ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『太陽にほえろ!』#258

2019-09-26 00:00:04 | 刑事ドラマ'70年代









 
登場編でのヘタレっぷりを挽回すべく、続く第257話『山男』では卑劣な麻薬組織の黒幕を証拠なしで逮捕しようと暴走するロッキー(木之元 亮)ですが、チンピラ2人と長さん(下川辰平)を突き飛ばしただけでw、すぐに山さん(露口 茂)のマダムキラー・パンチを受けて撃沈。

チンピラ相手なら軽く10人ぐらい病院送りにしちゃったジーパン(松田優作)やテキサス(勝野 洋)に比べるとやはり「ショボい」と言わざるを得ず、ロッキーの人気が爆発に至らなかったのは、魅力的な見せ場を与えなかった制作側にも大いに問題がありそうです。

この時期から『太陽にほえろ!』はより重厚な人間ドラマを目指すようになり、以降も妙に重苦しいエピソードが続きます。これじゃあ新人刑事も輝きようがありません。

だけど視聴率だけは好調が続いたもんで、次の新人刑事=スニーカー(山下真司)でも全く同じ過ちを繰り返し、番組始まって以来の大スランプを迎える羽目になっちゃう。

そのスランプ期の到来まで2年間も高視聴率をキープ出来たのは、やっぱりボン(宮内 淳)の存在あればこそだったと、贔屓目抜きで私はつくづく思います。

殿下(小野寺 昭)を毛むくじゃらにしただけみたいなw、マジメ一本調子のロッキーにあんなシリアスな脚本を与えれば、番組が暗く重苦しいものになっちゃうのは至極当たり前で、もし明るく軽妙なパイセン刑事=ボンがバランスをとってくれなかったら、『太陽~』は『金八先生』の登場を待たずして早々に凋落したに違いありません。

今、ロッキー登場期の『太陽~』を見直して、私はあらためて確信しました。『太陽~』が凋落したのは『金八先生』のせいじゃなくて、単純にボンがいなくなったから。制作陣がボンの存在価値をよく理解してなかったからなんだと。

さて、今回のエピソードもまた大人向きのしっとりしたイイ話で、今観ればこそジンワリと感動しますけど、まだガキンチョだった当時の私はたぶん退屈しただろうと思います。


☆第258話『愛の追憶』(1977.7.1.OA/脚本=桃井 章/監督=斎藤光正)

香西(角野卓造)というサラリーマンが、地下鉄の入口で何者かに階段から突き落とされ、負傷します。

香西が救急隊員に「女に突き落とされた」と言った為、藤堂チームは殺人未遂事件として捜査を開始しますが、なぜか香西は一転して「足を滑らせただけです。角野卓造じゃねえよ!」と事故を主張、捜査の打ち切りを懇願します。

何か裏があると睨んだボス(石原裕次郎)は、情報収集の続行を指示。結果、香西が階段から落ちた時、その現場に三好京子(村地弘美)という若い女性がいたことが判明します。

京子は関与を否定しますが、彼女は半年前に夫を交通事故で亡くしており、また香西も同じ頃、友人と3人で出掛けたドライブ旅行で事故に遭い、運転していた親友を亡くしていることが判明。やがて、その親友こそが京子の夫であることも発覚します。

しかし、だからと言って、なぜ京子が香西を階段から突き落とす必要があるのか?

山さんは半年前の事故車に同乗していた、香西のもう1人の友人=宮田を訪ねますが、彼はアパートの部屋で服毒自殺を図り、孤独死していたのでした。

そしてその部屋で、三好京子に宛てた手紙の下書きが発見されます。そこに書かれていたのは「あの車を運転していたのは、ご主人ではありません」という告白と、懺悔の言葉。

事故を起こした車を運転してたのは香西であり、だけど京子の夫である三好だけが亡くなった為、香西と宮田は口裏を合わせて三好が運転していたと偽証した。けど、宮田はその後ろめたさに耐えきれず自殺し、彼の手紙によって真実を知った京子が、恐らく香西を階段から突き落とした。

