前略、ハイドン先生

没後200年を迎えたハイドン先生にお便りしています。
皆様からのお便り、コメントもお待ちしています。
(一服ざる)

『ウィトゲンシュタイン入門』(永井均)

2025-02-16 20:45:07 | 
「座右の銘」という言葉があります。意味を調べると
「いつも自分の座る場所のそばに書き記しておいて、戒めとする文句」
とあります。

恐らくそれから派生した造語だと思いますが
「いつも傍らにおいて何度も読み返したくなる本」のことを
「座右の書」などといいます。

哲学者、永井均さんの本は何冊か読んでいますが
最初に読んだのが『ウィトゲンシュタイン入門』です。
もう25年くらい前になるでしょうか。
人に貸したりあげたりして、その度に何度か買い直していますが
常に側にある本でした。


(永井均著/筑摩書房)

永井さんの著作の面白さを問われたら
「(立ち読みでもいいので)巻頭(通常「はじめに」と題された部分)もしくは「第一章」の冒頭数頁を読んでみてください」
と応えます。

そこに永井さんの魅力(永井節)が凝縮されており
その部分を読んでもピンとこなかったら
恐らく全編を読んでも面白いと思わないかもしれません。


「こう言うと、読者の皆さんは驚かれるかも知れないが、哲学にとって、その結論(つまり思想)に
賛成できるか否かは、実はどうでもよいことなのである。
重要なことはむしろ、問題をその真髄において共有できるか否か、にある。
優れた哲学者とは、すでに知られている問題に、新しい答えを出した人ではない。
誰もが人生において突き当たる問題に、ある解答を与えた人ではない。
これまで誰も、問題があることに気づかなかった領域に、実は問題がることを最初に発見し、
最初にそれにこだわり続けた人なのである。」
(ウィトゲンシュタイン入門「はじめに」9頁)

「いろいろな機会に何度か見かけ、あいさつ程度の会話はかわすようになっても、それほど深く気にとめはしなかった人物が、
ある日突然、自分の人生を決定するほどの重要性もって立ち現れる、そういう体験はないだろうか。
私とウィトゲンシュタインとの出会いは、そういう体験に似ていた。」
(同著「序章~出会い~」14頁)


すでに後半戦に入った人生。
「あいさつ程度の会話をかわす」誰かが、もしかしたら自分のこれからの人生に重要な何かを与えてくれる誰かかもしれません。
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R・シュトラウス:4つの最後の歌(習志野フィル)

2025-02-11 19:10:25 | クラシック音楽
チケットを頂いたので習志野フィルハーモニー管弦楽団の
第104回定期演奏会を聴きに行ってきました。



チャイコフスキー:幻想序曲『ロメオとジュリエット』
リヒャルト・シュトラウス:4つの最後の歌
チャイコフスキー:交響曲第4番ヘ短調
指揮:湯川紘惠
独唱:中江早希(ソプラノ)

所謂アマチュアオーケストラ(市民オーケストラ)ですが、
今年創立55周年の伝統あるオーケストラで想像の10倍上手かったです。

チャイコフスキーの2曲はコンサートで何度も聴いたことがありますが
リヒャルト・シュトラウスは初めてです。

『4つの最後の歌』
第1曲:春
再2曲:9月
第3曲:眠りにつくとき
第4曲:夕映えの中で

リヒャルト・シュトラウスの『4つの最後の歌』は熱狂的ファンの多い曲です。
クラシック音楽の中でも「最も美しい歌」などと言われることがありますが
正直、独唱曲はあまり好きではないので
CDで聴いてもあまり心を動かされることはありませんでした。

ですが、生で聴いて考えが改まりました。
なんと美しい歌なんでしょう。

第1曲の途中から、涙が溢れてきました。
というよりも4曲を通して、ほぼ号泣。
何も考えず目を閉じて、只々美しい音色に酔い痴れました。
まさに天上の美しさ。

今更ながら、こんなに感動できる曲に出逢えるとは思っていませんでした。
思い出に残るいいコンサートでした。
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シベリウス:ヴァイオリン協奏曲ニ短調(庄司紗矢香)

