨今のドラマ制作者たちは? まったく猫も杓子も! ホントにもうウンザリです。

ただ不愉快なだけで面白くもなんともない人間関係を、どの作品も判で押したように見せたがる理由が、私にはこれまたサッパリ理解できません。

創り手の立場になって考えれば考えるほど解らない。私がもしドラマ制作者なら、猫も杓子も使ってるような手法は意地でも使いたくありません。たとえ原作がそうなんだとしても。たとえそれが警察組織の現実なんだとしても。

特に今回は元・科捜研が原作者なだけに、必要以上に捜査課を悪者に描いて科捜研を美化してんじゃないの?なんて邪推したくもなります。

とにかく、その描写はホントに必要なのか?って言いたくなる無駄な設定、あまりにワンパターン過ぎる設定が多すぎる! それが面白ければ文句ないけど、つまらんのだよっ!! 本当に堪忍袋の緒が切れそうです。

☆その3/主人公のあまりに暗すぎる過去。

主人公はどうやら、かつて両親を惨殺され、警察の見込み捜査やマスコミの偏見により犯人扱いされた身内が自殺したという、凄まじく暗い過去を背負ってて、だから自分の勘を過信する船越刑事と対立するワケですが……

そりゃあ、私が大好きなスコッチ刑事やブラック・ジャックなんかも暗い過去を背負ってたけど、そこまで悲惨じゃなかったですよ。いくら何でも度が過ぎてる。

その過去を小出しにして描き、謎で視聴者を引っ張ろうとする小賢しい作劇も私は大嫌い。直球で勝負せえや、直球でっ!!

やたら悲劇を描きたがる刑事ドラマは昔からあったにせよ(Gメン'75とかw)、悲しさの質が違うというか、こんな陰湿さは無かったですよ。ドラマにせよマンガにせよ、昨今は陰湿な作品が多すぎる。

確かに世の中は破滅です。お先真っ暗です。だからこそ、せめてフィクションの世界ぐらい楽しく出来んもんかいな?って私は思う。

特に刑事物なんて、元来はチャンバラ時代劇や西部劇のバリエーションですよ。無力な我々小市民に替わって悪党を懲らしめ、スカッとさせてくれる、そういうジャンルなんです。『太陽にほえろ!』以前は違ったかも知れないけど、『太陽~』を観て育った私にとってはそう。ファンタジーでいいんです。

それともう1つ言いたいのは、作者にとって登場人物は我が子みたいなもんなのです。ちゃんと魂を入れて、愛をこめて書いていれば。

あそこまで陰湿で残酷なことが書けるのは、魂なんか入れずゲーム感覚で話を作ってるか、あるいは作者自身が同じような過去を背負ってるか……それはまず無いでしょうから、登場人物を虐めて楽しむゲームなんですよ結局は。そんな遊びに私は断じて参加したくありません。

力作なのは認めるけど、力の入れどころが完全に間違ってるよと、創り手の人たちに言いたいです。ちゃんと魂を入れて下さい。キャラクターを愛して下さい。あなた方のゲームに付き合うほどこっちはヒマじゃないんです。
 

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2 コメント

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Unknown (gonbe5515)
2019-12-10 10:43:52
そのとおり!!

ハリソン君、よく言った!!!
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Unknown (harrison2018)
2019-12-10 11:58:03
テレビ番組でも暗い作品、恐怖心をあおるような作品は昔からあったにせよ、こういう陰湿な残虐性は2000年代からの傾向じゃないかと思います。

いわゆる「ゲーム脳」になって麻痺してるんでしょうね。破滅です。
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