ロウバイの花は,他の植物が寒さに耐えて休んでいるときを敢えて選んで咲きます。ほんとうに健気! ほとんどの生きものが活動しない時期,嗅覚の鋭い昆虫を招きたくて微かな芳香を放ちます。競合する花がなければ,無駄にエネルギーを消費する必要はありませんから。それでも,その香りは離れたところにも心地よく漂っていきます。
匂いを感じながら虫を探していると,一つの花の中に黒っぽいものが見えました。ほんとうに小さいので,初めは虫とはわからないほどでした。近づいて確かめると,まちがいなく昆虫です。それもこれまで見たことがない姿です。
「これは撮っておかなくちゃ!」。大急ぎでシャッターを切りました。脚が蕊に触れています。花粉がからだに付着する瞬間です。まずはこれで撮影は大丈夫。
近寄ると,これまえに見たことのない姿が! どうやらハエのなかまのようです。脚に生えたトゲのような毛がとても印象的です。「もっと近づいて撮りたい!」。そう思った途端,レンズが枝に触れて花が揺れました。ハエはパッと見えなくなりました。
「再会できないかなあ」。接写には苦労します。