香西が真実を自供するのは時間の問題で、そうなれば京子の殺人未遂も立証される。ボスは旅行鞄を持って上野駅へ向かった京子を署へ連行するよう、山さんに指示するのですが……

「ボス、勝手を言って申し訳ありませんが…… 私は、三好京子に自首をしてもらいたいんです。お願いします。逮捕状はしばらく待って頂けませんか」

「……分かった。山さんに任す」

他の刑事たちとは違う想いが山さんにあることを、ボスは即座に理解します。今の山さんには、誰よりも京子の気持ちがよく理解出来る。その理由とは……

京子を乗せた夜行列車に乗り込んだ山さんは、彼女の向かいの席に座ると、旨そうに缶ビールを飲み始めます。勤務中なのにw

「私はこれに眼がありませんでね。私が仕事から帰ると、死んだ家内が毎日1本だけ出してくれました」

「え…… 奥さま、亡くなられたんですか」

「ええ。心臓病で、去年…… いい家内でした」

「…………」

そう。京子が愛する夫を失ったのとほぼ同時期に、山さんも最愛の妻=高子を亡くしてるのでした。

「あなたが、ご主人を愛していたことはよく解ります。愛の想い出というのは残酷なものだ。愛していれば愛していたほど、その想い出が残された者の心を傷つけます」

かつて若い頃、三好夫妻と同じように小さなアパートに高子と棲んでいたことを、山さんは懐かしそうに語ります。

「そうそう……あなた方と同じように、一緒に銭湯に行ったこともありましたっけ。もっとも、たった一度きりでしたが……」

たぶん、例によって山さんが捜査に明け暮れ、一緒にどこかへ出掛ける機会などほとんど無かったんでしょう。近所の銭湯でさえ1回しか行ってないという事実が、切なくも微笑ましいです。

「そういった想い出も、今となっては辛い想い出です。しかし、私は忘れたくない。なぜなら……それは、思い出すのに充分価値のあるものだからです」

「…………」

「私は……あなたの愛の想い出に、汚点を残して欲しくありません。将来、尊い愛の記憶として、何のこだわりもなく……思い出してもらいたいんです」

「…………」

夫婦の想い出に、罪悪感という翳りが一生つきまとうのは、罪を償うことよりもずっとツラい筈…… 逮捕状が出るより先に京子が犯行を自供したのは、言うまでもありません。

放っておいてもいずれ京子は逮捕されたワケだけど、山さんは検挙実績を挙げることよりも、三好夫婦の想い出こそを守りたかった。それが彼女にとって生きる支えになることを、今の山さんはたぶん誰よりも理解してるから。

ミステリーとしてはありがちな話かも知れないけど、それだけで終わらないのが『太陽にほえろ!』の素晴らしさ。

山さんの愛妻物語はこれまで5年にも渡って描かれてますから、妻を亡くしたばかりっていう主人公の設定が、もはや単なる設定じゃないんですよね。それ自体が既に「ドラマ」として成立してる。我々視聴者も山さんと同じ想い出を共有してるワケです。

10話前後で終わっちゃう昨今の連ドラじゃ絶対に味わえない感動だし、例えば『相棒』みたいな長寿番組でも刑事のプライベートをここまで掘り下げることは、まず今はありません。

いや、当時のドラマでも、刑事の個人的な感情をここまで丁寧に描いた作品は『太陽にほえろ!』以外に存在しなかったかも知れません。

ストーリーだけじゃなく、今回は斎藤光正監督による丁寧な演出が光り、まるで長編映画を観てるよう。単なる聞き込みシーンにも、多分たまたま現場付近にいた子供たちをエキストラに使ったり、捜査会議のシーンでも長さんに煙草を吸わせたり等して臨場感、現実感を演出されてます。連ドラのタイトなスケジュールじゃ普通なかなか出来ないことです。

ただ、そうは言いつつ、大方の視聴者がそこまで丁寧なもの、深いものをTVドラマに求めてるかどうかはビミョーなところで、ながら見が当たり前の現在だと、多分ほとんど伝わらない事でしょう。