2025-02-02 18:42:40 | クラシック音楽
You Tubeでシベリウスのヴァイオリン協奏曲を聴きました(観ました)。

ヴァイオリン:庄司紗矢香
指揮:ラハフ・シャニ
イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団
2022年10月、テルアビブでのライブです。


https://www.youtube.com/watch?v=d388O4WxOD4

庄司紗矢香さんには「若手ヴァイオリニスト」のイメージがあったのですが
1983年1月生まれなので、この演奏の時はすでに39歳だったのですね。

以前にCDで聴いた時は、正直あまり印象に残っていなかったのですが
このライブでの演奏は本当に素晴らしい。

最初は髪をピンで留めていましたが、終楽章の時には外れてしまったのか(外したのか)
俯き加減で髪を振り乱してヴァイオリンを弾く姿はに鬼気迫るものがあります。
小柄な体躯からは想像できないダイナミックな、何かが乗り移ったような神懸った演奏です。

私は楽器は全く演奏できない聴くだけの素人ですが、
ヴァイオリン曲を聴く時に注目するのは、音量と弓(ボウイング)の速さです。

You Tubeで他の人のライブも併せて色々聴いた(観た)のですが
この演奏は(少なくとも女性ヴァイオリニストの中では)圧倒的な名演だと思います。
特に終盤(33:00~辺り)、重音をグリッサンドで奏でる部分は鳥肌もので涙が溢れてきます。
グッと身体を捩じるところがカッコいいんですよね。

是非、生演奏を聴いてみたいです。
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「ゴルトベルク変奏曲」パイプオルガン版(聖イグナチオ教会)

2024-06-29 16:10:20 | ゴルトベルク変奏曲
少し前になりますが、カトリック麹町教会(聖イグナチオ教会)で
バッハの「ゴルトベルク変奏曲」パイプオルガン版を聴いてきました。



演奏は聖イグナチオ教会専属オルガニストの浅井寛子さんです。

「ゴルトベルク変奏曲」全曲は、2020年に弦楽三重奏版を聴いて以来2度目です。
その時も、会場は教会(横浜山手聖公会)でしたね。


鍵盤曲を弦楽器や管楽器で演奏するための編曲とは異なり
チェンバロ→パイプオルガンでは
素人考えでは演奏上の大きな違い(編曲の必要性)はないのかなと思いますが
どの音色(パイプ)を選ぶかで、曲の印象は大きく変わります。

そこ(音色の選択)に、演奏者(編曲者)の個性が表れるのでしょうか。

例えば、第10変奏は「フゲッタ(fughetta)=小規模なフーガ」とあるように
どちらかというと軽やかな曲という感じがありましたが
浅井さんは太めのパイプ?の音で重厚に演奏されました。
好きな曲なので注目していたのですが、音色でこんなにも曲の雰囲気が変わるのか~。


第16変奏は後半のスタートを飾る「序曲」ですが、パイプオルガンの華やかさが活きます。

演奏は、曲の前半のみ繰り返し、後半は1回のみ。
1曲(1変奏)終わるごとに、割と間を取ってじっくりと聴かせる構成でした。

最後の変奏曲(第30変奏)をどう演奏するかは以前に「ゴルトベルク変奏曲の物語について」に書いたとおり
興味(期待と不安)を持っていました。
前半はかなり盛り上げていましたが、後半はほかの変奏と同しく繰り返しをせず比較的あっさりとした演奏。

今まで曲間をしっかり取っていたので、アリア(Aria da capo)もそういう風に戻ってくるのかな?
と思っていたら、この部分のみほとんど間を置かず静かにアリアへと繋いでいきました。

