あぁ、これは現役の介護士は読んじゃいけないやつだった〜〜〜
久坂部羊さんの介護サスペンス小説『介護士K』(KADOKAWA)を読みました。
2014年に実際に起きた、川崎市幸区の有料老人ホーム「Sアミーユ川崎幸町」で入所者3名が相次いで転落死した事件を下敷きにしています。
主人公は事故のあった介護施設で働く一人の青年。
「死なせるのは慈悲なんです」
介護現場の実情、人間関係、虐待、生に苦しむ高齢者、生と死の問題。
高齢者は自分で死ぬこともできない。
自由にならない体、痛みで眠れない日々、しだいに薄れて行く記憶、誰が誰かもわからず、自分が自分でなくなってゆく・・・
そうまでしてどうして生きていかねばならないのか?
2016年に起きた、入所者19人を刺殺、入所者、職員計26人に重軽傷を負わせた、神奈川県の知的障害者福祉施設「津久井やまゆり園」でのいわゆる「相模原障害者施設殺傷事件」を彷彿とさせる記述もあります。
重いテーマなので、スッキリ解決! なんて結末はありません。
さらに人物描写、設定やストーリーに難があるため、読めば読むほど読者のストレスは溜まります。
ただ、テレビや新聞では建前が邪魔して書けない介護現場の本音、フィクションだから、悪人という設定の人物が語ることだから書ける問題提起、という部分は今までにない介護を題材にした作品でした。
苦しむ老人にとって、死はある意味で救い・・・
善意による殺人。
社会福祉の人材も税金も限られた資源。
政府はそれを死を待つだけの高齢者に湯水のように使う気はない。
安心で楽しい老後をうたう日本印の介護のテーマパークでは、すでに入場制限は始まっているんだ。
・・・こんな内容、読むんじゃなかった。
「〇〇さんさえいなければ、みんなもっと楽に仕事ができるのにね」
作中介護士たちが休憩中におしゃべりする場面、現実でも同じようなことはしゃべっています。
介護士も人間ですから、愚痴も言うし、悪口も言う。釈迦やキリストのように慈愛にあふれた人だけを雇っているって職場があれば別ですが。
作中虐待のない施設の例が2つ紹介されています。
一つはお寺の住職が運営するグループホーム。ボランティアさんも献身的で、住職の人徳が従業員の意識を高めている。
もう一つは高級有料老人ホーム。入居一時金一億円。温水プールにコンサートホールまで完備していて月額利用料が100万円を超える人も。当然介護職員の給料も高いので優秀な人材が集まっている(あくまで小説の中のお話です)
そして小説ではこう結論付けます。「逆に言うと、ふつうの精神だったり、安い経費でまかなう介護では、虐待は防げない・・・」
もう、やめて、モチベーションさがるから〜
そりゃあ介護の現場は過酷だし、給料は安いし、国の政策は血も涙もないし、腰は痛いけどさ、別に人間に失望もしていないし、楽しくやっている介護士もいるんだから〜
モデルになっている事件もそうですし、こういう小説読むと「人間バカにすんなよ!」「そんな奴ばっかじゃないぞ!」とついつい反発したくなっちゃいます。
頭で考えたことだけが至高ってわけじゃないですからね。
気分を変えて散歩にでも行こうかな。
ま、有効期限の近いポイントを消費するために注文した本なので、残念って感じでもありません。
コンビニの新商品、美味しくても不味くてもとりあえず試してみようって方にはオススメかな?(笑)
真面目に考えなきゃいけないテーマではありますが、私は楽天家なので、どんな時でもユーモアを期待しちゃいます。
じゃないと切羽詰まっちゃいそうで(笑)
何事も、正解って無いのかもしれないけれど。
人間、世の中、捨てたもんじゃないと思いたい、ですね。
知恵と情で乗り越えられる物も多い筈。
でもね、尊厳死については、いつも考えています・・・