私自身、レビューを書く前提があるから一生懸命観るけれど、ふだんのテレビ番組を観る姿勢でこのエピソードを観たら「ああ、辛気臭いなぁ」としか思わないかも知れません。

まして本放映当時は小学生のガキンチョでしたから、山さんに共感するより「もっと銃撃戦が見たい!」「ボンやロッキーの暴れる姿が見たい!」「なんならアッコ脱いでくれ!」みたいなことしか、たぶん思ってなかったですw

この時期のハイクオリティーな脚本や演出に、岡田チーフプロデューサーはご満悦だったみたいだけど、一般視聴者の側は果たしてどうだったか?

この辺りから、ちょっとずつ意識にズレが生じてたんじゃないかと、私は思います。もちろん、こうしてじっくり観る分には本当に素晴らしいんだけれど。

ゲストの村地弘美さんは、以前レビューしたスコッチ&ボン時代の第223話『あせり』に続く2度目のご登場につき、今回プロフィールは省略させて頂きます。
 
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『太陽にほえろ!』#256

2019-09-25 00:00:09 | 刑事ドラマ'70年代









 
☆第256話『ロッキー刑事登場!』

(1977.6.17.OA/脚本=小川 英&四十物光男/監督=竹林 進)

とうとう「こんなのこんなの」こと、毛むくじゃらの新人刑事が登場しちゃいましたw レスキュー隊出身の岩城 創=ロッキー刑事(木之元 亮)です。

登山が趣味、というより生き甲斐で、それにお金を使い過ぎたのかアパートの家賃が払えず、七曲署の屋上で野宿生活を送るというワイルドさは、番組初期の新人刑事=マカロニ(萩原健一)やジーパン(松田優作)を彷彿させます。

恐らく番組的に原点回帰を狙ったのか、拳銃を持ちたくて刑事になったマカロニ、拳銃を持つことを拒否したジーパンと同じように、ロッキーにも拳銃にまつわる過去設定が与えられました。それはなんと、拳銃恐怖症!

着任早々、防弾チョッキの常備を要求した上、銃撃戦ですくんじゃったせいで先輩のボン(宮内 淳)を負傷させるというヘタレっぷりで、ワイルドな風貌とのギャップがある分すこぶるカッコ悪かったですw 言わば究極の見かけ倒しw

で、パイセンが撃たれたのは「俺に防弾チョッキを着させてくれないからです!」なんて言うもんだから、恒例のゴリパンチを2発も食らっちゃう。

もちろん、拳銃を持った犯人を説得しようとして胸を撃たれ、生死をさまよった過去のトラウマがあったり、その犯人の減刑を願って今でも裁判所に通ってたり等のフォロー設定はあるんだけど、それにしたってこの何とも冴えない登場のし方は、過去の新人刑事たちに比べて伸び悩んだロッキーの人気に、少なからず悪影響を与えたかも知れません。

「息の合った仲間のチームワークは、どんなに厚い防弾チョッキよりも頼もしく、確実に我々一人一人を守ってくれるんだ!」

そんなゴリさん(竜 雷太)の言葉で目を覚まし、仲間を信じて丸腰で拳銃強盗犯を逮捕したロッキーは、ひとまずトラウマを克服し、藤堂チームの一員として認められることになります。

ロッキーという愛称は、カナディアン・ロッキーの縦走を夢見てるから。名付け親はゴリさんです。

人気爆発!とは行かなかったお陰でロッキーは、5年という長きに渡って活躍することになります。リーダー格に昇進したドック(神田正輝)を例外とすれば、歴代最長寿の新人刑事。

その歴史の中でボンと同居し、後のマミー刑事こと早瀬婦警(長谷直美)と結婚して子供を授かり、夢のロッキー山脈で殉職したロッキーは、誰よりも幸せを味わえた新人刑事とも言えます。
 