予想外の「アリア」の再登場に思わず落涙。再現のアリアは前半・後半とも繰り返しなし。
消えるように幕を閉じました。


「ゴルトベルク変奏曲」はコンサートレパートリーとしても割と頻繁に取り上げられますが、
前出の弦楽三重奏版と同様、教会との相性がいいですね。
コンサートホールで全曲聴くのはちょっと退屈かもしれませんが
教会での「ゴルトベルク変奏曲」は荘厳さが増します。
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SOUL'd OUT『COZMIC TRAVEL』(10th Anniversary Premium Live “Anniv122")

2024-06-28 19:53:02 | クラシック以外の音楽
SOUL'd OUTの音楽とは実は"リアルタイム"で出逢っています。
2003年にリリースされたメジャー2ndシングル「Flyte Tyme」を発売時に買いました。
奇しくも当時ガッツリ嵌っていたTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTが解散した年ですね。


「Flyte Tyme」

スカパーやケーブルテレビなどで音楽専門番組を観ていて「Flyte Tyme」を知りました。
ミッシェル以外にも邦楽ロックばかりを聴いていた時だったので
HipHop(という括りでいいのかわかりませんが)にはほとんど興味はありませんでしたが
耳に馴染む気持ちの良いメロディーと同時に、メインMC・Diggy-MOさんの"声"と"歌い方"と"英語の発音"
そしてそれらを最大限に活かす独特の"言語感覚"で作られた歌詞が癖になった、という感じです。

因みに「Flyte Tyme」のPVは曲に合わせて踊る"きれいなお姉さん"が何気にいいんですよね。
ただ、その後嵌っていかなかったので、まだHipHopに対する抵抗感があったのでしょうか。


2014年にすでに解散したSOUL'd OUTを思い出したのは、御多分に漏れず例の「コロンブス騒動」です。
「コロンブス繋がりでSOUL'd OUTが突如トレンド入り」

ということで改めて「クリストファー・コロンブス」が登場?する『COZMIC TRAVEL』を聴いてみました。


2013年リリースのベスト盤「Decade」


2007年リリースの『COZMIC TRAVEL』という曲は過去にねとらぼで行われた人気投票でも1位でした。
まあ、それも当然のカッコいい曲ですよね。

相変わらずDiggy-MOさんは、他にあまり類例が無いような"混り気のない""全く雑味のない"独特の歌声です。
アップテンポの曲ですので、日本語と英語とDiggy語が混ざった歌詞は殆ど聴き取るのは不可能ですが
その中で印象的に叫ばれる「クリストファー・コロンブス」

思わずYouTubeでいろいろな動画を漁った結果、ライブ映像に辿り着きました。


「10th Anniversary Premium Live “Anniv122"」

ライブ会場でファンが爆音の中で(勝手に)一緒に歌ったりするのはよくあることですが
SOUL'd OUTの曲、とりわけ『COZMIC TRAVEL』(の歌詞)は難しすぎて無理です。

そんな難曲でも、このライブでの『COZMIC TRAVEL』は別格ですね。
Diggy-MOさんの歌声と、要所要所、絶妙のタイミングで客席に向けられたマイクにのる観客の歌声。
「会場全体が一体となって・・・」というような、よくある陳腐な表現では収まらない。
ある種の「崇高さ」すら感じます。

いいライブ映像を観た時「(自分も)この会場に行きたかった(観たかった)」というコメント・感想があります。
(勿論、自分もそのように思う時があります)

でもこの映像、2013年1月22日・新木場STUDIO COASTでのライブ映像を観ると
SOUL'd OUTと観客が創り上げた"あの瞬間"が完璧な形でパッケージされているように感じます。
観客もSOUL'd OUTのメンバーも、さぞ気持ちよかったことでしょう。
その気持ちよさは、ライブ映像を観る自分にも十分に伝わります。


今更ながら『COZMIC TRAVEL』に出遭えたことに感謝です。
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