第3章 踏み出す ９４

　それを聞いていたアエネアスが口をはさんだ。
　『おい、パリヌルス、いいじゃないか。エノスの浜の皆のためなら大いに便宜をはかれ』
　『トリタス、お前の言うことはわかった。話をまとめておこう。今日は呑んでいる、日を改めて打ち合わせしよう。三日後はどうだ。秋になると豊漁が続くのか。特別の干し魚を作る技術のこともある。オロンテスもその頃には帰ってきていると思う。浜衆を五人ほど引き連れて、一泊の予定で来い。詳しい打ち合わせは、そのときにやろう。いいか』
　『いいですとも、ぜひ、よろしくお願いします』
　昼めしは『旨いっ！旨いっ！』で終わった。トリタスたちは、アエネアス、イリオネスらと世間話を交わしてゆっくりと時を過ごして帰って行った。
　パリヌルス、オキテス、カイクスの三人は、午前中に終えていた縄張りを再度、念査して非の打ち所のない様に仕上げ、砦に引き揚げた。オロンテスたちの帰りを待って、夕刻の打ち合わせ事項に関する考えをまとめた。
　彼ら一同は、目標に向けて真剣に取り組んだ。『期日までに、いい船を造る』　この目標に向けていかに小さなことでもおろそかにしないこと、小さな達成を積み重ねて大きな目標達成をものにする心構えを、この仕事にたずさわる総ての者たちが保持して業務遂行に努めるように配慮した。