 
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『太陽にほえろ!』#255

2019-09-24 23:23:08 | 刑事ドラマ'70年代






 
ボン単独活躍編の最終作となる本エピソードは、複数の小さな事件が同時多発し、人手不足な藤堂チームが右往左往されられた挙げ句、そのほとんどが徒労に終わっちゃうという、1つの大事件をスッキリ解決させるのが基本の『太陽にほえろ!』としてはかなりの異色作、かつ実験作と言えましょう。

次回より毛むくじゃらの新人刑事を迎えることの理由づけ、として創られた話なのかも知れないけど、この作劇法は後に『太陽~』の後番組としてスタートするリアリティー重視の刑事ドラマ『ジャングル』の基本スタイルとなり、やがて『踊る大捜査線』等にも応用されていきます。

だけど『ジャングル』の場合は『太陽~』スタイルに慣らされた大方の視聴者に受け入れられず「失敗作」の烙印を押されちゃいました。リアルなのは良いけどカタルシスに欠けるこの作劇法は、長期に渡る連ドラには不向きだったのかも知れません。

とは言え、そろそろマンネリ化しつつあった当時の『太陽~』においては新鮮で、ファンの間じゃ名作として知られるエピソードだったりします。


☆第255話『本日多忙』(1977.6.10.OA/脚本=杉村のぼる&小川 英/監督=木下 亮)

藤堂チームのメンバー1人1人の出勤風景を見せる冒頭シーンからして、まず異色。七曲署には珍しい平和な朝で、ボス(石原裕次郎)は「今日は開店休業だな」と余裕をかまします。

ところが、通勤途中の長さん(下川辰平)にビルの看板が落下、大きな怪我にはならなかったものの長さんは検査入院を余儀なくされ、まず1人脱落。

その現場検証に向かおうとした所にチンピラの乱闘騒ぎが勃発し、藤堂チームの慌ただしい1日が幕を開けます。

ゴリさん(竜 雷太)とボン(宮内 淳)がチンピラ達の制圧に向かい、山さん(露口 茂)と殿下(小野寺 昭)が看板の落下現場を検証。ボスはもちろん電話番ですw

で、看板は故意に落とされた=長さんが命を狙われた可能性が濃厚となり、長さんに恨みを持つ前科者のリストアップ、それぞれのアリバイ捜査、さらに長さんのボディーガードと、早くも仕事量が捜査員の数を凌駕しちゃいます。

そこに来て、聞き込み中の殿下が置き引きに遭ったサラリーマン(橋爪 功)に泣きつかれ、現金500万円が入ってるというバッグの行方を捜索する羽目に。

さらに山さんが捨てられた幼い兄弟を発見、その母親探しに翻弄させられます。

そして今度はイカレたヤク中男(蟹江敬三)が猟銃を乱射し、飲食店に籠城。無論そのテの危うい現場にはゴリさんとボンが駆り出されますw

「開店休業どころじゃねえな、こりゃ」

電話番のボスはそう言ってアッコ(木村理恵)を笑わせますが、現場で走り回る部下たちはたまったもんじゃありませんw

しかも、かつて長さんに捕まった青年が、ボンの聞き込みがきっかけで職場で前科バレしちゃうわ、殿下が置き引き被害者に経過報告の電話をしたら「ああ、実はあの鞄、タクシーに置き忘れてたんですよ」なんてケロッと言われちゃうわで、刑事たちの苦労がどうにも報われません。

そのとぼけたサラリーマンを演じる若き橋爪功さんの、心無い芝居がまた巧くて憎たらしいw

「どーもすいません、何の連絡もしなくって。警察が探してるってこと、すっかり忘れてたんっスわ、てっへっへ!」

「そうですか……見つかって良かったですね」

さすがの殿下も眼が笑ってませんw

一方、山さんはボンと合流し、ようやく捨て子の母親(伊佐山ひろ子)を発見します。どうやら夫に逃げられ、シングルマザーとしてやって行く自信が無くて子供を置き去りにしたんだけど、いざ対面するとやっぱり愛しく、泣きながら二人を抱きしめる若き母なのでした。

