☆第13話『俺の拳銃』(1977.6.28.OA/脚本=峯尾基三/監督=舛田利雄)
城西署捜査一課の「ヒラ」こと平原刑事(粟津 號)が、巡査部長の昇級試験を受験します。4度目のチャレンジで、「ここらで昇級して、嫁さんでも貰って両手に花、なんて甘いスかね?」と自信なさげな平原を、黒岩デカチョウ(渡 哲也)は「あんなに勉強してたじゃないか」と励まします。
そんな折り、春子というソープランド嬢が自宅マンションでガス自殺します。知らせを聞いて駆けつけた父親の久保(梅野康靖)は、春子がソープで働いてることも知らず、激しく動揺します。
市役所で害虫駆除員として働く久保は、潔癖症で偏執的な性格が災いし、妻に逃げられ、娘の春子も早くに独立し、疎遠になっていた。そんな久保にとって、娘が風俗で働いた挙げ句に自殺したという事実は、到底受け入れられない事でした。
しかも、春子には明石(佐藤京一)というヤクザのヒモがいた。どうやら彼女はその明石にさんざん喰い物にされ、自殺に追い込まれたらしい
……
職場に戻った久保は、研究用に飼育してる大量のゴキブリを殺虫剤で皆殺しにします。そのビジュアルも強烈だし、普段は温厚な役柄が多い梅野康靖さんの完全にイッちゃった顔は、ギャップが激しいだけに相当怖いです。
そしてある夜、城西署に「久保春子は自殺なんかじゃない、殺された」とのタレコミ電話が入り、ちょうど宿直だった平原が話を聞きに行ったところ、襲撃されて拳銃を奪われちゃいます。
そして翌日、ソープランドの店長が撃たれちゃう。幸いにも店長は一命をとりとめ、犯人が久保であることを証言するんだけど、平原は茫然自失。責任をとって刑事を辞めると言い出し、黒岩の必殺団長パンチを浴びる羽目になります。
「甘ったれんな! デカを廃業すれば責任が取れるのか? 久保を逮捕したくないのか!?」
「逮捕したいです! 殴り殺してやりたいです!」
「だったらこのヤマだけでもしがみつけ! それから結論を出しても遅くはない」
「……分かりました。自分の尻拭いしてから、結論出します!」
そうして平原が必死に久保の行方を追う一方で、他の刑事たちは次に命を狙われるであろうヤクザの明石を押さえに行きます。
大人しく保護される輩じゃないので、乱交パーティーの現場に踏み込んで現行犯逮捕するという荒業。その際に黒岩が明石に浴びせた、殴る蹴るの体罰が普段にも増して凄まじいw アクションというより暴力そのもので、渡哲也さん、やっぱホンマもんですw
その頃、執念の捜索を続ける平原は、久保の宿泊先で彼の日記を見つけ、次なるターゲットが明石ではなく、特殊浴場組合の事務局長を務める区会議員=片桐であることを突き止めます。
「この世の中には、人間の顔をした害虫がウヨウヨいる。放っておけばブヨブヨ太る一方だ。早い内に芽を摘み取らねば、汚染され腐ってしまう。急がなければ……」
久保の日記にはそう綴られており、確かに世の中は破滅に違いないんだけどw、急いで阻止しないと自分の拳銃で人が殺されてしまう!
夢中で片桐議員の所へ駆けつけた平原は、まさに今、拳銃の引金を引こうとしていた久保の前に飛び込みます。
「偽善者! 蛆虫! 人間のクズ! 死ね!」
弾丸が標的の片桐議員ではなく平原に命中しても、久保は構わず撃ち続けます。
「返せ! 俺の拳銃を返せ!」
残り4発の弾丸を全て受け止め、倒れた平原は、久保が投げ捨てた拳銃を這いずって取り戻します。
宗方医師(石原裕次郎)の的確な処置により即死は免れたものの、平原の命は風前の灯火。黒岩は渋谷病院のベッドで、平原と最後の言葉を交わします。
「クロさん……オレ……刑事、続けます……この仕事に、しがみつきます」
「よかったな……これがお前の拳銃だ。お前が取り戻したんだ」
「やりますよ……治ったら、バリバリ……」
一方、逃走した久保は貯水場に追い詰められ、給水タンクに青酸カリを放り込もうとしますが、駆けつけた刑事達に取り押さえられます。
「これでハッキリした! 警察は暴力の温床だ! 貴様ら寄生虫だ! 害虫だ害虫だ!」
確かに黒岩軍団は暴力の温床だけどw、本当の寄生虫であるヤクザはのうのうと生き延び、純朴だった平原刑事の命は断たれちゃいました。
「彼は、自力で拳銃を取り戻した。その見返りが4発の鉛の弾ってワケか……因果な商売だね」
平原の亡骸を前に、宗方医師が皮肉交じりに呟き、黒岩を凹ませます。
「ヒラがデカを辞めたいと言った時……止めたりしなければ良かった」
そう言って項垂れる黒岩に、看護師の今日子(丘みつ子)が追い討ちをかけます。
「私もそう思います。平原さんには、もっと別な生き方があったような……拳銃なんか必要の無い、もっと別な職場が……」
今回、地方出張で捜査に参加しなかった徳吉(松田優作)も、平原の訃報を聞いて後悔を滲ませます。
「俺がいれば、そんなツラい目に遇わせなかったのに……」
平原は、何かを待ってるようだったと宗方医師は言います。それが無ければ、もっと早く息を引き取ってた筈だと。
その答えは、武井課長(小山田宗徳)が届けに来た1通の封書=昇級試験の合否通知書にありました。
無造作に「不合格」と記された通知書を握り潰し、黒岩はひとり夜道を歩くのでした。(おわり)
……この切なさ、救いの無さにも倉本聰イズムの名残が感じられ、すこぶる暗いんだけど胸に迫るものがあります。二枚目じゃない粟津號さんが演じるからこそ、ですよね。
前作『大都会/闘いの日々』から続投の粟津さんでしたが、石原プロのホープである神田正輝さんと苅谷俊介さんを新たにキャスティングするという「大人の事情」により、急きょ降板を言い渡されたんだそうです。
それに対する罪悪感も手伝って、スタッフ&キャスト一同がかなり気合いを入れて製作したエピソードで、その熱量が画面から伝わって来ます。
今回は欠場予定だった徳吉刑事=優作さんの出番が追加されたのも、粟津さんへのせめてもの餞っていう、熱い想いがあっての事だろうと思います。
すでに第10話で吉岡課長(小池朝雄)も殉職しており、通常の刑事ドラマだと若くてイキのいい刑事が格好良く命を散らすもんだけど、本作はかなり異色ですw
セクシー画像は、片桐議員の秘書を演じた加山麗子さん、当時21歳。にっかつロマンポルノの清純派として注目され、『警視庁殺人課』『特捜最前線』『あいつと俺』等の刑事ドラマや、『ザ・プレイガール』『俺たちは天使だ!』『探偵物語』等の探偵物、そして時代劇や特撮ヒーロー物など、我々に馴染み深いジャンルで'84年頃まで活躍された女優さんです。
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