その様子を見て「山さん、良かったですね」と胸を撫で下ろすボンですが、山さんは下唇を突き出しながら言います。

「本当に良かったと思うか、ボン」

「え?」

「何も変わっちゃいない。これから先も、彼女は子供たちを抱えて苦労して、その苦しさに負けないという保証がどこにある? それが分かっていながら、俺たちにはこうするしか無いんだ」

後ろ髪を引かれながら、山さんとボンは母子を見送り、長さん襲撃事件(?)の捜査を再開。その結果、看板は実は老朽化による自然落下だった、つまり単なる事故だったことが判明し、一件落着。

すぐにボンは、アリバイを聞きに行った青年にその事実を報告するのですが……

「あんたはそれで済むだろうけど、俺はどうなるんだよ?」

ボンが聞き込みに行った後、前科者だったことがバレた青年は、居づらくなって職場を辞めたのでした。

ボンは彼の友人を装って職場を訪ねており、捜査に落ち度は無かった筈で、前科バレしたのは他に原因があったかも知れないんだけど、ボンは凹みます。

こうして全ての事件は解決し、長さんも無事に退院しました。けど、刑事たちには徒労感や後味の悪さしか残らない、散々な1日となりました。

「良かったんだよ、これで。長さんはこうして何でも無かったし、犯人もこさえずに済んだんだからな」

さっきボンに「本当に良かったと思うのか?」って言ってた山さんにそう言われても説得力がありませんw そんな淀んだ空気を吹き飛ばすべく、ボスは新人刑事の採用を発表するのでした。

「えっ、やっと欠員補充ですか! で、どんな刑事なんですか?」

「そいつは来てみなきゃ分かんねえな。こんなのかもな、こんなの」

「こんなの、こんなの?」

こんなの(画像5枚目のジェスチャー)とはつまり、毛むくじゃら人間のことだけど、視聴者には何のことだかサッパリ分かりませんw まぁ実際のところは、既にメディアで新人刑事=ロッキー(木之元 亮)のビジュアルが発表され話題になってましたから、大方の視聴者には分かってたかも知れません。

しかし、これほど慌ただしく多忙で、何から何までスッキリせず刑事たちが報われない『太陽にほえろ!』は前代未聞。今になって観直してもなお新鮮で、見応えがあります。

しかもゲストが野崎ファミリー(西 朱実、井岡文世、石垣恵三郎)に加えて橋爪功さん、蟹江敬三さん、伊佐山ひろ子さんと、通常ならメインゲストで起用される実力派の俳優さんたちが、ほんの1~2シーンの出番だけで次々登場する贅沢さ。その分もクオリティーが底上げされており、やっぱ凄い番組だとつくづく思います。

伊佐山ひろ子さんは当時24歳。ロマンポルノから一般作への転向に成功された女優さんの1人で、最近公開されたマーティン・スコセッシ監督のアメリカ映画『沈黙』にも出演される等、現在まで息長くご活躍中。

刑事ドラマへのゲスト出演も多数、中でも『太陽にほえろ!』と『特捜最前線』はいずれも計5回の最多出演。だけど私は何と言っても『大都会PART II』第3話で演じられた、立て籠り犯にストリップを強要される、地味なのにエロいウェイトレスの役が一番印象深いです。

ほか『大都会/闘いの日々』『新宿警察』『夜明けの刑事』『Gメン'75』『Gメン'82』『大追跡』『熱中時代 刑事編』『西部警察PART III』『ジャングル』etc…と、枚挙に暇ありません。
 
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『大都会 PART II 』#33

2019-09-24 22:22:31 | 刑事ドラマ'70年代







 
☆第33話『刑事失格』(1977.11.15.OA/脚本=永原秀一/監督=山崎大助)

街中でサラリーマンが包丁で刺され、現金を強奪される事件が発生。その手口と、犯人は眼の下に傷痕がある30歳前後の男という目撃証言から、黒岩デカチョウ(渡 哲也)たちは以前似たような事件で逮捕され、3ヶ月前に出所した河村(片桐竜次)の犯行じゃないかと睨みますが、ベテランのマルさんこと丸山刑事(高品 格)が異を唱えます。

「私には河村がやったとはどうしても思えんのだがね」

根は純朴だった河村をマルさんは眼にかけ、身元保証人まで引き受けてるのでした。

「3ヶ月前に出所した時、あいつは今度こそ更正したい、そう私に誓ったんだ」

しかし被害者の証言、現場に残った指紋、そして演じてる俳優が片桐竜次であること等、全ての要素が河村を犯人だと示してる。

とにかく河村を見つけ出し、身柄を確保するよう黒岩は指示を出しますが、マルさんだけは「事件の背景(動機)が見えないから」と単独捜査を開始。そこには河村が無実であって欲しいというマルさんの、祈りにも似た想いがあったのですが……

その願いも虚しく、同じ手口による第2の被害者が出て、その証言から河村が犯人であることが確定されてしまう。片桐さんが演じるとそうなってしまうのです。

「マルさん! どんなつもりであいつがマトモになりたいと言ったか知りませんがね、現実の川村はこの通り、元の狂犬に戻っちゃってるんですよ!」

一番若手のジンこと神刑事(神田正輝)に説教されちゃう始末で、マルさんはみるみる自信を無くしていきます。

一般的な刑事ドラマだと、ベテラン刑事の勘はだいたい当たるもんだし、容疑者の善意を信じすぎて失敗するのは新米刑事の十八番だったりするんだけど、それを哀愁漂う「いぶし銀」のマルさんにやらせちゃうあたり、やっぱり『大都会 PART II 』には前作『闘いの日々』のシビアな作風=倉本聰イズムの名残を感じずにいられません。

さて、河村の容疑は確定されたものの、マルさんはその犯行動機を追究すべく単独捜査をやめません。

それで判ったのは、河村が出所した直後に知り合った飲み屋のホステス=茂子(片山由美子)に惚れ、勤めを辞めさせて結婚したこと。なのに茂子はすぐにオトコを作って逃げてしまったこと。

本当に一から出直すつもりだったのに裏切られた河村は、自暴自棄になって本来の片桐竜次に戻り、恐らく茂子を殺すつもりでいる。

「川村はね、あんたと一緒に、少しくらい経済的に苦しくても、マトモな家庭で、マトモな生活がしたい、そう考えてたんじゃないのかね?」

マルさんに責められても、茂子は涼しい顔で言ってのけます。

「少しくらい経済的に苦しくたって? そんならそうと最初から言ってくれりゃよかったのよ。そしたら一緒にならずに済んだんだから」

そう、茂子は河村にカネを稼ぐ甲斐性が無いと見るや即座に切り捨てたワケです。なんでこんな女に惚れるねん?って思うけど、そこは片桐竜次だから仕方ありません。なんだか河村が可哀想にも思えて来ます。

マルさんの読みが当たり、包丁を持った河村が茂子を殺しにやって来ます。マルさんは茂子を守りつつ、河村を説得……というより懇願するのでした。

「昨日まで、私はお前をシロと信じてきた。それなのに、デカとしてこんな恥ずかしい思いをした事はない。これ以上、罪を重ねんでくれ。頼む!」

「身元引受人だからって、でかいツラすんな老いぼれ!」

マルさんは拳銃を抜き、歩み寄る河村の額に銃口を押しつけます。

「お前を説得出来ないくらいなら、私は刑事失格なんだ!」

「上等じゃねえか、撃てよ。撃つなら撃てよ!」

もちろんマルさんに河村を殺せるワケもなく、威嚇射撃するのが精一杯。それで茂子を守ることは出来たものの、河村は取り逃がしてしまうのでした。

いよいよ自信を無くしたマルさんは、刑事部屋にある私物をまとめ始め、徳吉(松田優作)らを慌てさせます。そんなマルさんを署の屋上に連れ出した黒岩は、二人きりで対話します。

「すみません、河村はどうかしてるんです。思い詰めてカーッとなって、自分を見失っているんです」

「自分を見失ってるのはマルさん、あんたですよ」

「…………」

「マルさん、気持ちはよく解ります。しかし、単独捜査は禁じてます。個人的な感情での捜査は、絶対にやめて下さい」

「……すみません。若いつもりでも、やはり歳には勝てません。もうこの辺りが……」

「なにを言ってるんですか。先輩のマルさんあっての我々なんです、自信を取り戻して下さい。頼みますよ」

現在ならカウンセリングを勧めなきゃいけないところだけど、もちろん黒岩デカチョウがそんな回りくどい対処をするワケありません。

自信を無くした部下には、あえて最前線に飛び込ませ、修羅場を乗り越えさせる。それが黒岩軍団(そして後の大門軍団)の流儀であり、そのスリルが癖になっちゃった団長の趣味なんですw

まず黒岩は、捜査課の事務員=幸子(美田麻紗子)に茂子の衣服を着させ、河村が現れそうな場所を歩かせるという、もう1つの趣味であるオトリ捜査(もちろん違法)を断行。

その現場にマルさんを連れ出し、現れた川村とサシで対決させた黒岩は、そのスリルを楽しみながら高みの見物するのでした。

もう刑事を辞める気満々だった筈なのに、アドレナリンが沸いてきたマルさんは河村を公園の噴水に放り込むと、自分もずぶ濡れになりながら叫びます。

「クロさん、こいつは! こいつだけは私に任せて下さい!」

夢中で河村をフルボッコにするマルさんの生き生きした姿を見て、駆けつけた徳吉もニヤリ。

「マルさん、まだまだ若いですなぁ」

かくして、河村の腕に手錠が嵌められます。どんなに洒落たアクセサリーよりも手錠が似合う男、片桐竜次。

びしょ濡れになったマルさんにジンがハンカチを渡しますが、マルさんは自分じゃなく河村の顔を拭いてやります。

そんなマルさんの想いが、河村の胸に全く響いてないワケでも無さそうだけど、ムショを出たらまた同じようなことを繰り返すんだろうと思います。理由は、片桐竜次だからです。

ストーリー自体はどうって事ないありがちなもんだけど、主役をマルさんに据えたことにより哀愁が加味され、印象に残るエピソードとなりました。やっぱり高品格さんの芝居には唯一無二の味があります。

ワルはあくまでワルであり、警察はやたら失態を繰り返し、平気で女子事務員をオトリに使い、最後はスカッと暴力解決。石原軍団らしさ満載のエピソードとも言えます。

茂子に扮した片山由美子さんは当時27歳。子役から活躍され、『ジャイアントロボ』や『プレイガール』等にレギュラー出演、『女囚701号/さそり』など映画出演も多数。

刑事ドラマは『特別機動捜査隊』(計4回)、『太陽にほえろ!』(第90話) のほか『俺たちの勲章』『新宿警察』『特捜最前線』等にもゲスト出演。'80年代前半に結婚され、それを機に一線を退かれた模様です。
 
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『大都会 PART II 』#01

2019-09-24 22:15:52 | 刑事ドラマ'70年代









 
倉本聰をメインライターに迎え、リアリズムと人間ドラマを追究した前作『大都会/闘いの日々』から一転、'77年春にスタートした第2シリーズ『大都会 PART II 』は永原秀一、斎藤憐、柏原寛司、峯尾基三らアクション畑のライター陣を器用、メインキャストの1人に松田優作という究極の活劇スターを迎え、弾丸が飛び交い、パトカーが次々クラッシュする石原プロモーション=ハードアクション路線のいよいよ幕開けとなりました。

ただし、派手な見せ場を優先するあまり脚本がユルユルになっちゃうのはパート3辺りからでw、このパート2(特にシリーズ前半)は『闘いの日々』の社会派要素も少なからず残っており、ドラマとアクションの絶妙なバランスで我々を魅了してくれました。


☆第1話『追撃』(1977.4.5.OA/脚本=永原秀一/監督=舛田利雄)

ファーストシーンは、城西署捜査課の黒岩デカチョウ(渡 哲也)とその右腕=徳吉刑事(松田優作)が深夜の渋谷を覆面車でパトロールし、ホステスがチンピラと揉めてる現場を見掛けながら「クロさん、どうしますか?」「ほっとけ」とスルーしちゃう、熱血番組『太陽にほえろ!』とはひと味違うハードボイルド演出。

そして追いかけるホシも連続婦女暴行殺人犯(しかも被害者の下着をコレクションするド変態)という、やはり品行方正な『太陽にほえろ!』では扱わない種類の極悪人(そしてド変態)で、その辺りの差別化は意図的なものと思われます。

過去3件の犯行が公園で行われたため、公園ばかり監視してたら裏をかかれて4件目はデパートのトイレで発生するなど、犯人側の方が賢くて刑事たちがやたら失態を繰り返すのも『太陽~』とは違う『大都会』→『西部警察』シリーズならではの特徴。これも恐らく意図的なもので、創り手たちは内心、警察をバカにしてるんだろうと思いますw

で、4人目の被害者=久子(永島暎子)は渋谷病院でドクター宗方(石原裕次郎)の手当てを受け、死なずに済むんだけど顔に酷い傷を負ってて、見舞いに来た幼い甥っ子が「こんな顔、久子姉ちゃんじゃない!」と言って泣きじゃくるという、そういう残酷さも『太陽~』には無いものだし、かつ『闘いの日々』から受け継いだ倉本イズムの一端だろうと思います。

そんなハードな描写があるからこそ、やがて久子が恐怖心を乗り越え、犯人のモンタージュ写真作成に協力するシーンは感動的だし、それを手がかりに刑事たちがカーチェイスの末に犯人を追い詰め、フルボッコにするクライマックスにはカタルシスを感じます。

シリーズが進むにつれそういったシビアさは薄れていき、放映枠が9時台から8時台に移った『西部警察』シリーズはひたすら明るい健全路線にシフト。それはそれで楽しいんだけど、やっぱりある程度のドラマ性を残した『大都会 PART II 』が一番見応えあります。

この第1話のラストシーンは、カーチェイス、パトカー炎上、そして銃撃戦を経て犯人を逮捕し、連行していく部下たちを見送りながら黒岩デカチョウが煙草に火を点ける。そこでスパッと幕を下ろすんですよね。

やがて定番化していく、渡さんや裕次郎さんの演歌をバックに描かれるエピローグが、この回には無い。それがまたハードボイルドでカッコいい!

スパッと終わる方がかえって余韻も残るし、レコードを売らなきゃならない事情も解るけど、ラストの演歌は無い方が良い……とまでは言わないけど無くても良い(途中のスナック場面における女性歌手の弾き語りはもっと要らないw)と私は思います。今さら言っても仕方ないけど。

それは『太陽にほえろ!』のラストシーン(刑事部屋におけるコント演出)にも言えることで、そういうルーティン的な演出が安定した視聴率に繋がる、みたいな法則が長丁場のテレビ番組にはあるんでしょう。確かに、無かったら無かったで淋しいかも知れません。

『大都会 PART II 』を彩る女優陣は、黒岩デカチョウの妹=恵子に仁科明子さん、黒岩に想いを寄せる渋谷病院看護婦=今日子に丘みつ子さん、同じく看護婦=典子に舛田紀子さん。← 舛田利雄監督の娘さんです。

そして第1話ゲストの永島暎子さんは当時21歳。前年に女優デビューされたばかりなのに安定の演技力で、この'77年には日活ロマンポルノ『女教師』で主演もされ、'83年の映画『竜二』では国内の助演女優賞を総なめにして一躍メジャーになられました。

本作が刑事ドラマの初ゲスト出演で、全ての出番を傷メイクの顔で演じる女優魂が買われたのか、第14話、第19話とやたら短いスパンで次々(それぞれ違う役で)ゲストに呼ばれてます。

ほか『七人の刑事』『鉄道公安官』『特捜最前線』『非情のライセンス』に各1回、『西部警察』に2回、『太陽にほえろ!』に3回ゲスト出演、『ジャングル』では桑名正博扮する小日向刑事の妻としてセミレギュラー出演されてます。
 
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